西尾維新の人気シリーズである「物語シリーズ」。第1巻となる『化物語』を始め、発表作はいずれも人気作となっていますが、発表順がそのまま物語の時系列になっていないのがこの作品の特徴の1つ。ここでは、物語上の時系列順に本をご紹介します。
「物語シリーズ」は、西尾維新の書く人気シリーズの1つです。シリーズを通しての主人公である阿良々木暦の高校3年生の1年を描いており、彼を中心に「怪異」と関わりを持った少女達が活躍します。アニメ化やアニメ映画化を始め、ドラマCDなど多方面にメディアミックスされている人気作で、ラブコメ、アクション、シリアス、ギャグ、パロディなどがふんだんに盛り込まれた不思議な物語になっています。
夜こっそりとエロ本を買いに出かけた高校2年生の男性生徒、阿良々木暦(あららぎこよみ)は、その途中で、四肢を失い瀕死の状態の美少女と出会いました。彼女は何と吸血鬼だと言います。
キスショットという名前の吸血鬼の命を救うため、暦は自らの血をキスショットに与えました。そのおかげでキスショットは命を取り留めることができましたが、その代わりに、なんと暦は吸血鬼になってしまいます。
吸血鬼の身体は、昼間に外出することもままなりません。暦は人間の身体に戻るため、キスショットに協力することになります。それは、キスショットを襲ったヴァンパイアハンターと戦い、彼女の四肢を取り戻すことを意味していました。
- 著者
- 西尾 維新
- 出版日
- 2008-05-08
「たったひとつのあの地獄がいつから始まりいつ終わったのかは、僕にとってははっきりしている。三月二十六日から四月七日まで。春休み――である」
(『傷物語』より引用)
『傷物語』は「物語」シリーズ通しての主人公、阿良々木暦が高校3年生になる直前の春休みの物語です。この時、暦は吸血鬼になるきっかけであり原因のキスショットと出会いました。
この物語では、暦は人間に戻るべく、キスショットを襲った3人のヴァンパイアハンター、ドルマツルギー、エピソード、ギロチンカッターと戦うことになります。彼らが奪ったキスショットの四肢を取り返し彼女を完全体に戻すことで、暦が人間に戻るためでした。
しかし本当は、吸血鬼が人間に戻る唯一の方法は、自分の主人である吸血鬼を殺すことでした。つまり、暦はキスショットを殺さなければ人間には戻れなかったのです。その事実を知った暦は葛藤し、最終的にはキスショットを生かす道を選びますが、それは決してそれぞれにとって幸せな方法ではありませんでした。
下等な生物となり暦の血がなければ生きられない体になるキスショットと、キスショットに血を与え続ける限り人間には戻れない暦と、両者ともに生きてはいるもののそれは本人達が本当に望んでいたものではありません。バッドエンドと取るかハッピーエンドと取るかは人それぞれかもしれませんが、「生きる」ことが最善なのかどうか、考えずにはいられない作品です。
高校3年生の羽川翼は、クラス委員長で優等生。真面目で誰にでも優しい性格を象徴するような三つ編みとパッツン前髪と眼鏡の彼女は、ある日、道端で死んでいる猫を見つけます。しかもその猫には尻尾がありませんでした。
心優しい彼女は、その猫を埋葬してあげます。しかしその猫は「障り猫」という猫の怪異であり、猫に触れた翼はとり憑かれ、その姿はまるで猫の化け物のようになってしまいます。暦は何とか翼を止めようとしますが、同時に彼女の心の闇を知ることになり……。
- 著者
- 西尾 維新
- 出版日
- 2010-07-29
「苦い思い出であり、渋い思い出であり、しかしどこか甘酸っぱい思い出なのだけれど(中略)あの黄金色に輝く九日間のことを思い出そう」
(『猫物語』(黒)より引用)
羽川翼に秘められた闇が明らかになる『猫物語』(黒)は、高校3年生になった阿良々木暦のゴールデンウィーク中の話です。
一見、非の打ちどころのない翼が抱えている闇を知った暦は、自分が彼女に対して抱いている感情に戸惑いながらも彼女と向きあおうとします。しかし、とり憑かれている翼はそんな暦を拒絶し、さらには襲いかかってきます。それでも翼の前に立つ暦の姿を見ていると、人を救うということがどういうことなのか、思わず自問自答したくなってしまうかもしれません。
暦と翼の交流を描く一方で、暦の妹である月火(つきひ)も登場します。暦と月火の掛け合いは物語の主軸とは全く関係ないのですが、そのクスリと笑えるパートがあることで緩急が付き、本筋のシリアスなパートも一気に読み終えてしまうこと間違いなしです。
阿良々木暦は、ある日、病弱でいつも1人で本を読んでいる暦のクラスメイト戦場ヶ原ひたぎが、階段から落ちそうになったところに出くわします。咄嗟に受け止めようとした暦でしたが、その時、ひたぎにはまるで「重さ」というものがないことに気が付きました。
彼女の身に起きている怪異を解決するべく暦はひたぎに協力を申し出ますが、ひたぎは暴力的な方法でそれを拒絶します。ひたぎは、暦がイメージしていたキャラクターとは違い、毒舌でツンデレな少女だったのです……。
- 著者
- 西尾 維新
- 出版日
- 2006-11-01
「僕にとって地獄のようだった春休みの冗談が終了し、三年生になって、そして僕にとって悪夢のようだったゴールデンウィークの絵空事が明けたばかりの、五月八日のことだった」
(『化物語』より引用)
暦が高校3年生になり、ゴールデンウィークも明けた5月に始まる物語です。暦の身の回りには、すっかり怪異が日常として馴染んでしまっているのが見て取れます。
ひたぎには、「重さ」がありません。その原因は、ある蟹に出会ったためでしたが、彼女は体重のような物理的な重さだけではなく、彼女自身が抱える過去と母親との繋がりをも捨てていたのです。
過去、ひたぎの母親は、大病を患った娘を救うために宗教へ傾倒していきます。しかしその結果、ひたぎと母親の間には決定的な溝が生まれてしまうのです。
本来は娘のためにのめり込んだ宗教が、最後は娘との決別に繋がってしまう結果に胸が締め付けられるような切なさを覚えます。物語シリーズの魅力の1つである言葉遊びや掛け合いのおかげで楽しく読める作品ですが、根本にあるテーマはとても「重い」1冊です。
上巻には戦場ヶ原ひたぎがメインヒロインの「ひたぎクラブ」、八九寺真宵が登場する「まよいマイマイ」、神原駿河が登場する「するがモンキー」の3話を収録。
下巻には千石撫子が登場する「なでこスネイク」、羽川翼の問題が語られる「つばさキャット」の2話を収録しています。
漫画版『化物語』について紹介したこちらの記事もおすすめです。ぜひご覧ください。
漫画『化物語』はコミカライズして大正解だ…!6巻までネタバレ紹介
『化物語』(バケモノガタリ)は、西尾維新によるファンタジー小説です。テレビアニメ化されたのち、『化物語 ポータブル』としてゲーム化もされ、作品に魅了される人が続出しています。 コミカライズされたのは2018年から。アニメとは一味違った展開が面白いと話題です。今回は、そんな漫画『化物語』の魅力をご紹介します。
阿良々木暦は、何故か自分が監禁されていることに気が付きます。どうしてこんなことになったのか……記憶を手繰り寄せ、自分の身に何が起きたのか、暦は思い出していきます。
高校3年生である暦は受験生。前作で恋人となった戦場ヶ原ひたぎと同じ大学を目指し、ひたぎともう1人、優等生で成績優秀な羽川翼に勉強を教わっていました。ひたぎと翼は毎日交代で暦の先生役をしていたのですが、ある日、その日の担当だった翼が用事があるとのことで、勉強会はお休みになりました。
暦は暇になったので外出しますが、途中で妹の火憐(かれん)と会います。いろいろな人を助ける兄の暦に憧れていた火憐は、正義の味方になるべく動いていたのですが……。
- 著者
- 西尾 維新
- 出版日
- 2008-09-02
『偽物語』は、高校3年生の暦の夏休みの話です。翼やひたぎから勉強を教わるなど、暦も普通の受験生らしいことをして過ごしています。今回の物語では、暦の妹、火憐と月火がメインキャラとして活躍します。ふたりは、「火憐と月火は特別である。もしも彼女達が僕の妹でもなければきっと一生かかわることがなかった」と暦が思うほどの人物です。
彼女たちはいつも人助けをしている兄の暦に憧れていて、「栂の木二中のファイヤーシスターズ」という異名まで持っています。2人は、千石撫子(せんごくなでしこ)という少女を苦しめているおまじないの元凶を突き止めますが、返り討ちにあい、怪異にとり憑かれてしまいました。
タイトルにもあるように、この作品では「偽物」が重要なキーワードになっています。おまじないの元凶でありひたぎとも因縁のある貝木泥舟は自分のことを「偽物」と呼び、妹達は正義の味方に憧れてはいますが、本当の正義の味方ではありません。暦は正義の奉仕活動をする妹達に偽物と言い放ちますが、妹達は懲りずに活動を続けます。偽物も続ければいつかは本物になるかもしれないと思えるエンディングは、キャラクターたちをますます好きにさせてくれます。
高校3年生の阿良々木暦は、夏休みの最終日になって宿題が全く終わっていないことに気が付きます。このピンチをどう切り抜けようかと考えた暦は、忍野忍(おしのしのぶ)の力を使って過去にタイムトリップします。忍はかつてキスショットという名前を持った強い吸血鬼でした。今はその力と名前を失い幼女の姿をしていますが、暦の血を吸うことでその力を蘇らせることができるのです。
そんな忍の力で過去に飛んだ暦ですが、着いた先は何と11年前の5月13日。この日が、元いた世界で幽霊になっている八九寺真宵(はちくじまよい)の命日だと気が付いた暦は、未来が変わってしまうことを理解しながらも、真宵を救い出します。そうして元の世界へ戻った2人ですが、2人の目の前に広がっていたのは、誰もいない滅んだ世界でした。
- 著者
- 西尾 維新
- 出版日
- 2010-12-25
『傾物語』(かぶきものがたり)は、暦の高校3年生の夏休み最終日である8月20日から始まります。夏休み最終日に宿題が終わっていない……というよくある出来事から、タイムトリップ、滅びた世界と、世界の救済、とどんどん壮大になっていくストーリーが本作の魅力です。
歴史の変わった世界で暦と忍が出会うのは、暦が死んだことで力を取り戻したキスショットへと戻った忍でした。暦を失ったことに絶望したキスショットは暴走し、世界を滅ぼしてしまったのでした。そんなキスショットを倒す決意をした暦と忍。キスショットにしてみれば、2人は自分が失ってしまったそのものです。2人とキスショットが向き合うシーンはとても切なく、心が揺り動かされます。
今回のヒロインはもちろん忍ですが、今回はこの忍がとても「ヒロイン」をしています。忍好きの人はもちろん、滅びた世界で生きる少年少女というSF的設定が好きな人も楽しめる作品です。
二学期初日。学校をサボった高校3年生の阿良々木暦は、忍と一緒に過ごしていましたが、八九寺真宵(はちくじまよい)にリュックサックを返すためにいったん家へと帰ることにします。しかし、真宵にリュックを渡そうとしたその時、謎の「くらやみ」が暦達を襲ってきました。
危険を察知した暦は咄嗟に真宵を連れて逃げ出し、途中、陰陽師の式神である斧乃木余接(おののきよつぎ)の「例外のほうが多い規則(アンリミテッド・ルールブック)」という力で助けられ、何とか逃げ延びます。そうして逃げ延びた先で忍が話し始めたのは、暦達を襲った「くらやみ」の正体、そして自分の過去でした。
- 著者
- 西尾 維新
- 出版日
- 2011-09-29
『傾物語』で過去にタイムトリップしていた暦と忍ですが、本作『鬼物語』はその直後、二学期が始まったばかりの時から始まります。とはいえ、本編のほとんどは忍の回想――400年前の日本が舞台です。「忍が、今の忍であること。違う忍ではない、今の忍であること」とあるように、今の忍となるきっかけが語られていきます。
400年前、忍――この時はまだ伝説の怪異であり吸血鬼のキスショット・アセロラオリオン・ハートアンダーブレードだった彼女は、ある村で偶然が重なり、「神様」として扱われるようになりました。本人もそのことを否定せず、むしろ調子に乗って神様扱いされたままになっていたのですが、そこで妖魔退治を生業としていた武士と出会い、彼を眷属とします。忍が名前を憶えていないために彼のことは「怪異殺し」として呼ばれています。
しかしある日、キスショット達のいた村の周辺では次々に人が消え、彼女と「怪異殺し」以外の人は誰もいなくなってしまいました。そうなった原因こそ、「くらやみ」だったのです。
キスショット時代の忍と、最初の眷属である「怪異殺し」は交流を重ねるものの、「くらやみ」の事件のせいで「神」と思っていたキスショットが「吸血鬼」であると知った挙句、仲間や家臣を殺されたのはキスショットのせいだと思い込み自殺をしてしまいます。このことがキスショットに傷を残し、今の物語へと繋がっていくことになります。
全ての物語の原点とも言えるエピソードですが、物語の結末はここではありません。「くらやみ」の狙いは、八九寺真宵の存在でした。思いがけない結末へと繋がっていく流れは秀逸で、また容赦がないともいえる終わり方はまさに感動物語です。物語シリーズの中でも感動ものとしては1、2を争うものと言えるでしょう。
夏休みも終わり、二学期の初日。朝、高校3年生の羽川翼はいつも通りに目を覚ましますが、そこは部屋ではなく、廊下。彼女は部屋を与えられておらず、いつも廊下で寝ているのです。
リビングに行くと両親が朝食を食べていますが、翼の分はありません。翼の家では食事は自分の分を自分で作るということになっているのですが、両親の食べている朝食は同じメニュー。それが意味するところはつまり、翼以外の食事を両親のどちらかが作っているということでした。
しかしそうと気が付いているはずの翼は、その事実から目を逸らし、事実を「忘却」します。そうして彼女は「優等生」の羽川翼へとなっていくのです……。
- 著者
- 西尾 維新
- 出版日
- 2010-10-27
『猫物語』(白)の舞台は、阿良々木暦の高校3年生の夏休み明けの二学期のはじめです。語り手が暦以外のキャラクター、羽川翼になったシリーズ初の作品で、シリーズ全体を通しても新しい風が吹きこまれた転換作となりました。
翼は、作中で「私は幾度か苗字が変わっている。だから名前にアイデンティティを求められないのである」と語られるように、その存在がとてもあやふやであることが察せられます。
そんな翼は火事で家を失い、仮宿であるホテルへも両親と過ごしたくないという理由から行かず、学習塾跡である廃ビルで寝泊まりすることになります。とはいえ、その生活は彼女を探しに来てくれた戦場ヶ原ひたぎのおかげですぐに終わり、それからはひたぎの家で過ごすことになりました。
語り手が翼自身ということもあり、それまでのシリーズと比べると雑談話の分量が減っているため、翼の悲惨なネグレクト体験は読んでいて苦しくなる時もあるかもしれません。しかし、ハッピーエンドと言ってもいい流れになりますので、安心して読み進めてください!最後にはホッと胸を撫で下ろすことができるでしょう。
阿良々木暦は、夏休み明け怪異の専門家である臥煙伊豆湖(がえんいずこ)に、高校の後輩であり神原駿河を呼び出すように言われます。言われた通り、駿河を学習塾跡の廃ビルに呼び出しますが、暦達の前に現れたのは、謎の鎧武者でした。
鎧武者に襲われた暦達は、式神である斧乃木余接(おののきよつぎ)の助けもあって何とかその場を切り抜けますが、後にその鎧武者は、忍野忍の前の姿――伝説の怪異で吸血鬼であったキスショットの、400年前の1人目の眷属だということがわかり……。
- 著者
- 西尾 維新
- 出版日
- 2014-01-29
『終物語』(中)は、阿良々木暦の高校3年生の夏休み明け直後の物語です。吸血鬼の身体を自ら太陽の下にさらして死んだと思われていたキスショットの第1の眷属「怪異殺し」が、「根性で」蘇り、忍を求めて姿を現します。
とはいえ、今はキスショットですらなく、「怪異殺し」に対して昔のような気持ちを持っていない忍は、彼と会うことを拒否します。そんな忍に「怪異殺し」と会うように説得したのは駿河です。駿河の言葉に折れた忍が、再会した「怪異殺し」のことを「生死郎(せいしろう)」と呼ぶシーンは、感動必至です。
物語シリーズを通して言えることではありますが、本作は特に、シリアスさとギャグ要素がうまく絡み合っています。本筋はかなりシリアスなのに、うまい具合に織り交ぜられたギャク要素が、泣きそうになる気持ちを笑いに変えてくれるでしょう。
阿良々木暦はある日、後輩の神原駿河から、忍野扇(おしのおうぎ)という転校生を紹介されます。転校をくり返しているという彼女は、新しい学校に転校する度にその学校の図面を描くことにしていました。そして今回も図面を描いたのですが、一箇所、おかしな点があると言うのです。
3階の視聴覚室。図面と目測が違うことから隠し部屋のようなものがあるのではないかという推測通り、2人は隠し部屋を見つけます。中に入ってみると、そこは時計が止まり、窓もドアを開かない時の止まった部屋でした。しかもそこにあったのは、「一年三組 阿良々木暦」と書いてある教科書で……。
- 著者
- 西尾 維新
- 出版日
- 2013-10-22
『終物語』(上)は、阿良々木暦の高校3年の秋、10月下旬の頃の物語です。
2人の入り込んだ部屋は、2年前、暦が1年生だった時の教室でした。かつての暦は、自ら友達を作らないと決めており、孤立した存在でした。そんな暦を作り上げた原因が、この教室にあったのです。
1年時の学級委員・老倉育という少女は、何かと暦を目の敵にしてくる女子生徒でした。しかしある日、試験で不正が行われたのではないかという疑惑が持ち上がった際、彼女は多数決で犯人にされてしまいます。「多数決で決める」と言ったのは老倉自身だったのですが、結果、「間違ったことでも真実にしてしまえる、唯一の方法」で、「正しいこと」が「正義」なのではなく、「多数」が「正義」となってしまったのです。
ここで描かれているのは善悪論ではありますが、それは押し付けがましいものではなく、自然と考えるように仕向けられています。多数決という身近で、普段からよく使う選定方法が恐ろしくなると同時に、自分が今まで行ってきたことにすら疑いを持ってしまいそうになる、どこか恐ろしさも含んだ作品です。
阿良々木暦の幼馴染である千石撫子(せんごくなでこ)は、幼い頃に阿良々木家に出入りしていたものの、暦が中学に上がると次第に疎遠になってしまっていました。しかし撫子は密かに暦のことを想っており、暦が戦場ヶ原ひたぎと付き合っていることを知り、気持ちが抑えられなくなります。
ある日、撫子は色々な所に「白い蛇」を見るようになります。それは、下駄箱、鞄、筆箱、体操着袋などあらゆるところに現れるのですが、他の人には見えていないようでした。撫子はかつて、「蛇切縄(じゃぎりなわ)」という呪いをかけられたことがあったのですが、その呪いを解くために蛇を殺していました。
「白い蛇」――クチナワは、蛇を殺した罪を償うように言い、撫子は言われるまま、クチナワのご神体を探すことになるのですが……。
- 著者
- 西尾 維新
- 出版日
- 2011-06-29
高校3年生の阿良々木暦の秋、10月から11月の頃の物語です。語り手が暦ではなく千石撫子(せんごくなでこ)になっており、文体も地の文が敬語になっていたりと、これまでのシリーズとは少し毛色が違う雰囲気になっています。
本作はこのまま『恋物語』へと続く形となっているので、読む際はぜひ『恋物語』も手元へ置いておくことをオススメします。
戦場ヶ原ひたぎは高校3年生の1月1月、ある決断をします。それは、自分と阿良々木暦、忍野忍が、高校を卒業する日、神様となってしまった千石撫子(せんごくなでこ)に殺されるのを阻止するため、貝木泥舟(かいき でいしゅう)に撫子を騙して欲しいと依頼をすることでした。
泥舟はかつてひたぎを騙した詐欺師です。呼吸をすることと同じように自然と嘘を吐く男ですが、ひたぎには彼にすがるしか方法が残されていなかったのです。ひたぎの依頼を引き受けた泥舟ですが、相手は今や神様となった撫子。これまでにない神様相手の詐欺をすることになった泥舟は、さっそく動き始めるのですが……。
- 著者
- 西尾 維新
- 出版日
- 2011-12-21
『恋物語』の語り手は、本作の主人公である貝木泥船で、時系列的には阿良々木暦の高校3年の冬、年が明けたばかりの新年から始まります。
泥舟は詐欺師ですが、本作を読むとまるで誰が嘘を吐いているのかわからなくなってきます。泥舟はかつてひたぎを騙し、さらには中学生を相手に「おまじない」を流行らせて食い物にするくらいの悪党ではありますが、単身、蛇神になった撫子に向かっていく様には、思わず感情移入をしてしまうでしょう。
ハッピーエンドなのかバッドエンドなのか迷うことも多い物語シリーズですが、本作もその1つと言えるかもしれません。
高校3年生の阿良々木暦は、ある日、妹の月火と一緒にお風呂に入っていた際、自分の姿が鏡に映っていないことに気が付きます。一体どういうことかと思った暦は、自分の影の中に住んでいる吸血鬼・忍野忍に相談すると、忍は吸血鬼もどきだった暦の身体が、本当に吸血鬼化しているのだろうと言うのです。
困った暦はそのことを相談するため、怪異の専門家である陰陽師の女性、影縫余弦(かげぬいよづる)と、その式神である斧乃木余接(おののきよつぎ)と連絡を取ります。吸血鬼について相談する暦でしたが、元に戻す方法は見つからず、出来ることはただ、二度と吸血鬼の力を使わないということだけでした。
しかし、もう吸血鬼の力は使わないと決めた矢先、妹の月火達が手折正弦(ておりただつる)に誘拐されてしまい……。
- 著者
- 西尾 維新
- 出版日
- 2012-09-27
『憑物語』は、高校3年生の阿良々木暦が受験を控えた2月13日から始まります。
ギャクパートの比重も大きい物語シリーズですが、本作ではどちらかというとシリアスパートが多め。とはいえ、相変わらず軽妙な掛け合いは最初から飛ばし気味に書かれているので、掛け合いパートを楽しみにしている人も満足できるでしょう。
また、暦と妹の月火が何故か一緒にお風呂に入っているシーンは、暦が鏡に映らないことに気が付くシーンでもあるので重要といえば重要なシーンですが、それ以上に妹キャラが好きな人には嬉しいサービスシーンかもしれません。
特に式神である余接の活躍が目を引くので、彼女の活躍を読みたい方にオススメです。発刊順で言うと、終焉三部作の第一弾ということもあり、だんだんと「化物」へと変わっていく暦の様子は、長いシリーズの終焉を予感させる、まさに終わりの始まりとなる作品です。
阿良々木暦は、高校3年生になったばかりの4月、委員長の羽川翼と共に学校の怪談に付いて調べていましたが、元々暦達の通う学校は新しく、大した怪談話は出てきません。しかし、ひょんなことから翼は、2年前はただの石だったものが今は祠で祀られている、という謎を見つけてきます。
暦と翼はその謎について調べることになりますが……。
- 著者
- 西尾 維新
- 出版日
『暦物語』は、阿良々木暦の高校3年生の1年間を振り返る短編集で、暦を主人公にした短編が12話掲載されています。一見、総集編にも思えますがそうではなく、これまでの物語の中で描かれていなかった部分が描かれています。
12話というところからも分かるように、暦が高校3年になった四月から卒業する年の三月までを舞台にした物語で、それぞれこらまでのシリーズに登場したヒロイン達が登場します。中には前回の登場からかなり時間の経っているキャラクターもいるので、ファンの方には嬉しいですよね。
また、暦の1年を振り返るという体裁のため、読者も一緒に長くなってきたシリーズを復習する感覚で読むことができるのも嬉しいポイントです。物語シリーズのファンとしては、長い物語を何冊も読むことは嬉しいですが、長くなればなるほど、どんな話だったけ? と思ってしまうのも仕方がないことですよね。
1話が1話が短いため読みやすく、改めて物語シリーズの魅力を見直せることはもちろん、あるいは最初の1冊として読んでも楽しめるかもしれません。
受験生ということだけは他の人間と変わらない阿良々木暦でしたが、彼は受験当日、臥煙伊豆湖(がえんいずこ)によって殺されてしまいました。殺された暦が目覚めた時、彼の前にいたのは、既に成仏したはずの八九寺真宵(はちくじまよい)でした。
暦達がいた場所は、犯した罪の重さによって送られる場所が変わる八大地獄の中でも、最も重い罪を犯した者が送られる阿鼻地獄。真宵はそこで、親よりも先に死んだ子供に与えられる石積みの罰を受けていたのです。
真宵と再会した暦は、自分の死が伊豆湖の作戦のうちであり、自分はまた生き返ることができると知り地獄を案内されることになりますが……。
- 著者
- 西尾 維新
- 出版日
- 2014-04-01
『終物語』(下)は、阿良々木暦が高校3年生の三月下旬、つまり受験真っ最中から始まる物語です。しかしここで暦が巻き込まれるのは受験地獄ではなく、阿鼻地獄でした。
地獄で生前の行い、忍になる前のキスショットの他、かつての羽川や戦場ヶ原、千石などとのことを再現されていく様子は、これまでの長いシリーズを読んでいる人にとっては読み応えたっぷりです。個性的でありながら映像の思い浮かぶ描写も、思う存分楽しむことができます。
高校を卒業した阿良々木暦は、ある日、鏡の中の自分に違和感を覚えます。よく見ると、鏡の中の自分が動いていないのです。気になった暦が手を伸ばしてみると、何と暦は鏡に飲みこまれてしまいました。
それから、暦の周りではおかしなことばかり起こります。妹の火憐は暦より身長が高いはずなのに、いつの間にか暦より小さくなっているし、小学校5年生の姿で死んで永遠にその姿のままであるはずの八九寺真宵は何故か21歳の女性に成長しています。
そこは、全てが「反転」した裏の世界だったのです。
- 著者
- 西尾 維新
- 出版日
- 2014-09-18
『続・終物語』での阿良々木暦は既に高校を卒業しています。物語は何故か職員室で土下座する暦のエピソードから始まりますが、これは暦が卒業式をサボったことが原因のようです。そして、卒業式の翌日。いつもなら妹達に叩き起こされる暦が、その日は平和に目を覚ますのです。
暦は、顔を洗っている時、鏡に映った自分の姿に違和感を覚えたことで、鏡の世界へと迷いこんでしまいますが、ここで思い出したいのは、前のシリーズで本物の吸血鬼になりかけていた暦のことです。吸血鬼になると、鏡には映らなくなります。つまりこの時の暦は、吸血鬼化は止まっていたということになりますね。
あらゆるところに散りばめられた伏線がいきなり回収されるのは、物語シリーズの楽しみでもあります。長いシリーズなので、読み手としても忘れている伏線はありますが、ふとした拍子に回収されるとつい前のシリーズを読み返したくなります。
本編は既に終わっており、本作については「おまけ」的な意味合いのある物語ですが、そのぶん、これまでのキャラクター達が総登場していることもあり、ファンとしては読み逃したくない1冊です。
阿良々木暦の後輩である神原駿河(かんばるするが)は、母から譲り受けていた猿の手のミイラのようなものを持っていました。「レイニー・デヴィル」と呼ばれるそれは、3つまで願い事を叶えてくれるといいます。しかしそれは、3つの願い事を叶えてもらうと同時に身体を乗っ取られてしまうという怪異だったのです。
2つまで願い事を叶えてもらった駿河でしたが、暦達の助けもあって身体を乗っ取られることはなかったものの、左手が毛むくじゃらの怪力な手となってしまいました。それから時は経ち、3年生へと進級した駿河は、ある日、悩み事を解決してくれるという「悪魔様」の噂を聞くのですが……。
- 著者
- ["西尾 維新", "VOFAN"]
- 出版日
『花物語』では、阿良々木暦達は既に高校を卒業しており、2年生だった後輩の駿河が3年生へと進級しています。語り手は、駿河になっているため、駿河の気持ちや心情、人間関係が前面に押し出されており、これまでの思わず笑ってしまうギャグパートは少なめで、全体的にシリアスパートが多めになっています。
発刊順だとセカンドシーズンの第3弾目ですが、物語シリーズの世界の中では最も未来を描いた作品になっています。そのため、後のシリーズに登場するキャラクターの未来がわかってしまうという側面もありますが、それ以上に駿河の物語を楽しむことができるので、駿河が好きな人には一番楽しめる作品かもしれません。
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西尾維新のおすすめ作品ランキングベスト10!人気シリーズや隠れた名作まで
「物語シリーズ」を筆頭に数々のヒット作を世に送り出してきた西尾維新といえば、独特の言い回しで真理を導く言葉遊びが特徴でしょう。しかし彼の魅力はそれだけではありません。怪異ものからミステリー、ファンタジーまで多彩なジャンルにまたがる作品のなかから、とくにおすすめの10作をランキングでご紹介します。
いかがでしたか? 発表順に読むのはもちろん楽しいですが、物語上の時系列で読むと、また違う発見や楽しみがあるかもしれません。「物語」シリーズを読んだことのある方もない方も、ぜひ自分だけの楽しい読み方を見つけてみてくださいね。