マッツ・ミケルセンインタビュー。マーベル映画『ドクター・ストレンジ』出演

更新:2021.12.3

映画『ドクター・ストレンジ』に出演するマッツ・ミケルセンのインタビュー。『007 カジノ・ロワイヤル』、『ハンニバル』、『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』など数多くの話題作に出演するミケルセンが「誰でも主役になれる」と語った。

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マッツ・ミケルセンが出演するマーベル映画『ドクター・ストレンジ』

マーベル映画『ドクター・ストレンジ』には信じられない程豪華なキャストが出演しています。BBC製作のドラマ『SHERLOCK(シャーロック)』にて主演を務めるイギリスの世界的俳優ベネディクト・カンバーバッチをはじめ、アカデミー賞受賞者のティルダ・スウィントンや、アカデミー賞ノミネートのキウェテル・イジョフォー、そしてレイチェル・マクアダムスです。

更には、ダニエル・クレイグが初めてジェームズ・ボンドを演じた映画『007カジノ・ロワイヤル』のル・シッフル役や、ドラマ『ハンニバル』のハンニバル・レクター役で知られているマッツ・ミケルセンも出演しています。

体力的に、これまでで一番厳しい映画

明るい茶色の革ジャケットを着た彼は、ロンドンにあるホテルの部屋に私を迎え入れ、固い握手と共に水をすすめてくれました。これほど礼儀正しいハリウッドスターは滅多にいません。

「体力的には、これまでで1番厳しい映画でした」と、『ドクター・ストレンジ』について彼は語りました。 

「撮影は難航し、過酷なものでした。1日10〜12時間…それを何週間も続けるのですから、撮影に慣れた方にでさえ相当過酷な撮影でした」

それにもかかわらず、ミケルセンは「とても辛い状況だとしても、ただただ楽しいのです」と付け加えます。

「望んだ形に仕上げる事が出来たし、実際に見たものは更に魅力的でした。私達は実際の事のように恐れ、又怖がる事が出来たのです。これはとても素晴らしい事でした」

マッツ・ミケルセンが演じたカエシリウスという悪役

ミケルセンは、ティルダ・スウィントンが演じるエンシェント・ワンの元弟子カエシリウスという悪役を演じています。

カエシリウスは、邪悪な力に魅入られ、師と袂を分かちました。

「彼は永遠の命に魅入られ盲者と化しています」

エンシェント・ワンが永遠の命を独占していたと知り、彼女を信じていた彼の世界は崩れ去りました。「私達は皆平等です」と言う人がいますが、そうではありません。私達が1000ドル持っていたら、彼女は1000000ドルを持っているのです。

「そんな事はおかしい!分け与えないだなんて!」そうカエシリウスが憤るのも無理はありませんでしたが、その為に過激な方法を取り、多くの犠牲者を出してしまいました。

この映画が彼と彼の信者が図書館員を斬首する場面から幕を開ける事からわかる通り、カエシリウスは何の疑いもなく多くの犠牲を出しています。ミケルセンはこの演出を評価しているようです。

優れたキャスティングには、しっかりと定まった脚本が必要です。『ハンニバル』と『007 カジノ・ロワイヤル』の公開以来、ハリウッドは見事にミケルセンのイメージを決定付け、彼は良くも悪くも典型的なヨーロッパの悪役に恵まれました。

「2次元に存在する悪役を3次元で表現する事で、それはより面白くなる。経験から言って、それは明らかです。作家や監督が目指すのは純粋な悪であり、銃を撃つ際、大笑いをするような悪役です。彼らはまるで海賊のような笑い方をするのです」(ミケルセンは、まるでジョーカーのような嘲る笑い方をします。)

「悪役を生み出す際、自分の信じた道を変えてはなりません。きっかけさえ掴めば、良い悪役を生み出す事は簡単です。それはヒーローを描く事とさほど変わりは無いのです」

幸いなことに、カエシリウスのキャラクターは脚本の段階で既に完成されていました。なぜ幸いかと言うと、ミケルセンのキャリアが築かれたデンマークでの脚本とは異なり、変化の余地がほとんど無かったからです。

「俳優としての私達は、キャラクターにひたすら向き合う存在なのです」と彼は言います。 

「台詞を変え、細かいプロットを変更する事は、大規模なアメリカ映画よりデンマークの小さな映画の方がより容易です。アメリカ映画においては、主演でもない限りプロットに沿った演技をするのです」

マッツ・ミケルセンのキャリア

ミケルセンは、ハリウッド映画でこそ主演経験は殆どありませんが、母国デンマークの映画となると話は別です。例をあげるならば、彼が主人公ルーカスを演じた『偽りなき者』はアカデミー賞にて最優秀外国語映画賞にノミネートされ、彼自身もカンヌ国際映画祭の男優賞を受賞しました。

『偽りなき者』はただの一例に過ぎません。彼が初めて主役を演じた2001年公開『シェイク・ユア・ハート』では、ミケルセンは同性愛者カップルの片割れを演じました。ニコラス・ウィンディング・レフン監督作品『プッシャー』の続編『プッシャーⅡ』でも主役を演じ、デンマークの最も才能のある映画製作者の一人としての地位を不動のものとしました。

「私は主役を演じる事が好きなんです」そう、ミケルセンは熱を持って言います。 「主演であれば、人々に訴えられる内容も、与え、与えられる影響も多いです。更に、カメラにたくさん映る事が出来ます。助演ではこうはいきませんから」

主役を好む性格にも関わらず、ミケルセンには傲慢さがありません。それは、彼が30歳を過ぎてから俳優になるまで、紆余曲折があったからかも知れません。それ以前の彼は、体操選手であり、ダンサーでした。

「ダンサーになろうと思っていた訳では無く、それは突如訪れたのです。私は体操選手として、ショーに出演する予定でしたがいくつかの振り付けを学び、気がつくと、ショーのダンスのうち半分を私達が踊っていました。ダンサー達は、明らかにプロでは無い私達を嫌いました。そして振付師は、私にダンサーとしての職業を学びたくはないかと尋ねました」

「私は迷う事無く、「ええ、もちろん。ここには女の子が沢山いますし」と答えました。それは私にとって夢のような話でした。次第に、私はダンスの美的な面よりも演技的な面を愛している事に気付きました。それから私は、演技の世界に足を踏み入れたのです 」

ダンサーとしてのキャリアをスタートさせて間も無く、国立演劇学校に通う事を決断したミケルセンは先述のニコラス・ウィンディング・レフンと出会いました。ミケルセンは彼から多くの事を学んだそうです。 

「彼が望んでいるのは、本当の人だったのです。単純な演技を嫌い、即興を求めたのです。中には彼の意見に反対する人もいましたが、彼は気にも留めませんでした」

「私は非常に重く早口のスラングを使っていましたが、国立演劇学校では問題が生じました。しかし、レフンは私の即興性を個性だと言い気に入り、私に仕事をくれました。そして彼は、彼の理想とする俳優達と出会ったのです」

その時点から、それぞれのキャリアは指数関数的に拡大し、ハリウッドに渡ったミケルセンは、多くの俳優が自己を抑制されているという噂を聞きつけました。

「彼らはまず第1に役者であり、監督のビジョンを映画に変換する為にそこにいるのです。ビッグスターであろうと無かろうとです。それは、互いに互いのキャリアを脅かす事が無い代わりに、何も達成する事が出来ないのです。あなたがサッカーをしていて、メッシと対峙した際「神様、彼はあのメッシです。ボールを取れる筈がありません」と言うのと同じです。だったら私がやります。もちろん、その前後では恐怖がつきまといますが、最中に恐れはありません」

『ドクター・ストレンジ』の撮影ではそのような事は無かった、そう彼は明言します。

「噂にあるような事はありませんでした。撮影現場では、皆でお菓子の分けっこなんかしてましたよ」

「どの職業においても、あなたは主役になれるのです」

彼はそう明言した後、次のように付け加えます。

「都市伝説に惑わされてはいけません。あなたはスターになる事が出来ます。不安なだけなのです。不安をなくしスターになるには、人々はより不安なのだと言い聞かせる事がコツです。そして自分はより周りの人々に恵まれていると」

『ドクター・ストレンジ』は、2017年1月27日より全国公開予定。


Photo:(C)WENN / Zeta Image
Text:(C)The Independent / Zeta Image

『ドクター・ストレンジ』関連書籍

著者
ジェイソン・アーロン
出版日
2016-12-28
著者
ウィル・コロナ・ピルグリム
出版日
2017-01-25
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