エンタメ
趣味/実用

セルフパブリッシング。出版社に頼らず、作家として生計を立てる方法

更新:2017.4.17 作成:2017.4.17

3冊35万ポンドの契約をサイモン&シュスターと結び、ベストセラー作家になったディーン・クロフォード。その後、冒険&SF小説をAmazonなどのデジタル・プラットフォームでセルフパブリッシング(自己出版)し、大成功を手中に。

  • twitter
  • facebook
  • line
  • hatena

ベストセラー作家になるまで

ディーン・クロフォードさんは昔から作家を夢見ていたわけではありません。10代の頃は空軍のパイロットになることしか頭になかったのですが、色盲であることが判明。その夢はもろくも崩れ去りました。

「結構なショックでしたね。友だちはみんなパイロットでしたし、それで10代の子なら誰でもすることをしました――1年くらい、ふてくされたんですよ」

辛抱強く時機を待つのはクロフォードさんに合っているらしく、実際、この性分が将来、彼に驚くほどの成功をもたらします。当時、自分にはほかに何ができるのだろう、と考えるようになったクロフォード青年は、おじで画家のクリストファー・ジャーヴィスの姿にはっとなりました。

「おじは、やらなくちゃいけないことじゃなくて、心から好きなことを仕事にしているんだと気づきましてね。それが1995年のことで、景気も少し良くなってきた頃でしたし、それで、よし、ベストセラー作家になろうと思ったんです――まあ、15年しかかかりませんでしたが」

ウィルバー・スミスの作品群に触発され、クロフォードさんは10代で長編冒険小説を書きはじめ、それから長年をかけて腕を磨きました。当初は、多くの駆け出し作家と同じで、書き過ぎてしまう気があり、身の程知らずなのではないかと不安になることもあったと言います。それでもグラフィック・デザイナーとして生計を立てながら、脚本も書きました。

「それを15年半やりました。空き時間はすべて書くことに費やした。それこそタイプを覚えるところから始めたんですよ。金曜と土曜の晩以外、ほとんど出歩きもしませんでしたね」

この辛抱強い努力がついには報われるのですが、その前に一つひらめくことがあったと言います。「2005年頃、半年ほど書くのを止めましてね、業界について少し考えてみようと思ったんです。音楽と同じで、出版界にも流行廃りがある。それで初めて、市場に合う作品にしてみたらどうだろうと思って、当時大人気だったダン・ブラウンふうのものを書いてみたんです」

この作戦が当たりました。ロンドンのエージェントと契約を結び、2010年、その本はいわば競売にかけられます。それこそ九死に一生と言えるほどのタイミングでした。クロフォードさんは仕事を解雇されたばかりで、奥さんは妊娠していたからです。これが大手出版社サイモン&シュスターとの3冊35万ポンド相当の契約につながり、以来、クロフォードさんはフルタイムの作家を続けています。

「人の真似ですからね、あれは間違いだったと思います、大半の人は失敗しますし。でもあのときは、それまでの努力が報われたということなのでしょう。3冊ともサンデー・タイムズ紙のベストセラーに入りましたし、あれが僕の人生を一変してくれましたね」

セルフパブリッシングの長所

最初の3冊、『Covenant』『Immortal』『Apocalypse』に続き、サイモン&シュスターはもう2冊、クロフォードさんの本を6桁の額(10万ポンド以上)で買います。ですが、どれも出版界の流行がアクションから『ゴーン・ガール』といった暗い心理スリラーへと移るなか、売れ行きは芳しくありませんでした。将来に不安を感じたクロフォードさんは取るべき道を考えます。そして2013年、デジタル出版はこの先大きく伸びると踏み、自身の出版レーベル、フィクタム(Fictum)を設立。これまでに小説を19作品、セルフパブリッシングしています。彼の“インディ”小説は次々に米AmazonのTop#100Paidランキングに入り、最高で17位を記録。同サイトの本のトップ・ページも飾りました。

ジャンルは得意なSFもの(『Old Ironsides』『Titan』『Predator』)と冒険もの(『The Nemesis Origin』『The Fusion Cage』『The Genesis Cypher』)。リスクはもちろんあるけれど、セルフパブリッシングには長所が数多くあると、クロフォードさんは言います。

「出版社との契約に縛られてもがいている著者にとって、セルフパブリッシングは大きなチャンスです、いわゆる次善の選択肢じゃない。出版社やエージェントに蹴られたからといって、怖がることはない。昔の原稿を掘り起こして、埃を払い、手を入れて、Amazonなどのデジタル・プラットフォームでセルフパブリッシングすればいい。それは誰のものでもない自分の原稿ですし、デジタル業者から支払われる印税率は70%。従来の出版契約の12.5%は足元にも及ばない」

出版社からもらうアドバンス頼みの綱渡り的な生活はあまりに不安定だ、自らの運命は自ら掌握したいと考え、早くから独立系出版界に入ったクロフォードさん。初めてセルフパブリッシングした小説『Eden』が3カ月で2万部を売り、自分の選択は正しかったと確信しました。

「どのジャンルもセルフパブリッシングが増えればすぐにでも盛り上がるはずです。それにセルフパブリッシングなら、著者は得意な分野に集中できる。大手の出版社はいつでも今売れているものばかり追いかけますからね」

ただ、これが出版業界の未来なのでしょうか?

「セルフパブリッシングを始めてからこれまでに、生計が立たないからと、仕方なく普通の仕事に戻っていった従来型の著者を何人も見ています。その一方で、普通の仕事を辞めてフルタイムの作家になり、夢を叶えた独立系の著者も何人も見ています。みな、一般にはあまり知られていませんが、世界中に何百、いえ何千人もいますよ」

この一連の中で最も興味深いのは、クロフォードさんが自分のやり方を何一つ変えていないところかもしれません。以前と同じく、出版に至るまでに必ず4回書き直し、数回読み直しをする。ただ今はAmazonでしか出さずに、それで年間4冊もの作品を発表しています。一般向けのフィクションを書くことに誇りを持っていると言うクロフォードさん。それで年に3万5000ポンドほど稼げるようになり、もう出版社に頼らずとも家族に将来の安心を約束できると思った瞬間、何ものにも代えがたい幸せを感じたそうです。本の表紙も自らデザインしており、近頃は自分のことを消極的な起業家と見るようになったと言います。ところで、才能が涸れるかもしれないと考えたことは?

「ライターズ・ブロック(いわゆるスランプ)はこれまでに一度もありませんね。アイデアは書くのが追いつかないほどありますよ」

この言葉でインタビューを切り上げ、本の執筆に戻ったクロフォードさん。まさに、努力と忍耐は報われると教えてくる生き証人ですね。

Text:(C)The Independent / Zeta Image
Translation:Takatsugu Arai

セルフパブリッシングに関連したおすすめ本

著者
小泉 俊昭
出版日
2013-04-13
著者
["アロン シェパード", "佐々木 俊尚"]
出版日
2010-06-11
著者
["いしたにまさき", "境 祐司", "宮崎 綾子"]
出版日
2013-05-14