「吸血鬼」ときいて、どんなイメージを抱きますか?今回は運命に胸が締めつけられる恋愛漫画から、くすっと笑えるギャグ漫画など、あらゆる吸血鬼漫画をご紹介します。新たな出会いをお楽しみください。
吸血鬼が出てくる漫画のなかでも、『デビルズライン』ほどアクションと恋愛、ファンタジーそれぞれの要素がバランスよく合わさった漫画はなかなかありません。吸血鬼として生きる者の苦しみがじわじわと伝わってきて、きっと胸が熱くなるはずです。
「彼は人の中にまぎれて ずっと私を見ていたのだ ずっと……」
(『デビルズライン』より引用)
人間の中に、吸血欲を持った「鬼」が紛れ込んでいる社会。大学院生の平つかさは、人間と鬼のハーフである刑事の安斎結貴と出会います。目の下にクマがあり、どこか不気味な印象の安斎ですが、つかさだけに見せるやさしさに、いつしか安斎とつかさは惹かれあっていきます。
しかし、人間社会から鬼を壊滅させることを企む組織・CCCの暗躍により、2人の愛が阻まれてしまいます……。安斎とつかさは障害を乗り越えて結ばれることが出来るのか?鬼とヒトが共存できる平和な社会は訪れるのか?ドキドキハラハラが止まらないダークファンタジー漫画です。
- 著者
- 花田 陵
- 出版日
- 2013-09-20
物語の中で、安斎が鬼としての本能に苦悩する様子が切なく描かれています。周りの敵や鬼である自分自身からつかさを必死に守ろうとする安斎の姿は、つかさへの一途で強い愛情が感じられます。
しかし、つかさへの愛が強まれば強まるほど、「血を吸いたい」という思いが強くなる安斎。血を見たり、つかさに対して興奮を覚えると鬼に変異してしまう安斎は、いつかつかさに危害を加えてしまうのではないかと恐れます。そのためつかさから一定の距離感をもって接しようとしますが、つかさは鬼の安斎をまったく怖がることなく、まっすぐ向き合うのです。安斎はつかさの思いに心動かされ、2人はより一層絆を深めるようになります。
多くの障害を乗り越えながら、2人が一生懸命愛を貫こうとする様子は、涙が出るほど感動するはずです。
また「鬼とヒトの共存」も、作品の中で特に重要なテーマです。鬼の壊滅をもくろむCCCは、安斎やほかの鬼の命を次々と狙います。一方物語に登場する鬼の多くは、安斎のようにヒトに危害を加えることを恐れ、必死で吸血欲をおさえながら生きています。このように人に危害を加えないように必死に自分を抑える鬼と、自分の欲のままに生きるヒトの対比がなんとも絶妙です。裏切りあり、悲しい過去もあり、怒涛の展開に目が離せません。
『デビルズライン』については<漫画『デビルズライン』の見どころを全巻ネタバレ紹介!【アニメ化】>で詳しく紹介しています。気になる方はぜひご覧ください。
「吸血鬼」というと、「怖い」「残酷」「悲しい」といったネガティブなイメージを抱く人が多いのではないでしょうか?『陽の当たらない小出くん』は、そんな吸血鬼の暗いイメージを覆すようなギャグ漫画です。年を取らずに133回も高校生活を繰り返す吸血鬼の小出が、現代の高校生活に一喜一憂しながらなじもうとする様子に、ついくすっと笑ってしまうような作品です。
吸血鬼の小出満作は、なんと永遠の16歳。吸血鬼になって年を取らなくなった小出は、16歳の高校生活を133回も繰り返しています。今までの133回の高校生活では、小出はクラスの中で地味なポジションに甘んじていました。しかし134ターン目の今年は、なぜかクラスのリア充にかまわれることが多く、いつもと違う充実した青春を送れそうな予感がするのでした……。物語は小出の134回目の高校生活が描かれています。
- 著者
- 石川ローズ
- 出版日
- 2015-08-10
作品の中で特に印象的なのが、やはり吸血鬼・小出の奇妙な「生態」です。太陽の光が苦手で、渡り廊下で干からびかけそうになることもしばしば。吸血鬼の特徴である「吸血」は10年以上していなくて、ケンタッキーチキンを週3日で食べているほどです。(ちなみに小出は、ケンタッキーを生んだカーネル・サンダースより先に生まれています)
また写真や鏡には一切姿が映らず、何人ものカメラマンを困惑させた経験もあります。人間の常識や吸血鬼の一般的なイメージから外れた小出という存在は、読めば読むほどクセになるはずです。
そんな奇妙な小出を、クラスメイトや学校は怖がるどころか、不思議なほどすんなり受け入れます。小出は最初、クラスのリア充たちに苦手意識を持ち、距離を置いていました。しかしリア充たちは日光が苦手な小出もサッカーができるよう、サンバイザーをプレゼントしたり、記念写真に写らない小出のためにみんなで絵を描いてあげたりなど、小出に歩み寄ろうとします。リア充たちの優しい言動に、思わず「150年生きてきてよかったね」と小出に声をかけてあげたくなるほどです。
他にも130年以来の吸血鬼の親友である三浦苦参(442歳)や、話がまったく面白くない吸血鬼の累桂樹(223歳)など、個性的なキャラクターが登場します。くすっと笑える吸血鬼のギャグ漫画が読みたい方には、ぜひおすすめです!
『それは常世のレクイエム』の舞台はロンドン。ひとりの少女の、早すぎるお葬式から物語は動き出します。棺に詩を捧げに進み出たのは、人気詩人のバイロン郷。
亡くなった少女・グレイスをたった一人の親友と思っていた主人公のポーリーンは、グレイスの遺品だという不吉な手紙を受けとりました。これは天国のグレイスが仇を取って欲しがっているのだと、真相解明に燃えるポーリーンはバイロン郷を訪ねます。
- 著者
- 木原 敏江
- 出版日
- 2012-11-16
美貌のフランケンシュタインに吸血鬼。バイロン郷とポーリーンが対決する怪物たちは、魔性を感じる美貌の下に悲しい物語をかくしているのでした。
クールで退廃的な詩人・バイロンがサブ主人公のような立ち位置であることから、文学ファンにもおすすめしたい作品です。
「夢見るゴシック」シリーズには上記の『それは常世のレクイエム』のほか、日本編として『星降草子』もあります。こちらは鎌倉末期の日本が舞台。日本神話をベースとした、こちらもやはり悲しく美しい恋の物語です。
「このまま死ぬ? それとも、同じになる?」
(『ハピネス』より引用)
「死にたくない」と答えた高校生の岡崎誠は、謎の少女に血を吸われた日を境に、平凡だった人生が一変します。内側に潜む吸血欲と葛藤しながら、過酷な運命のを必死で生きるダークファンタジーです。
高校1年生の岡崎誠は、クラスメイトの勇樹から毎日昼食のパンを買いに行かされても、文句も言えない弱い性格でした。心から信頼できる友達はなく、代わり映えのない平凡な毎日。そんな退屈な毎日が、ある事件を機に一気に変化するのです。
夜11時頃、借りていたDVDを返すために外出したところ、謎の女に突然襲われます。首筋の血を吸われて意識を失うものの、岡崎は奇跡的に命を取り留めました。しかし岡崎の体は確実に「異変」に蝕まれていたのです。まぶしい光が苦手、血への強烈な欲求、驚異的な身体能力――吸血鬼のようになってしまった岡崎は、内からわき起こる「欲」と闘いながら、どうにか「人間」として生き続けようとしますが……
- 著者
- 押見 修造
- 出版日
- 2015-07-09
作品の特に印象的なところは、血を吸われたことでいい意味でも岡崎が「変われた」ことです。岡崎はクラスのリーダー格であった勇樹の命令に初めて反抗し、気が付くと勇樹の顔を殴っていました。さらに勇樹に暴力をふるったチンピラを撃退したことで、岡崎や彼女の菜緒と勇樹の間にいつしか友情が生まれます。
また隣のクラスの五所とも出会います。五所はつかみどころのないミステリアスな少女ですが、岡崎の強い衝動を理解しようとし、どうしようもない運命から岡崎を救おうとします。岡崎は「変われた」ことで友達とひと時の楽しい青春を過ごしますが、岡崎の欲は少しずつ抑えられなくなり、大事な家族や友達まで過酷な運命に巻き込んでしまいます。
「自分が自分でなくなる」とてつもない恐怖、血への強い欲にむしばまれていく岡崎――『ハピネス』というポジティブな題名から想像できないくらい、人間の内側にあるダークな部分が「これでもか」というほど鮮明に描かれています。セリフはあまり多くありませんが、独特のタッチで岡崎の揺れ動く複雑な心理がうまく描かれていて、非常に読みごたえのある作品です。
『ハピネス』については<『ハピネス』の魅力を全巻ネタバレ紹介!押見修造が描く吸血鬼漫画>で詳しく紹介しています。気になる方はぜひご覧ください。
全寮制の名門・私立黒主(クロス)学園には、一般生徒が通う普通科(デイ・クラス)と、美形のエリートばかりが通う夜間部(ナイト・クラス)が存在していました。普通科の生徒たちは、美男美女の夜間部の生徒たちに夢中になりますが、実は夜間部の生徒は全員「吸血鬼」!普通科で風紀委員の黒主優姫は、風紀委員の幼なじみ錐生零(きりゅう・ぜろ)とともに、学園の秘密を守るという守護係(ガーディアン)を務めていました。
かつて優姫を救った純潔の吸血鬼で、夜間部のクラス長である玖蘭枢(くらん・かなめ)の協力もあり、学園の平和は保たれていました。しかし隠されていた「秘密」が少しずつ明らかになることで、学園の平和は少しずつ脅かされていきます――
- 著者
- 樋野 まつり
- 出版日
- 2005-07-05
優姫と零、枢という美男美女の三角関係を中心に、物語が進められていきます。かつて純血の吸血鬼に血を吸われたことで、ハンターの家系に生まれながらヴァンパイアになってしまった零。純血の吸血鬼に咬まれた人間は、「レベルE(END)」という、吸血欲を抑えきれずに人間を襲う末路をたどる運命にあります。
優姫は少しずつ吸血欲に体をむしばむ零に対して、自らの血を差し出すことで何とか零を救おうとします。零と優姫がお互いを支えあう姿に、心が打たれること間違いなしです。
また優姫の命の恩人である枢が、ミステリアスでとにかくかっこいいです。吸血鬼の美女たちに囲まれていながら、ごく普通の女子高生である優姫を特別かわいがります。それでも枢と零の間で揺れ動いている優姫を見ると、2人のイケメンから愛される優姫は贅沢すぎると思えてなりません。
そして作品の後半から、予想外のどんでん返し!隠されていた「秘密」が次々と明らかになっていきます。あまりにも意外で刺激的すぎる展開に、ファンからは賛否両論で真っ二つに割れたほどです。零や枢、そして優姫に隠された「秘密」とは?最終巻まで目が離せません。
労働階級で生まれた貧しい少女が、イケメンの伯爵に見初められ、伯爵夫人として生きることになる――一見いかにも典型的なシンデレラストーリーですが、なんと主人公の少女は、吸血鬼の血を引く半吸血鬼。胸がときめくシンデレラストーリーに、半吸血鬼の少女と伯爵が夫婦を演じるという設定が加わることで、作品の面白さを引き立てています。
舞台は19世紀のロンドン。労働階級に生まれた貧しい少女エスターは、母を亡くし、双子の兄と離れ離れになりながら、いつも笑顔で花を売り続けています。将来ずっと孤独でいるのかと不安を感じていた時、エスターの前にヴァレンタイン伯爵家当主のレオン・J・ウィンターソンが現れ、「貴女は今日から私の花嫁です」と突然プロポーズをされるのです!レオンの甘いマスクに魅せられ、流されるままヴァレンタイン伯爵夫人となったエスターは、自分が吸血鬼の父を持つ「ダンピール(半吸血鬼)」であることを知らされます。
ダンピールは、人と吸血鬼を見分ける能力を持っていて、吸血鬼ハンターをするレオンはダンピールの能力を強く欲していました。一方エスターは行方不明の兄を探すため、レオンの顔の広さが必要でした。こうしてレオンとエスターは、お互いを利用するために夫婦を演じることになります。
- 著者
- 音久無
- 出版日
- 2014-08-20
伯爵であるレオンは、少しいじわるな王子様タイプ。日本人は口にできないようなキザなセリフを何度もエスターに囁く様子は、見ていて胸がきゅんとしてしまいます。しかしレオンの溢れんばかりの愛情も、鈍感なエスターはまったく気付かず、いつも空回りしています。高貴でかっこいい伯爵が、1人の少女に振り回されている様子は、見ていて非常に微笑ましいです。
またエスターは自分が吸血鬼の血を引くと知っても悲観することなく、その能力をレオンのために役立てたいと思う健気な少女です。レオンは仕方なく自分と夫婦を演じていると思い、レオンに対する淡い想いを押し殺していました。しかしレオンの強くあたたかな愛情に少しずつ動かされ、身分の差を乗り越え、レオンへの気持ちに少しずつ素直になっていくのです。お互い思いあいながらなかなか結ばれない様子はとてももどかしいですが、2人の純粋さに全力で応援したくなります。
吸血鬼が出てくる作品は残酷で悲しい物語が主流ですが、『黒男爵は星を愛でる』は物語にシリアスな要素を含みながらも、明るくほのぼのとした雰囲気でとても読みやすくなっています。少女漫画のキュンとする展開が大好きな方には、ぜひおすすめしたい作品です。
『黒伯爵は星を愛でる』については<『黒伯爵は星を愛でる』が無料で読める!最終巻までの見所を全巻ネタバレ紹介>で詳しく紹介しています。気になる方はぜひご覧ください。
いかがでしたでしょうか?どの作品も吸血鬼の特性をいかした面白い作品です。ぜひ自分の好みに合った吸血鬼を見つけて、吸血鬼が出てくる漫画を楽しんでください。