ミュージシャンやロックバンドの解散、引退、活動休止は定期的に世間を騒がせます。大抵の場合、あまり理由は具体的に語られません。「オトナにはいろいろあるんだろうな」と想像して理解ある良きファンでいようと自分自身を納得させても、どこか腑に落ちません。多感な中学生・高校生の頃、私の場合はサザンオールスターズとMr.Childrenを聴いて育ちました。サザンもミスチルも休業発表の際には、やっぱり私も思春期でしたから、かなりモヤモヤしました。
自分は今、プロレスラーとして生きています。闘いという表現活動にも、時に壁にぶちあたったり、心を完全に折られてリングに気持ちが向かない、つまりミュージシャンにとっては作品を産めない状態に陥ったり……どうにも立ち行かなくなる瞬間が訪れたりするものです。表現するのは楽しいけれど、それを“し続ける”ことはすごく大変。逆に言えば“し続ける”ことこそがプロの仕事なのかもしれません。趣味を仕事にすることは楽しいことでもあり苦しいことでもあります。
9月18日は私のデビュー記念日でした。
11年前メキシコでのデビュー戦のギャラは20ペソ(当時のレートで約2400円)。そこからスタートしたプロレスラーKUSHIDAの人生は、海外修行中のカナダで路頭に迷い休業に追い込まれることもあったりしましたが、なんとか今も船を漕いでます。まだまだ作品を生みたいと思っています。だから、今日もリングに立ちます。
仕事を考えること、それはすなわち人生を考えること。趣味を仕事にしないほうが良いのは本当か? 職業選択の視野を広げるKUSHIDA的就活本を紹介します。
- 著者
- 小畑 健
- 出版日
- 2009-01-05
中学生2人組が少年ジャンプの連載を勝ち取るまでのサクセスストーリー。「漫画が好きだ!」という、ただそれだけをガソリンに2人の少年が成功の階段を昇っていく様に興奮しながら、一気に読破できる。漫画家という職業の裏側と漫画そのもの仕組みを、当然のことながら漫画で描いている。その構図がおもしろい。好きなことを職業できるか否か、その差は紙一重。表現活動の基本や原点を、この漫画は照らしてくれる。
- 著者
- 松本 キック
- 出版日
- 2016-06-23
プロレスラーも、身体は疲れているのに心がザワザワして眠れないことがある。試合前夜は緊張で眠れず、試合当日の夜は歓声が耳にこびり付いて脳が覚醒したまま。丸2日間、眠れないとなると身体と精神の分離を感じたりもする。これは舞台に立ち、表現する者の宿命なのかもしれない。舞台に立てなくなり療養生活を強いられるハウス加賀谷さんを、その相方・松本キックが病との距離感を図りながら過ごした葛藤の日々。
お笑いコンビ「松本ハウス」の復活までの道のりを描いた本である。「自分の入場曲が会場に鳴り響いているのに、まだコスチューム履けてない! やべー!!」。1週間に1回の割合で必ずそんな夢を見てしまう私にとってこの本は、対岸の火事ではない。
- 著者
- 出版日
- 2015-10-17
三谷幸喜作品の映画・ドラマが大好きだ。特に『ラジオのじかん』と『みんなのいえ』はマイフェイバリット。
その道のプロフェッショナルがそれぞれの仕事で壁に当たり、もがく姿を、笑いと皮肉を交えつつ描いている。で、この本は映画公開直前の煽りインタビューをまとめたもの。だから総じて、作品に対しての言葉の熱量が高い。香川照之さんとの対談で、三谷流脚本の書き方のヒントになる例題が本人から出されているのだが、それは小説を書いたことのある私からすると「なるほど!」と膝を打つものだった。
- 著者
- 井上 一馬
- 出版日
ウディ・アレン愛に満ち溢れた一冊。
世の中を皮肉り、自虐と笑いを交えながら価値観へアンチテーゼするウディ・アレンをチャップリンとの違いなど多方面から分析している本。私自身、ウディ・アレン監督作品の『ミッドナイト イン パリ』で脳天に雷が直撃したくらいの衝撃を受けて以降、彼の大ファン。彼のファンだと公言していたら、外国人レスラーに怪訝な顔をされるわ、さらに彼の顔写真がプリントされたTシャツを海外遠征に着ていったら、路上で通りすがりの人に指を指され爆笑されたわで、ちょっと頭のおかしい(褒めてます)ウディ・アレンを好きな私も、もしかしら頭がどこかおかしいのかもしれない。
- 著者
- 岡本 太郎
- 出版日
- 2016-04-09
壁にぶち当たったときに、つい手にとってしまう自己啓発関連の本。
人生を高速道路に例えるならば、私はジョセフ・マーフィー、もしくは岡本太郎先生の本を迷わずガソリンスタンドと位置づけて、時々給油してもらうことにしている。この本を読み終えたら太陽の塔、実物をこの目で見てみたいと思った。次の大阪遠征のときに見に行ってみるかな。