折原一のおすすめ小説5選!日本を代表する叙述トリック作家

更新:2021.11.24

1980年後半から活躍を続けるミステリー作家・折原一。ほとんどの作品で叙述トリックを使っており、日本を代表する叙述トリック作家と言っても過言ではありません。今回は折原一のおすすめ小説を5点紹介します。

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日本を代表する叙述トリック作家・折原一

折原一(おりはら いち)は、1988年、短編集『五つの棺』でデビューしたミステリー作家です。

特徴はなんといっても叙述トリック。叙述トリックとは、文章上の仕掛けによって読者を勘違いさせるトリックのことです。例えば、「俺」が一人称の人物が実はかわいい女の子だった、といったものです。折原の叙述トリックはこんな簡単なものではなく、複雑な物語構成で読者を惑わせます。

通常であれば、トリックの種類を明らかにすることはネタバレになってしまいます。しかし、折原の場合、あまりに多くの作品で叙述トリックを用いており、本の帯にも「叙述トリック」とはっきり書かれるほどで、ネタバレに成り得ないのです。ですから、日本を代表する叙述トリック作家と呼ばれています。

覗き男が見た驚愕の真実

アパートで独り暮らしを始めた女性は、誰かに覗かれているのではないかと悩んでいました。実際、翻訳家の大沢が覗いていたのでした。ある日、大沢はいつも通り覗きを始めます。そこで見たのは住人の死体。ショックのあまり酒で現実を忘れようとした大沢は、アルコール中毒で入院してしまいます。

退院後、大沢は再び同じ部屋を覗き始めます。新たに女性が入居していたのですが、その女性の姿に心を乱された大沢は、再び酒に逃げました。

一方、大沢に恨みを抱く泥棒の曽根は、大沢が覗いていた部屋の女の日記を盗み読みました。そこには驚きの事実が書かれていたのです。

 

著者
折原 一
出版日
1999-10-07


『倒錯の死角』は1988年に発表された作品です。本作は翻訳家の大沢、覗きの被害者の日記、泥棒の曽根の3つが複雑に絡み合って物語を展開しています。それぞれの視点の物語は淡々としたもので普通なので、どこに作者の罠が仕掛けられているのかわかりません。しかし、結末までいくと芋づる式に真相がわかり、読者は騙されてしまうでしょう。

折原一の加齢なるどんでん返し!盗作された男の復讐劇

山本は推理新人賞の応募要項を見て『幻の女』という小説を仕上げました。友人に原稿の清書をお願いしましたが、不注意で原稿を盗まれてしまいます。

後日、応募しようと思っていた新人賞の受賞作が、盗まれた『幻の女』であることを発見します。その作者は白鳥翔という名前でした。怒り狂った山本は白鳥に対して嫌がらせを始めます。こうして、原作者と盗作者の戦いが始まるのです。

 

著者
折原 一
出版日
1992-08-03


『倒錯のロンド』は1989年に発表されたミステリー作品です。本格推理小説の大家・島田荘司をして、「驚嘆すべき傑作」と言わしめた作品です。叙述トリックをメインにした長編というと、多くは複雑な構成を用いていますが、本作は至ってシンプル。注意せずに読むと、原作者と盗作者の攻防だけを読んでいるようにしか思えません。シンプルなだけに、終盤、叙述トリックによるどんでん返しの華麗さが際立ちます。

依頼の裏に隠された驚愕の真実

売れない小説家・島崎の元に、裕福な中年女性から依頼が来ました。失踪した息子・淳の伝記を書いて欲しいという依頼です。

依頼を受諾した島崎は、依頼人の館で資料の山を読み込んで、淳の生涯を調べていきます。すると、おかしなことに気付きました。淳の周りでは不審な死が相次いでいるのです。そしてその陰には背の高い異人の影が見え隠れしているのでした。やがて島崎は気付きます。淳の存在を以前から知っていたことに。

 

著者
折原 一
出版日


『異人たちの館』は1993年に発表されたミステリー作品です。本作は一人称、三人称、新聞記事、謎のモノローグ、作中作の5つで構成されています。その各所に叙述トリックの種をばらまかれているのですが、島崎を中心とした物語の展開の面白さに、その種に気付くのは容易ではありません。気づいたころにはすっかり作者の罠にハマり、最後に明かされる真相の意外さに驚かされます。

折原一が少年犯罪の報道に疑問を呈した名作ミステリー

ノンフィクション作家・高嶺は埼玉県で起きている連続失踪事件を調査します。その中で、15年前の事件との関連性が浮かんできます。

今回の事件では、「ユダの息子」というメッセージが残されていました。15年前の事件では、現場に「ユダ」というメッセージが残され、未成年の「少年A」が逮捕されています。高嶺は15年前の犯人を探し出し、取材しようと試みます。果たして、今回の事件の犯人も「少年A」なのでしょうか。

 

著者
折原 一
出版日


『失踪者』は1998年に発表されたミステリー作品で、神戸連続児童殺傷事件をモデルとしています。

本作は二部構成です。第一部では少年Aが犯した犯罪について語られる、いわば前振りです。第二部では事件の真相に迫ります。めまぐるしく視点が変わりますし、時系列も意図的にぐちゃぐちゃにしているので、混乱させられます。「少年A」という匿名性を上手に扱い、少年犯罪に関する報道への皮肉も込めた小説です。

20年来の恨みを果たす驚きの計画!折原一の名作サスペンス

「沈黙の教室」と呼ばれる青葉ヶ丘中学の3年A組。何者かはわかりませんが、恐怖新聞なる不気味なものを発行していました。そこには、粛清の対象が書かれており、対象として名前を書かれたものは、残酷ないじめに遭ってしまいます。次々と粛清対象は増えていき、いじめも止まりません。

それから20年後、クラス会の告知が新聞に載りました。それを見たある男は報復の機会が来たことに喜び、大量殺人計画を進行し始めます。

 

著者
折原 一
出版日


『沈黙の教室』は1994年に発表されたミステリー作品で、日本推理作家協会賞(長編部門)受賞作です。本作ももちろん叙述トリックが入っているのですが、そちらよりもサスペンスに重きを置いた小説になっています。

前半は20年前の中学校で起きたいじめについて書かれていて、正体不明に恐怖新聞に書かれた粛清の名のもとに生徒たちがいじめを行うさまはホラーのようでもあります。後半は、クラス会の当時に起こされた事件が描かれ、殺人計画の真相や恐怖新聞の作者といった謎が一挙に解決します。叙述トリックだけでなく、ホラー風味なサスペンスも書けることを証明した作品です。


以上、折原一のおすすめ小説を5作紹介しました。叙述トリックとわかっていても、騙されてしまうほどの力量があります。ぜひ折原一の叙述トリックを体験してみてください。

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