このコラムを書くとき、真っ先に思い出したのが本を愛する祖父のこと。買ってもらった本はほとんど思い出せないけれど、「セーラームーン的表紙の本」を心躍らせながら祖父に見せると「?」という顔をしていた。
幼稚園の鳥小屋やバラ園、青空薬局。小説を読むときには誰しもが物語の中の景色を思い浮かべるのではないでしょうか。この本の中に出てくる場所は何となくぼんやりとしていて、不鮮明な印象があります。しかしそれが全然関係ないのに自分の思い出と重なるようで素敵。浮世離れしているわけではないけれど、なんか現実味がなくて、なのにノスタルジックな気持ちにさせてくれる一冊。
- 著者
- 小川洋子
- 出版日
- 2016-01-07
村上春樹氏の小説に登場する人物もまた、不鮮明だと感じることが多いです。その人の生活や服装、心情などはとてもわかりやすいのに顔がはっきりしない。『ノルウェイの森』の直子や緑なんかは別だけど。中でも『鼠三部作』はどの作品を読んでも鼠の顔が『鼠』っていう文字のまんま。これはその第一作目。読んだわ!って思われそうですが、夢の中にいるみたいで好きな作品。
- 著者
- 村上 春樹
- 出版日
他人の目を気にしてびくびく生きていた主人公が会社をやめ、離島のホテルで過ごす時間を描いた作品。この何ともブルジョワな雰囲気の漂う離島のホテルが、絶対行ったことないのにどうにも記憶のどこかにあるような気がして、モデルとなった場所はないかと検索しまくってしまいました。働く女性なら憧れと共感でため息が出るはずです。
- 著者
- 西 加奈子
- 出版日
- 2011-08-04
小塚舞子の徒然読書
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