道尾秀介おすすめ文庫本ランキングベスト10!どんでん返しで読者を驚かせる

更新:2021.11.24

巧みに張り巡らせた伏線で読者を一定方向に導き、最後に用意した大どんでん返しで見事に読者を裏切る道尾作品。作品ごとに新鮮な驚きを与えられる読者は、その虜になってしまうのです。そんな道尾秀介のおすすめ作品をご紹介します。

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道尾秀介とは?ミステリーで人に感動を与えたい!

1975年東京生まれ。大学卒業後、営業職のサラリーマンとしての勤務のかたわらで執筆活動を行い、2004年に『背の目』でホラーサスペンス大賞・特別賞を受賞し、間もなく作家を専業とするようになります。

以来、作品を出す毎に話題となり、2011年『月と蟹』で受賞した直木賞をはじめとして、数々の伝統ある文学賞を受賞します。ミステリー小説、推理小説における活躍は多くの人の知るところです。

意外なことに、自身は読書家ではなかったと言い切る道尾秀介は、本を読むことよりも人と出会って関わっていくことの方を大切にしてきたそうです。彼の作品を読んでいると、あたかも自分がその世界に立っているかのように、風や光や匂いを感じている錯覚に陥るのです。

アウトドア少年だったという道尾秀介が体感したものだからこそ、読者も追体験できるのでしょう。

初期の頃の道尾作品には、名字であれ名前であれ、漢字であれカタカナであれ、彼のペンネームである「ミチオ」という登場人物が必ず出てきました。作者の遊び心がそんなところに出ています。それを探すのもまた密かな楽しみなのです。

人間同士の絡み合う感情を書いていきたいと願う道尾秀介。彼が、これからも作品を通して私達読者にどれだけの贈り物(作品)を与えてくれるのか楽しみでなりません。

10位:サスペンス?ホラー?ファンタジー?しのびよる薄気味悪さ

かつて小説を読んでこんなに驚かされたことがありません。

夏休みを前に欠席したクラスメイトS君に、先生から頼まれたプリント類を渡しに行ったミチオはS君の死体を発見してしまいます。しかしその後、あろうことか別の生き物に姿を変えてミチオのもとに現れたS君。僕は殺されたんだ、とミチオに訴えます。

ほかにも、ミチオの周辺には、動物虐待を思わせるような事件や担任の先生の不審な行動、実態のよくわからないミチオの母など、不可解なことばかりが溢れています。

いったい何が起こっているのでしょうか? 読み進めるうちに、読者は驚愕の事実に向きあうことになります。

 

著者
道尾 秀介
出版日
2008-07-29


本書では「生まれ変わり」がテーマとなっています。内容に加え、小説としての表現方法は人によって好き嫌いが分かれる作品でしょう。しかし道尾秀介はこのような描写が得意な作家であり、その驚きの工夫を楽しむ読者が多いのも事実。

サスペンスホラー映画が好きな人にとって、たまらない作品であることは間違いありません。
 

 

9位:道尾秀介が描くミステリアスで濃密な短編集

本作には6つの短編が納められていますが、『鬼の跫音』という題の作品はありません。この言葉は5作目の「冬の鬼」という作品の中に出てきます。作品の冒頭で主人公が「遠くから鬼の跫音が聞こえる。私が聞きたくないことを囁いている」と日記に綴るのですが、この言葉が全ての作品の主題となっているのです。

また、全ての作品にSという人物が登場しますが、それぞれの作品に登場するSはまったく別の人物です。全てのSは主人公に人の道を踏み外させる加害者の役割を担った後、主人公によって被害者へと変化します。そして主人公には、道を踏み外す直前に接した動物や鳥、昆虫といった自然界のものの記憶がなぜか鮮明に残るのです。それは狂気の象徴であるとともに最後の理性の残像でもあり、封印した記憶の底から主人公を苛む『鬼の跫音』となります。

著者
道尾 秀介
出版日
2011-11-25

最初の「鈴虫」という作品では、主人公の男は11年前に友人のSという男を山奥の土の中に埋めた時、そこで鈴虫が鳴いていたことをずっと憶えています。その後結婚して息子が生まれ、幼い息子が鈴虫を飼い始めた時、男は鈴虫が自分に何かを囁いているのを聞くのです。

物語は読者の予想を裏切り、それぞれの主人公たちは意外な結末へと向かいます。簡潔に研ぎ澄まされた文体の中に人間の複雑な愛憎が凝縮された、ミステリアスで濃密な短編集です。

8位:道尾秀介が山本周五郎賞を受賞した作品

本作は6章からなる短編で構成された短編集です。それぞれの物語の主人公たちは傷ついた心を持ち、心に闇を抱えながら生きています。

最初の話は、30年前に自殺した父の後を継ぎ印章店の店主をしている男の話です。男の母は5年ほど前に認知症を発症し、毎日紙を鋏で切ったり絵を描いたりして過ごしていました。ある夏の日、母が描いた絵を見て男は驚愕します。その絵は30年に一度しか咲かない笹の花の中に1組の男女が描かれていました。男は30年前の夏、笹の花の中で自分が犯した罪を思い出し、それを母が見ていたことを知るのでした。

次の物語は前の物語の一部を受け継いで進みます。それはまるで罪や哀しみの連鎖を見ているようですが、物語を読み進むうちに哀しみの中に幽かな光が差しているのを感じ取ることができます。

著者
道尾 秀介
出版日
2012-10-19

風媒花とは、風を媒体として受粉する花の事で、虫媒花とは虫を媒体として受粉する花の事です。光媒の花というものは現実には存在しません。光を媒体として咲く花とは、人間の事なのです。

道尾秀介の得意とするミステリー要素もあり意外な結末に驚かされながらも、美しい文体で静かな感動を与えてくれる作品です。

7位:道尾秀介が描くミステリーの王道

我茂洋一郎と水城徹は大学時代からの友人です。共に相模野医科大学の医学部を卒業し、徹は研究員として大学で働いており、洋一郎は附属の大学病院に勤務しています。洋一郎の妻の咲枝と徹の妻の恵も同じ大学の同級生で、洋一郎の息子の凰介と徹の娘の亜紀も同じ小学校の同級生です。お互いの家も近所にあり、家族ぐるみで仲良く付き合ってきました。

しかし咲枝は、数年前から患っていた癌のため亡くなってしまいます。妻の死後、洋一郎は睡眠薬を飲むようになり、凰介も学校を休んでいました。そんな時、亜紀から凰介に電話があり、気晴らしになるから小学校の運動会に来るように言われます。

洋一郎と共に運動会に出かけ凰介は久々に元気を取り戻しますが、亜紀には元気がありませんでした。亜紀は具合が悪いと言って1人で先に帰ってしまい、徹と恵が仕事で不在だと知っている洋一郎は亜紀の様子を見に行くと行って凰介を先に帰します。その日の夜、恵は徹がいる大学の研究棟の屋上から投身自殺をするのでした。

著者
道尾 秀介
出版日
2009-08-20

後日、洋一郎と凰介が徹の家を訪れると亜紀はなぜか洋一郎を避けます。徹の精神状態も普通ではなく、精神安定剤を服用していました。徹は洋一郎に、恵の浮気と亜紀が本当に自分の娘なのかを疑っていることを打ち明けます。その時家から飛び出した亜紀は、走っている車に自ら飛び込むのでした。幸い軽症で命に別状はありませんでしたが、凰介は亜紀に何か秘密があることに気付きます。さらに凰介は、父の洋一郎の行動が奇妙な事にも気が付くのでした。

咲枝の死を境に、凰介の周囲は明らかに異常になります。何かに怯える亜紀を救いたいと行動を起こすうち、凰介はお互いの家族の隠された真実を知ることになるのでした。

本作には序盤から随所に言葉のトリックが仕掛けられているのですが、最後まで気づかず読み続けてしまいます。最後に全ての謎が解き明かされたとき、思わず最初の1ページ目から読み返してしまうでしょう。本格ミステリ大賞を受賞した本作は、ミステリの王道を行く大作です。

 

6位:巧みな伏線、騙される快感!

主人公は詐欺師の武沢。武沢は根っからの詐欺師というわけではなく、友人に騙されて借金を背負うことになった過去を持ち、そのことをきっかけに詐欺組織の一員となって働くことを余儀なくされた男です。

そんな武沢が直面した、一人の女性の死。そのことをきっかけに武沢は組織を抜けます。生まれ変わってもう一度生きてやろう、ただし今度は負けない、という決意のもと、武沢は相棒のテツとともに詐欺師として独り立ちすることに。そして武沢の前に一人の少女が現れたことから物語は大きく動き出します。

著者
道尾 秀介
出版日
2011-07-15

様々な過去を持つ登場人物たちとの奇妙な共同生活と、巻き起こる数々の事件。

散りばめられた伏線と、最後の最後に待っている落とし穴。快感すら覚えるこの「騙し」は道尾秀介ならではと言えるでしょう。騙されないように警戒しながら読み進めたのにもかかわらず、最後にしてやられます。

伏線が最後にきっちりと回収され、「騙された!」と思うと同時にすっかり納得もしてしまう。そして随所に織り込まれた、心にズシンとくる登場人物たちのセリフ、じんわりと胸が熱くなり、読後感は最高です。

どうしてこんなに読者を翻弄してくれるのだろうと、感動すら覚えるこの作品。ぜひ道尾秀介の手のひらの上で転がされてみてください。

5位:ハーレキンの素顔は、泣いているの?

腕のいい家具職人だった東口は、職人としてのこだわりが捨てられなかったために時代の波に乗りきれず、自分の会社も手放し、家族とも別れ、ホームレス生活をしていました。

ホームレスとはいっても、家具の修理の仕事は続けています。ある日、自分のトラックに乗り込んだら、見たこともない若い女の子が助手席にいました。奈々恵というその女の子は、東口が家具の会社社長だった頃から憧れていて、弟子にしてほしいと話します。断る東口ですが、どこかつかみどころのない奈々恵はそのまま東口に追い縋り、そのままホームレス仲間と交流していくのです。

道尾秀介といえば、初期はどんでん返しのあるミステリーの描き方が上手な作家でしたが、この作品においては、社会的弱者としての苦しみや悲哀、そんな状況でありながらもコミカルで楽しいやりとりなど、人間や心理の書き方で読者を引き込みます。

しかしミステリーをつくる力も健在。ある日、ホームレス仲間の身に危険が迫るところから物語は一気に加速しだし、ついには、東口にも危険が迫るのです。

 

著者
道尾 秀介
出版日
2016-01-21


人情味あふれる日々の生活描写から、一転、それまで散りばめた伏線を回収しながら疾走しだすミステリー展開へ。まるで道尾秀介流の2時間ドラマを見ているようなこの作品は、先へ先へと読み進めたくなる気持ちを抱えながら、主人公に「あぶない!」、「頑張って!」と思わず共感してしまうでしょう。

道尾秀介のミステリーだけに、あまり詳しく話すと興ざめしてしまうのでやめておきますが、「いざとなったら人間は強い!」、そう、人間の底力を信じたくなる物語なのです。
 

4位:忘れたかったら手放せばいい!あなたにも手放したいものがあるはず

その町を吹く風は硫黄の匂いを含んでいます。そんな田舎のさびれた温泉町で暮らす旅館の息子・逸夫の、小学校卒業から中学校卒業目前までの心の成長が描かれた作品です。

どこをとっても平凡な自分。何の取り柄もない自分。逸夫はいつも自分をつまらない人間だと思ってきたのですが、ひょんなことから、転校生の敦子からとんでもないことを頼まれてしまいます。

 

著者
道尾 秀介
出版日
2014-08-12


この作品でも、道尾秀介お得意のどんでん返しがあり、ある時を境に展開が変わっていきます。

母に頭が上がらない情けない父や、旅館の従業員達など、さりげなく描かれていた人達が最後に生き生きとした存在感を表してくるのです。

消し去りたいほどつらい過去、そして今の自分と決別するために、この作品の登場人物達はどんな行動をとるのでしょうか。

胸の奥まで深く染みて、最後には未来への希望を感じる作品です。
 

3位:道尾秀介のどんでん返し小説といえば本作

ミステリーの楽しみのひとつであるどんでん返し。じりじり真相に近づいていき、ゾワっとさせてくれるどんでん返しを味わえるのが『ラットマン』です。

アマチュアバンドのメンバーである姫川。彼は、バンドメンバーの中で紅一点のひかりと交際していました。そしてひかりがバンドを抜けたことをきっかけにひかりの妹、桂がバンドに加入。ひかりとは違った雰囲気の桂に姫川は惹かれます。

そんな中、ひかりが突然亡くなってしまいます。そしてそれは、事故死ではなく他殺であることが疑われます。犯人は誰なのか。姫川の過去の経験と交錯しながら物語は真相に近づきます。

 

著者
道尾 秀介
出版日
2010-07-08


姫川は過去に姉を亡くしていました。そのことをきっかけに、母親とは今もうまくいっていません。またひかりの妹、桂と亡くなった姉が姫川には重なって見えるのでした。

そんな姫川を縛る過去の記憶。それは姉の死に関する出来事です。事故死とされていた姉の事件。そして今回のひかりの事件。2つの事件がリンクしながら、見えそうで見えない事件の真相に読み進める手が止まらないでしょう。

道尾秀介の作品を読んで感じることは「思い込みの怖さ」。本作も違わず、作中人物は思い込みにとらわれ、読者も思い込みの渦に飲み込まれてしまいます。その怖さを楽しみに変えられるひとには、まさにこの一冊!という小説です。
 

2位:悲しい事が起こるのはいつも雨の日だった

19歳の蓮と14歳の楓の兄妹。中2の辰也と小5の圭介の兄弟。両親を亡くし、親の再婚相手というだけの法律上の親と同居しているという点で、2組の兄妹(兄弟)の置かれた状況はとても似ていました。

継父を憎む蓮と楓。継母に反発する辰也と継母を慕う圭介。接点のなかった彼らでしたが、雨の日の忌まわしい出来事をきっかけに、少しずつ重なり始めます。
 

著者
道尾 秀介
出版日
2012-01-28


全編を通して降り続く雨の持つ重たいトーンに、視界の片隅を龍が横切り、妖しく光る龍の目を感じる読者もいることでしょう。あまりにも臨場感のある雨の描写に、実際に雨の日に読んでみると良いかもしれません。

読み進めるうち、知らず知らず4人の子ども達の幸せを願っている自分に気づきます。特に子供の心理描写が巧みなことは道尾秀介という作家のひとつの特徴でしょう。

ラストは見事に収まるものの、読後感の良し悪しは人によって分かれそうです。けれど、子どもの持つパワーに感動させられる作品です。
 

1位:安心感に包まれるラスト、道尾秀介の最高傑作!

素直で恋愛に臆病な好青年・秋内静(せい)は、大学で3人の友を得ます。世の中を斜めにみているようなイケメンの京也、その彼女のひろ子、ひろ子の高校時代からの友人である智佳。

静は、智佳にひとめぼれしますが、なかなか思いを伝えられないままに4人で過ごすことが増えていきます。自分の片思いと、大人っぽいようでどこか脆さを感じさせる京也のことも少し気になりながらも普通の大学生活を送っていた静でしたが……。

 

著者
道尾 秀介
出版日


4人の通う大学の女性教授の息子が遭遇した交通事故を目の当たりにした日から、4人の関係はどこか少しずつ崩れ始めるのです。

青春群像劇のようでもあり、個性的な登場人物の言動には、ところどころスパイスのようにユーモアの味付けもあり、興味深く読み進められます。けれどそこは道尾秀介。この作品でもまた至る所に仕掛けた伏線があり、ミスリードされる読者もいるに違いありません。

しかしこの作品では、まんまとだまされても、気づいた時に作者に感謝したくなるでしょう。

誰でも若い頃は自分以外がみんなかっこよく見えてコンプレックスのかたまりになるような時期があるものですが、この物語を読むと、どんなに優れて見える人でも、周りにはわからない苦悩を抱えていることが分かります。同じように、日々を真面目に送っているつもりでも知らない間に人を傷つけていたり、人から恨まれていたりするものだということも。
 

道尾秀介作品をご紹介しました。道尾作品には何かで悩む子どもがよく登場します。大人の読者は、子どもの頃周りにあった風景や物や音を思い出し、悩んでいた自分も思い出し、切なくなるのです。そして大人になっても欠点だらけの自分がなぜか愛おしく思えるのです。

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