恋愛漫画というと、そのタイトルだけでちょっと引いてしまう人もいるのではないでしょうか。しかし、人生に悩みながら日常の中に確かにある恋愛を感じることができ、ベタベタな恋愛漫画とは違う、そんな大人が読んでも楽しい恋愛漫画を集めてみました。
舞台となる高校に転校してきたのは、不愛想で無表情、ボサボサ頭の謎の転校生・卜部美琴(うらべみこと)。主人公である椿明(つばき あきら)は、出来心から、居眠りしていた彼女が残したよだれを舐めてしまいます。それを機に熱にうなされる明。美琴が言うには、美琴のよだれを舐めてしまったことで、「恋の病」を発病してしまい、熱を下げるには毎日美琴のよだれを舐めなくてはいけないというのです。こうして、2人の奇妙な絆と交際が始まっていきます。
- 著者
- 植芝 理一
- 出版日
- 2006-08-23
よだれを舐めることで相手の感情や思考、場合によっては体調までも感じ取れてしまう能力を持った謎の彼女の卜部美琴と、ごく普通の高校2年生の椿明、よだれは舐めるけど迂闊に相手に触れられない、キスもできないちょっと謎な純愛を描いた漫画です。
ヒロインの卜部美琴はハサミが趣味で、ハサミをいつもパンツの隙間に挟んで隠し持っているという本当に謎の少女。また世界観も、20××年と表記されているけれど、背景はどこか昭和を感じさせるノスタルジックなもので、そもそも2000年代を舞台にしながら携帯電話などが登場しないなど、こちらも謎の世界観となっています。
さらに、よだれを摂取した明が神秘的な雰囲気の夢を見ることで話が展開していくのですが、この夢もまた謎。
このように謎だらけな世界観とヒロイン。しかもヒロインとの絆を確かめ合う手段は「相手のよだれを舐める」事という、フェチズム全開のもの。それでも描いているのは17歳の少年少女の純愛という、なんとも癖がありすぎる漫画です。その癖がある味わい深さと不思議な彼女こと美琴の可愛らしさに、様々な謎を感じながらお楽しみください。
『謎の彼女X』については<漫画『謎の彼女X』が面白い!独特の魅力を全巻ネタバレ解説!最終回は……>で紹介しています。気になる方はぜひご覧ください。
貧乏子沢山の家で6人姉妹の三女として育った主人公めぐりは、縁あって随徳寺というお寺に嫁ぐことになりました。その後1年の交際を経て結婚するのですが、新婚早々2か月で結婚相手である信玄が不慮事故で亡くなってしまいます。未亡人になっためぐりを待ち受けるのは、めぐりの処遇と後継者騒動。様々な思惑に巻き込まれ翻弄されながら、それでも生きていくという強さを考えさせられる作品です。
- 著者
- ["サトウ ナンキ", "きづき あきら"]
- 出版日
- 2008-01-24
タイトルになっている『まんまんちゃん、あん』とは近畿地方の幼児方言で、「まんまんちゃん」は「南無阿弥陀仏」、「あん」は「あな尊し」という意味です。題材が仏教・寺というところで、なかなか敷居の高いイメージですが、全3巻でとても読みやすく、仏教に全く触れたことがない人でも、軽妙なタッチのイラストと恋愛ベースのストーリーで、知らず知らずのうちにその奥深さを体感することができます。
お寺の中だからといって、みんながみんな聖人君子という訳ではありません。そこはやはり人が集まっているところ。悪い人ではないのですが、それぞれに様々な思いがあるが為に、主人公のめぐりは振り回されてしまいます。明るく、しっかり者の働き者で、いつも家族のためにと愚痴もこぼさないめぐりには、なんとか幸せになって頂きたいですね。
職場環境から女性嫌いにおちいってしまった、女性上位の環境で働く化粧品会社営業2年目の阿川宗則を主人公とした物語です。そんな彼の元に突如、成長が逆行する病気に掛かったという少女天海玲菜が「キスをしてもらいに来たんです」と現れます。少女の病気の進行を止めるには阿川のキスが必要ということなのですが、ちょうどその頃、職場の同僚の麻生沙也子ともイイ関係になっていきます。
- 著者
- 北崎 拓
- 出版日
- 2006-11-02
サブタイトルにクピトの悪戯Ⅱと入っていますが、「クピトの悪戯」シリーズ第二部です。前作はクピトの悪戯虹玉というタイトルですが、話が繋がっている訳ではないので前作を読んでいなくても十分に楽しめます。
成長が逆行してしまうという病気の設定もさることながら、キスで進行を止めることができるという設定にも驚きました。さらには、そんなファンタジー且つラブコメタッチの内容にも関わらず、そこに麻生の感情が絡んでくることによって、より現実味溢れる作品になっています。阿川はどんな決断を下すのでしょうか。斬新な切り口から攻める恋愛漫画ファン必見の作品です。
大阪府東大阪市を舞台にした、ほっこり恋愛物語です。
臆病で貧乏でモテないフリーターのサトシが、赤灯を振る交通警備員のアルバイトの現場で、かなり気が強く元ヤンキーで金髪のチーコと出会います。
最初は自分とは正反対のチーコに戸惑いますが、彼女の優しい魅力的な部分に触れ惹かれていきます。そんな二人が紆余曲折を経て成長しながら絆を深めていくストーリーです。
- 著者
- きら たかし
- 出版日
- 2004-08-06
全15巻+東京編の16冊から成る本作ですが、少年少女から大人の階段を上っていく二人の姿に心が温まります。時には愛し合い、時には傷つけ合い、自身のイライラを相手にぶつけたり、ギスギスいがみ合うことがあったりと、なかなかスムーズには進みません。しかし、そういった経験をしながらも葛藤を繰り返し成長していく姿には、繊細な心理描写も相まって、とても心を打たれます。
また、まるでノンフィクション作品を読んでいるかのような細かな描写に心を奪われ、ハラハラしたりほっこりしたり、感情移入してしまうのです。身近に実際にありそうなリアル感で、ぐんぐんと物語に引き込まれていきます。
良いことも悪いことも全て含めての恋愛、人を愛するということは素晴らしいことだな、ということを改めて感じることができる作品です。
北海道で暮らす恋愛下手な主人公のシュウジと、ドジで「ごめんね」が口癖のヒロインちせの物語です。物語冒頭で、ちせの告白から二人は交際するようになりました。
- 著者
- 高橋 しん
- 出版日
付き合うということがどういうことか分からない二人の交際は、なんと交換日記からはじまるのです。なんとも微笑ましい交際です。そこから二人は順調に愛を育んでいきます。
しかしそんな中、日本で戦争が始まってしまいます。たまたまその風景を目の当たりにしたシュウジのの目の前に現れたのは、背中から鋼の羽を生やし、腕を巨大な武器に変えて戦うチセの姿でした。チセは自衛隊によって、その体を兵器に変えられてしまっていたのです。それからというもの、ちせはどこかの地で戦争に参加し、シュウジの元に帰ってくる生活が続きます。
ちせは、戦場で化け物と恐れられる程の戦力を持っていましたが、戦争が激化するにつれ、ちせは肉体的にも精神的にも壊れていくようになります。そんなちせを守ろうとするシュウジ。戦争により刻一刻と終末が近づく世界。そんな世界で二人は一体どのようにして愛を育んでいくのでしょうか。日本という社会では現実離れした切なく淡いラブストーリーは読み始めたら止まらない作品です。
非現実的社会の中にもある恋愛。普通の恋愛漫画の枠には収まらない本作は大変おすすめの一品です。
職人や芸術家のたまご達が集まる京都の長屋を舞台にした、基本1話完結のオムニバス形式の恋愛漫画です。舞台となる長屋はふきこ路地という名前で、ここに暮らすモノづくり職人達やここを訪れる人たちによってストーリーが進んでいきます。全4巻ですので、気が向いた時に気軽に読めますし、1話完結なので空いた時間に1話だけなんて読み方でも楽しめます。
- 著者
- 麻生 みこと
- 出版日
- 2010-02-05
オムニバス形式の為、主人公はエピソード毎に変わりますが、同じ路地にある長屋を舞台にしている為、話が変わってもそれぞれの登場人物が行き来するので、自分が本当にその路地を訪れているかのような楽しさがあります。手作り本、銀細工、小説家、キャンドル作家、などといった手作り職人たちの技巧を繊細なタッチで描きつつ、職人たちのストーリーに恋愛が絡めてあるテイストです。それぞれの人生に悩みや葛藤があり、短編ながらもしっかりとその人たちの人生を垣間見ることができます。
京都弁が行きかうほっこりとした雰囲気のふきこ路地にぜひあなたも足を踏み入れてみて下さい。その世界観は何度でも覗きに来たくなること間違い無しです。そして、まだこの世界に浸りたいと思った貴方には、続編の『小路花唄』もオススメです。