鬼才・麻耶雄嵩のおすすめミステリー小説ランキングベスト6!

更新:2021.11.24

『翼ある闇 メルカトル鮎最後の事件』でデビューして以来、ミステリー愛好家のみならず、同業者の中からも高い評価を得ている麻耶雄嵩がこれまで生み出してきた異彩を放つ著書の中から、是非おすすめしたい6作をご紹介させていただきます。

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知る人ぞ知るミステリー界の異端児、麻耶雄嵩!

1991年にデビューをし、これまで読者の頭と心をもてあそぶような数々の問題作を世に放ってきたミステリー作家・麻耶雄嵩。

蟻の一匹も通る穴のない緻密なロジックと、大胆で豪快なトリックは一度味わえば病みつきになること間違いなしです。

ただ、ミステリーに慣れていない方がいきなり麻耶雄嵩の著書を読んでしまうと、独特の世界観などに途中で読むことを諦めてしまうかもしれないので、ミステリーの世界に少し慣れてきた方におすすめの作品をご紹介いたします。

6位:日本推理作家協会賞と本格ミステリ大賞をダブル受賞した『隻眼の少女』

著者
麻耶 雄嵩
出版日
2013-03-08


山深い村で語り継がれている伝承、本家と分家の軋轢、後継者を巡る争いは横溝正史の作品を思わせます。

村の旅館に宿泊している種田静馬は、とある殺人事件に巻き込まれ容疑者にされてしまいます。しかし、突如現れた御陵みかげという探偵が静馬への疑いを晴らし、その後見事事件を解決します。そして十八年後、解決したはずの事件が何故か再び続発するのです。

作者の作品の中では比較的読みやすい部類に入るので、初めて読む方はこちらの作品がおすすめかもしれません。
 

5位:麻耶雄嵩の陰の名作との声も多い『木製の王子』

著者
麻耶 雄嵩
出版日


デビュー作で登場した木更津が再び戻ってきます。この作品の特徴はなんと言っても分刻みで仕掛けられたアリバイです。はっきりと言って、アリバイ崩しの部分は読んでいて気が遠くなってしまいそうになりますが、この作品を読むにあたって重要なのはそこではありません。

途中までは彼にしては比較的正統なミステリーに感じるかもしれませんが、ラストでやはりやってくれます。

比叡山の麓に隠棲する白樫家。奇妙な家系をもつ閉鎖された一族が住む屋敷で惨劇が起きました。一族の若嫁・晃佳が殺害され、その生首は何故かピアノの上に飾られていたのです。雪で外界から隔離された屋敷で外部犯の可能性は考えられないが、関係者全員には緻密なアリバイが存在しているという不可能犯罪に木更津が挑みます。

4位:読み進めていくうちに感じる違和感『螢』

著者
麻耶 雄嵩
出版日


シチュエーションとしてはありきたりともいえる、嵐の中の山荘という状況を使ったクローズド・サークルものです。ラストに味わう衝撃は数多あるミステリー小説の中でもトップクラスで、どれだけ構えていたところでこの衝撃から逃れることは困難です。

オカルトスポットサークルに所属している六人の大学生は、合宿という名目で京都の山奥にある屋敷「ファイアフライ館」を訪れました。ここは十年前に惨殺事件が起きた場所で、半年前に同サークルのメンバーが殺害された場所でもあるのです。そして、嵐によって陸の孤島と化した屋敷でまたもメンバーのひとりが何者かに殺害されることにより、物語は誰もが予想だにしない結末へと向かいます。

読んでいる最中は、何ともいえない違和感でもやもやとしたままラストへと向かうことでしょう。しかし、ラストを迎え違和感の正体に気づいたとき、ミステリーの醍醐味と呼べる快感に浸れます。

緻密で幾重にも仕組まれたトリックは思わず再読してしまうこと間違いありません。

3位:麻耶雄嵩ワールドが炸裂する『鴉』

著者
麻耶 雄嵩
出版日


麻耶雄嵩の著書の中でも一際癖の感じられる作品がこの『鴉』です。登場人物の名前や舞台設定など、若干頭に入ってきにくい部分もありますが、そこを乗り越えて最後まで読み進めていただければ、傑作と呼ばれる理由がわかるはずです。

珂允(かいん)は弟・襾鈴(あべる)の死の謎を追って、地図にも載っていない山奥の村へとやってきました。大鏡と呼ばれる現人神を崇める鎖国的なその村に潜入した珂允を待っていたのは、足跡のない不可解な連続殺人事件だったのです。

トリックもさることながら、巧みに張り巡らされた伏線や読者をもてあそぶかのように構築されたプロットはお見事の一言です。

2位:異端児らしい処女作『翼ある闇 メルカトル鮎最後の事件』

著者
麻耶 雄嵩
出版日
1996-07-13


もちろん処女作なのでいきなり最後の事件と言われてもわかりません。メルカトル鮎という意味不明な言葉も知りません。このタイトルからも、麻耶雄嵩という作家のもつ異質さを僅かながらに感じ取れることでしょう。このメルカトル鮎というのはお察しの通り人物の名前で、後に登場する木更津と同じ探偵です。

京都近郊に建つ屋敷「蒼鴉城」。私立探偵である木更津は伊都という人物から依頼を受け、推理小説家の香月とともに伊都が住むその屋敷を訪れたのですが、二人を出迎えたのは数台のパトカーと、首と足首を切断され息絶えた伊都の姿でした。

前半までは淡々と事件が進んでいくのですが、木更津とメルカトル鮎の推理合戦が始まるところから事件が二転三転し、予想もつかないところへと着地します。

1位:麻耶雄嵩の最高傑作『神様ゲーム』

著者
麻耶 雄嵩
出版日
2015-07-15


子ども向けに書かれた作品ですが、とても子ども向けとはいえない内容になっています。事件が起き、推理を経て犯人を見つけ出すという展開ではなく、いきなり読者に対し犯人の名前が突き付けられ、その人物が本当に犯人なのかを推理していくという一風変わったミステリーになっています。

神降市に住んでいる小学生の黒沢芳雄は、同級生とともに市内で続発している猫殺し事件の謎を追いかけます。ある日の清掃時間、半月前に転校してきた鈴木太郎は芳雄に「自分は全てを知ることのできる神様」だと告げるのですが、芳雄は単なる出まかせだと聞き流すのです。後日、転校生の口から猫殺しの犯人の名前を告げられた芳雄はそれが事実なのかを確かめるのですが……。

子ども向けだからといって甘くみていると、真実にたどり着けぬまま読み終えてしまうので注意してください。

また、この作品の続編である『さよなら神様』もおすすめなので、読み終えた方は是非そちらもご覧になってはいかがでしょうか。


今回紹介したのは6作品ですが、もちろん他の著書も素晴らしいミステリーですので、麻耶雄嵩という作家の独特な作風に魅力を感じた方はそちらも読んでみてはいかがでしょうか。

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