人の数だけ人の生き方があります。現実は小説より奇なりといいますが、実体験を描いたコミックエッセイだからこそ、面白さや重みを感じることも多いでしょう。 この記事では、フィクションにはない魅力が溢れるおすすめのコミックエッセイ漫画をご紹介していきます。
「カルト村」で生まれ、19歳になるまでそこで生活をしていたという過去を持つという著者。料理好きの夫ふさおと結婚する前には、「カルト村」出身であることを告白するために相当の覚悟が必要でした。しかし著者の予想に反して「カルト村」のことをおもしろがるふさおと結婚し、彼の助言もあって自身の体験をありのままに漫画にすることにしたのでした。
- 著者
- 高田 かや
- 出版日
- 2016-02-12
「カルト村」と表現されていますが、作者は作中で、いわゆる教祖がいたり怪しい礼拝があったりするものではなく、「農業を基盤としたコミューン(生活共同体)」であったといいます。拉致や監禁、マインドコントロールなどもなかったという作者に対して、夫のふさおが「すでにマインドコントロールされていて気付いてないだけかもね・・・」という場面が印象的です。現代の日本にこんな場所があるんだとつい思ってしまうような暮らしが、悲劇的にも特別コミカルにもならずに淡々と描かれています。そのため、面白おかしく漫画を楽しみたいという方には少し不向きかもしれませんが、こんな世界もあるのだと知ることができる1冊です。
本作の作者である山本さほは、小学校4年生の時に岩手から横浜へ引っ越してきました。クラスにはすぐ馴染んだものの、唯一怖いと感じている子、それが岡崎さんでした。できれば仲良くなりたくないと思っていたさほは、ひょんなことから岡崎さんの家へ遊びに行くことになります。
岡崎さんの家は散らかり放題で、父親はいつもパンツ一丁、妹はヒステリックでいつも何かに怒っており、母は常時ワインを飲んでいました。大人になってから思い返せば、岡崎さんが育児放棄されていたのだとわかりましたが、まだ子供だったさほにとっては、何をしても怒られない岡崎さんの家は「自由」だと思っていたのでした。
- 著者
- 山本 さほ
- 出版日
- 2015-05-20
親友が育児放棄されているという部分から、物語も暗めなのかと思いがちですが、いざ読み進めてみると笑える箇所がいくつもあり、同時に心温まるエピソードもたくさんある作品です。作者の実体験に基づいているからこそ、世代が違う人が読んでも90年代の時代をリアルに感じることができます。子供達が子供の世界で生きる姿を見たら、思わず自分の子供時代を思い返さずにはいられないでしょう。
同時に、時折ドキッとさせられるやり取りもあります。たとえば、さほと出会い嬉しいという気持ちを、岡崎さんは「私、山本さんと出会えて幸せなの。私きっと、山本さんの人生の脇役として産まれてきたんだと思う」と伝えます。しかしさほは、誰もが主人公であると思い生きていると考えていたために岡崎さんの言っている意味がわからなくて……。
笑える面白い漫画なのに、時々恐怖をはらんでいる……。この漫画の中毒性はこの辺りに起因しているのかもしれません。
『岡崎に捧ぐ』は、以下の記事でも詳しく紹介しています。
『岡崎に捧ぐ』 よっしゃ!頑張るぞ!じゃなくてもいい【山中志歩】
西さんに何か写真を送ってもらったら、でかいワイングラスの写真が届いた。 おもしろい人だなぁと思った。
酒呑みなOLワカコの日々を描いた『ワカコ酒』で有名な作者の新久千映(しんきゅうちえ)は、大のお酒好き。ある日も、飲んで帰った翌日にカメラを見ると、記憶にない謎の自撮り動画が残されていることも……。そんな酒飲みな日々を過ごしています。
大勢でワイワイと飲むのも良いですが、1人でしっぽりと飲むのも良いという作者が、1人で入るお店の探し方やメニューの選びのこだわり、二日酔い対策など、1人飲みの楽しみ方を紹介してくれるエッセイ漫画が楽しめますよ。
- 著者
- 新久 千映
- 出版日
- 2016-05-19
女性の1人呑みはなかなかハードルが高い時もありますが、人といるとつい我慢してしまうことも1人だとマイペースに楽しむことができます。そんな1人呑みに憧れている女性にとってはとても役に立つ、実践的な内容になっている1冊です。
とはいえ、作者も百戦錬磨で躊躇なくお店に飛びこめるというわけではなく、「モロに立ち止まるとお店の人に気づかれるため、通りすがりにさりげなくしかチェックできない」という面もあります。地道に観察して満足いくまで情報が集まった時、やっとお店に飛びこむのです。
百戦錬磨のようで親しみを感じる作者の経験に基づいているからこそ、お店やお酒の選び方、振る舞い方までいろいろと役立つ一方、笑いながらおもしろく読むことができるのもこの作品の魅力です。1人呑みに憧れている女性におすすめです。
28歳になり恋愛も性体験もないまま、作者は一念発起してレズビアン風俗へとやって来ます。どうしてそういうことになったのか……。作者はベッドの上でお姉さんと対峙しながら、これまでのことを思い返します。
高校を卒業した後、大学に進学するものの半年で退学してしまい、うつ病と摂食障害を患ってしまった作者。学校も職場を持たない状況に強烈な不安を感じてアルバイトを始めるものの、だんだんと心と体のバランスを崩していき……。
- 著者
- 永田カビ
- 出版日
- 2016-06-17
タイトルに驚く人も多いかと思いますが、内容は風俗に行った体験をレポするというよりも、どうしてレズ風俗に行くことになったのか、それまでの理由や経緯を描いた作品です。常に生きづらさを感じながら生きてきた作者が、どうして「さびしすぎ」ることになってしまったのか、読みながら共感したり心が痛くなったりする方もいるかもしれません。
うつ病を患った作者の切実な思いが描かれていますが、闘病記というわけではありません。うつ病と摂食障害を抱える作者の内面を描いているので、内容はそれなりに重くなっています。作者がこれまでの体験を赤裸々に語っていくという形で描かれているので、気軽に読むというよりも、読もうと構えて読んだほうがいいでしょう。
一方で、作者の気持ちがわからないと思う方もいるかもしれません。しかしわからない分、こんな人もいるんだと考えさせらることもあります。読み進めているうちに自然と自分を見つめ直したくなるコミックエッセイです。
SNSが流行し、誰でも自分の事を発信できるようになった世の中。自身の生活をアップする人はことのほか多く、インテリアや家の中と思われる様子を比較的簡単に見ることができます。しかし、その人がどのような生活を送っているのか、本当の事はわからないもの。
『ひとりぐらしもプロの域』は、大人気ブログ『半径3メートルのカオス』の1人暮らしネタを抜粋し、描きおろしを加えた、1人暮らし生態本です。カマタミワは1人暮らし18年目という大ベテラン。その過程で培われた、1人暮らしスキルやあるあるネタが余すことなく記載されています。
- 著者
- カマタミワ
- 出版日
- 2016-02-19
1人暮らしは、誰に気兼ねすることなく、自分の生活を組み立て、満喫することはできるということ。下着は、風呂上がりに干したものを収穫してはき、お金が無いので髪はゴミ袋でセルフカット。隣でいつの間にか一緒にアニメを見ているゴキブリとの格闘の様子は、ゴキブリの頭の良さに戦慄しつつも、抱腹絶倒できます。
爆笑パートはもちろんのこと、1人暮らしのためになる知恵も満載されているところが本作の特徴。不足している栄養の補い方や、老後不安の解消の方法なども描かれています。特に1人暮らしならではと言えるのが、インフルエンザに罹ったとき。笑いに昇華されてはいますが、備えなければと思わせてくれるエピソードです。
意識して面白くしている雰囲気はなく、実際にこう暮らしている、という様子が伝わってくる本作。掃除をしたり料理をしたりする中で、手を抜きすぎることはありません。1人の暮らしを満喫するカマタミワに、勇気と知恵を貰える、そんな1冊です。
2009年よりブログで育児漫画をはじめ、書籍化されたのが『たまご絵日記』シリーズです。作者のナナイロペリカンは、1982年9月生まれの女性で、2009年に長女のタマ子を、2013年に次女のキミ子を出産しています。
家族は2人の姉妹と旦那様の4人。『たまご絵日記 新米かあちゃん奮闘記』から、『たまご絵日記2 ~かあちゃん2年目のリアル~』、『たまご絵日記2 ~かあちゃん2年目のリアル~』と、子どもの成長はもちろん、ナナイロペリカンの母親としての成長を追っていくことができます。
- 著者
- ナナイロペリカン
- 出版日
- 2012-03-24
『たまご絵日記』の特徴は、とにかく笑えるところ。旦那様が「気持ちだけイクメン」というナナイロペリカンは、ある意味育児に関しては孤軍奮闘。ママ友もおらず、ブログの言葉に励まされながら育児をしていたと語っています。
可愛くて楽しい子どもとのエピソードの合間に、寝る時間が無い、家事ができない等々育児経験がある人は誰でも抱く不満や悩みを吐露。作中では乳腺炎になったり、育児ノイローゼ気味になったときのエピソードも描かれています。しかしそんな問題を取り上げている時も、作者の手探りながらも前向きに行動する姿が印象的。「どうしよう」ではなく「どうにかしよう」と行動する姿に母親の強さが感じられます。
おむつからおまるへの移行のために、シールを使うというのはなかなかのアイディア。シールを貼ってもらうために奮闘するタマ子の熱意とあざとさが最高にかわいく、笑えるエピソードです。成長する姿に一喜一憂し、新たな問題に頭を悩ませる。育児で起こる問題に対し、明るく解決策を模索していく姿に元気をもらう人もいるのではないでしょうか。育児は大変。でもそれ以上に楽しいアイディアと日常の楽しさが感じられる作品です。
『海月姫』や『東京タラレバ娘』、『主に泣いてます』など、数々のヒット作を生み出している漫画家・東村アキコ。そんな彼女がデキ婚し、1児の母として育児に奮闘する姿を描いたコミックエッセイが『ママはテンパリスト』です。テンパリストというタイトルは、今までテンパった人生を送ってきた自身を振り返ってのネーミング。冒頭から妊娠発覚、結婚、出産の怒涛の流れのまま、すいすいページを捲ることができます。
- 著者
- 東村 アキコ
- 出版日
- 2008-10-17
本作は、主に東村アキコと愛息・ごっちゃんこと悟空くんが登場します。ほぼリアルタイムな成長が記録されているのも特徴で、その時々のリアルな悩みが描かれています。ごっちゃんはイタズラ大好きで、ママのおっぱいからなかなか離れられないという男の子。乳離れをさせるため、胸にゴルゴ13風の絵を描き、怖がらせようとしたものの、ごっちゃんのおっぱいへの情熱に屈したエピソードは爆笑必至です。
排水溝にティッシュを詰め込んで滝行してみたり、喧嘩をするときはプラスチックの刀で容赦なく切ってくるものの、親子仲は良好。ごっちゃんに対する東村アキコのツッコミは、親とは思えない目線での的確さと鋭さがあり、余計に笑いを誘います。
都会ではおむつがなかなか買えないといった実用的なエピソードもありますが、「ネットの育児論争に巻き込まれたくない」との理由から、育児ハウツー的なことはあまり描かれていません。しかし、自分とは性別の違う1人の人間・息子を育てていると遭遇する出来事や、悩みに共感できるところが多い本作品。男児を育てているママはもちろん、これからパパになる方にも、育児って大変なんでしょう、と思っている方にも、広くおすすめできる育児ギャクマンガです。
日本の全人口は、約1億2000万。その中でもほぼ半数が男性となるわけですが、そんな彼らも母親に産み育てられた存在です。誰しも生まれてから子ども時代を過ぎて大人になるものですが、母と息子は性別が違うもの。だからこそ、わからない苦労がたくさんあります。男の子を持つ母親たちから子育ての話を募り、西原理恵子自身が選んで漫画を付けた、毎日新聞の人気連載を一冊にまとめたのが『ああ息子』です。
- 著者
- 西原理恵子+母さんズ
- 出版日
- 2013-03-23
男の子は冒険と称して高いところに上り、探検と称して暗いところに潜り込んでしまう生き物です。平気で服を汚すし、怪我をする。綺麗なお姉さんにくっついていこうとしたり、下ネタが大好きだったり。
特に綺麗なお姉さんに関するエピソードの「人間は本質的に変わらないのだ」というお母さんのコメントが秀逸。女性的に困るところは、虫をやたらと収集し、プレゼントされるというエピソードでしょうか。怪我をするのは困りますが、精神的にダメージを与えてくるのも勘弁してほしいところです。
同じシリーズで『ああ娘』という本もありますが、読み比べてみると男女の差が歴然となるのが面白いところ。娘では落ち着いた話題が多めですが、息子になるとそのアホ差加減から生み出された爆笑エピソードが大多数を占めるという結果になります。愛すべき息子、そして男というもののすべてが、ここに詰まった1冊です。
「○○女子」という言葉が乱立するようになり、いくつになっても女子は女子なのだなぁ、と感じられるようになってきたこの頃。年齢を重ねた人よりも、より女子は女子という生き物でであることを意識させられるのが、前川さなえ『5歳だって女。』です。
髪型に気を遣い、唇が渇いていればリップクリームを塗り、鏡を覗き込んでかわいく見える角度を考察する姿は、まさに女子。時にあざとく、時に子供らしく無邪気、そんな前川さなえの娘・はるちゃんのエピソードが満載です。
- 著者
- 前川 さなえ
- 出版日
- 2016-02-19
はるちゃんのすごいところは、自分が可愛いとわかっているというところ。イベントのステージショーで「かわいい女の子」という条件ですかさず挙手をし、ステージへ。母親からその自信はどこから来るんだ、と疑問に思われるくらい、はるちゃんは自分が可愛いということを知っています。
人と話す時に上目遣いで甘えた口調にするなど、かわいらしさを武器として使用する術をすでに身に着けているというのも驚きです。5歳にしてこの女子力、恐るべしと唸ってしまいます。しかしお兄ちゃんと一緒に寝たくて布団に潜り込んだり、サンタさんへの連絡はLINEですると思っていたりと、子どもらしいエピソードもあるのでほっこりもさせられます。子供らしさの中に垣間見える女子に、笑ったり驚いたりできるのです。
同じ性別だからこそ、分かり合えることも多いですが、反発することも多いのが同性親子の難しいところ。子どもだと思って侮ることなかれ、と女子らしさを全開に出してくるはるちゃんがとにかく可愛い一冊です。
松本ぷりっつ家に生まれた長女のフー、次女のスー、三女のチーの育児と日常を綴った松本ぷりっつ『うちの3姉妹』。ブログ発の育児コミックエッセイの先駆者的存在であり、あまりの人気にアニメ化もされた本作。マイペースな3姉妹の可愛らしい暴走っぷりに、笑い、癒された人も多いのではないでしょうか。
- 著者
- 松本 ぷりっつ
- 出版日
- 2006-04-20
基本的には3姉妹と松本ぷりっつ夫妻との日常が描かれている本作。笑ってしまうコミカルなエピソードを抽出していることもあり、子育ての苦労話が延々続いたり、暗い雰囲気になりすぎないというところがポイント。
とはいえ、そんなギャグパートだけでなく、「おっぺけぺ」のニックネームで知られるフーの作中では「極悪期」と呼ばれる時期の育児の苦労の描写も。幼稚園に入園するまで続いた自傷や噛みつきといった攻撃行動などが隠すことなく描かれています。フーが「極悪期」にいるときは、スーは夜泣きをせず、ぐずらなかったというエピソードが、小さくても母親を気遣えるのだな、と人間にもともと備わっている優しさを垣間見た気分がしました。
どうしても妹を構いたいフーや、「お母さんの将来って、まだあるの?」と、突然哲学的なことを訊ねてきたりするスー、動物にお姉さんぶった行動を見せるチーなど、3姉妹はとにかく個性豊か。母である松本ぷりっつの、愛のある冷静なツッコミに、つい笑ってしまいます。
実年齢的には3姉妹はもう子どもではないのですが、彼女たちが子どもだった時間は母の想いとともに、本の中にずっと残っていく。成長を感じ、笑って少しだけほろりとする、そんな作品です。
恋愛下手な人は、それ以前に人付き合いが苦手、という人が多いでしょう。普段の何気ないやり取りでさえ上手くできないのに、相手に自分の気持ちを伝え、好きになってもらう恋愛などというのは、雲の上の話だと、諦めがちではないでしょうか。
どんな人でも、相手を好ましいと感じた瞬間に、恋は始まるもの。『ひとみしりの私が恋をした』は、まさしく人が人を好きになる瞬間、その片想いしている様子が描かれたコミックエッセイです。作者の倉田ちよが、オタクで人見知り、コミュ障気味というスペックのため、親近感を覚える読者も多いのではないでしょうか。
- 著者
- 倉田ちよ
- 出版日
- 2016-02-07
新しい職場で働き始めた倉田ちよは、そこで接客業なのにかなりの無愛想、だけれど同じ職場のおばさま方からはやたらと人気の高い、菊川さんと出会います。クールな人、という第一印象でしたが、笑顔はかわいいとの噂。ある日業務上のやり取りの中で、偶然笑顔を向けられてしまった倉田ちよは、それ以降菊川さんが気になって仕方がありません。
菊川さんが気になって仕方が無く、つい目で追ってしまったり、探してしまったりする倉田ちよの、観察日記のような菊川さんエピソードが可愛らしく、ついニヤニヤ。寝癖を直すまでに右往左往する菊川さんは、ぜひ生で見たかったものだと思わせる破壊力を秘めています。
恋愛に奥手な女子らしく、バレンタインデーの前にチョコを買う段階で1カ月も悩み、挙動不審な姿を見せる倉田ちよに、奥手女子は共感必至。思わず応援したくなる恋物語、ちょっと天然気味な菊川さんとの恋がどうなったのか、ぜひその目でお確かめください。
結婚する人口が年々減っているというニュースをよく耳にしますが、結婚にあこがれを持っている人は多いでしょう。少なくなってきているとはいえ、付き合い始めたらいずれ結婚、という考えを持っている人は多いはずです。
『みゆ子はプロポーズ待ち』は、付き合っているどころか同棲して半年になる彼氏から、プロポーズされない理由を延々と妄想するというコミックエッセイ。プロポーズされないのではないかと考え、一喜一憂しているみゆ子の姿が笑いを誘います。
- 著者
- ふくろ みゆ
- 出版日
- 2016-04-17
プロポーズされないかも、と考えてしまう理由は様々で、おならやトイレの使用の仕方など、なかなかデリケートな部分に踏み込んでくるところが、同棲しているというカップルならではのエピソード。トイレットペーパーの分量などは、そこまで気にしなくてもいいのでは、とついツッコミを入れてしまいます。
終始みゆ子の視点で進みますが、プロポーズされない、という悩みは年齢的なこともあってか、かなり真に迫るもの。生活は穏やかだし、互いに不満もなさそうな状況だからこそ、みゆ子の、結婚できない理由探しが、斜め上方向に進んでいくところなどは、実際に起こったことだからこそ、妙なリアリティがあります。
2人が結婚したかどうかは明かされていませんが、体調が悪い彼女のために好物のパンを買ってきてくれるなど、3つ年下の彼氏はかなり穏やかそうな人物。出来れば上手くいってほしいな、と願いたくなります。プロポーズに悩みを持つ人も、そうでない人も、共感と笑いがびっしり詰まった1冊で、理由探しをしてみませんか。
恋愛はいつでもどこでもできるわけではなく、職場によっては出会いに恵まれないという人も少なからず存在します。そんな人たちの助けとなるのが、婚活。結婚する意志を持った男女が集まる場所です。結婚する意志のある人が集まるのならば、すぐ結婚できるのではないか、と期待が膨らみますが、現実はそうでもありません。
1日1万アクセスを超える、たえの人気婚活ブログを、すぎやまえみこがイラストを担当してコミックエッセイ化したのが本書。地方に住むOLのたえが、29歳までに結婚することを目標に、婚活にいどむ様子が描かれています。
- 著者
- 出版日
- 2012-11-21
本作が他の婚活コミックエッセイと違う点は、男性に対する評価がかなり辛口であるという点。出会った相手にあだ名をつけたり、心の中で分析しダメ出しをしたりという行動自体が、女性だけの会話で見られる本音ゆえの辛辣さがあります。
そんな状態で上手くいくのかと言えば、当然上手くいかないことのほうが多い状態。それでもめげずに婚活を続ける姿は、最終的に応援したくなるほどです。恋や失恋が赤裸々に語られており、時折その率直さに笑いながら、この人本当に結婚できるのだろうか、と心配になってしまい、婚活を頑張る女友達を見守っている気分になります。
婚活失敗率が高いということは、やはり何らかの原因があるということ。自分の異性への接し方を、率直に見直すことができる、反面教師的な1冊です。
37歳にして1人の女性漫画家が結婚しました。花津ハナヨは『CAとお呼びっ!』や数多くのコミックエッセイを執筆する人気漫画家。こじらせ女子として知られています。
『結婚相手ってどこに落ちてるの?』は、漫画家花津ハナヨの、結婚までの恋愛遍歴が描かれている作品。元カレとのセフレ関係や、一回り以上年上の男性との不倫など、結婚までの経過がかなり赤裸々に語られているのが特徴。アラサー以上の女子が陥りやすい恋愛のドツボにハマっている様子も語られます。
- 著者
- 花津 ハナヨ
- 出版日
- 2015-09-24
世間に認められて漫画家として活動しているなら、自信家なのだろうという偏見でページを捲れば、花津ハナヨは自分にあまり自信が無い女性である様子。自分にコンプレックスを持っていて、初めての彼氏への想いを拗らせ、恋愛がうまくいかないという問題を抱えていました。
モテない女子にある過剰に育った自意識に、痛々しさはありつつも、その時の恋を一生懸命追いかける花津ハナヨの姿に共感。しかし、その方向性がセフレだったり不倫だったりと、ダメ男をつなぎ止めようとするため、このまま妊娠でもしたらどうしよう、と読者はハラハラしっぱなしです。
最終的には良い出会いに恵まれる花津ハナヨですが、その恋をはじめる過程でも不器用な性格ならではの突飛な行動を起こすなど、安心して読めるコマは1つもありません。大人になっても恋愛って難しい、そう考えさせられてしまう、恋愛コミックエッセイです。
30歳にして知識ゼロからの体当たりの婚活を敢行。見事に結婚するまでの道のりを描いたのが『恋愛3次元デビュー~30歳オタク漫画家、結婚への道。~』です。
- 著者
- カザマ アヤミ
- 出版日
- 2014-05-21
作者のカザマアヤミは『はつきあい』などの純愛漫画を描いた漫画家。しかしその実態は、女子校育ちで男性に対する免疫も知識もない、オタク女子でした。少女漫画を読んでは、ヒロインなりきり妄想をし、男性に会ってパニックになった挙句泣き出すなど、男性が苦手な人でもここまではそうはいないぞ、という奇行っぷりを序盤から見せます。
この人、本当に結婚したの、という疑問がわいてきますが、カザマアヤミは基本的にかなり努力家である様子。大学生時代に彼氏作ろうと奮闘するも、ぶりっ子認定されて断念するなど、かなり前途多難。妄想力が高いというオタクあるあるな姿に、2次元好きはかなり共感できるはずです。
知識が無いがゆえに空気が読めず、ぶっ飛んだ質問ばかりしているカザマアヤミですが、結婚したいという気持ちは本物。高いテンションで進んでいくため、悲壮感もなく楽しく読み進めることができます。男子からドン引きされるほどの質問を、さらっと口に出せる漫画家は、どのようにして結婚をしたのか、その目で確かめてみてください。
世の中前向きに、明るく生きている人ばかりではありません。多くの人が後ろ向き志向でも、なんとか生きているのです。『アラサー派遣OLビクトリアのやけっぱち暮らし』は、そんなネガティブ女子の日常が赤裸々につづられています。
ビクトリアブラディーヌ、通称ビクトリアは、北海道出身の女性。派遣社員をしており、独身です。本作は、生きた証を残したい、とTwitterで日常漫画をアップし、web連載を経て書籍化されました。
- 著者
- ビクトリアブラディーヌ
- 出版日
自分自身のネガティブな性格や、婚活にいそしむ様子、唯一といっていい元カレとの話などが綴られていますが、共感できるのは、マルチ勧誘の話でしょう。高校生の頃に告白した男子からは勧誘を受け、デートをすれば勧誘が来るのではと疑う日々。女子はここまでチョロくないと憤慨しつつ、しかしカモだと思われている悲しみが身に迫ります。
日々出会いを求めていても、やはり家に戻れば1人です。どうしようもなく寂しくなる、そんな時にビクトリアがしていることに爆笑必至。人工知能「Siri」に結婚を迫る様子は、Siriの受け答えの明瞭さに驚かされます。これくらいストレートなら苦労しないのに、という悲哀も込められ、笑いつつも難ともいえない気分に。
クリスマスに予定が無いから写経に行ったら独身女性が多かった、などちょっと悲しくなってくる独身エピソードは多め。しかし、悲しくなりすぎることはありません。等身大のアラサー女子の日常に、同年代は共感する事間違いなしの1冊です。
人は生まれてから誰しも年を取るもの。誰にでも10代があったように、年齢を重ねていけばやがて老いを感じる領域にたどり着いてしまいます。その過程で好きなもの、情熱を傾けられるものを持っている人もいれば、興味はあるけど足を踏み出せなかったという人もいるでしょう。
『中年女子画報』は、正しい中高年になるために、様々なことに挑戦する様子が描かれた作品です。作者の拓殖文は、独身で子育てもしてこなかったせいか、自身をまだまだ若いと認識していました。しかし、40歳を迎えて中年を意識したとたん、このままでいいのだろうかと疑問を持ち始めます。
- 著者
- 柘植 文
- 出版日
能や美術鑑賞といった文化的なことから、釣りや登山、海水浴などのアウトドア、綾小路きみまろライブに行くなど、らしい行動に何でも挑戦。中には高級ランジェリーショップやウィッグ検証など、ちょと気恥ずかしくて人には聞けないことも、率直な意見が描かれています。
40代というのも微妙な年齢で、体力的な衰えを感じ始めてはいるものの、意識的には若い頃の感覚が残っているもの。中年という老いに対する抵抗やネガティブな感覚に共感できる人も多いでしょう。しかし、だからこそ新しいことに挑戦していく拓殖文の姿からは、エネルギーが感じられます。
楽しみは生きていくのには必ず必要なこと。中年という年齢に新しい楽しみを見つけるのは、きっと楽しい事なのだと思わせてくれます。周囲からの中年扱いあるあるに苦笑しつつも、年齢を重ねることが楽しくなってくる、そんな1冊です。
女子校、それは女子しか通うことが許されない学校のこと。主に高校を指すことが多いですが、花も盛りの10代の女子たちしかいない環境です。可愛い初心な子が楽しく学校生活を送っているのだろう、と想像しがちですが、そんなことは一切なし。女子しかいない環境というのは、女子から羞恥心を剥ぎ取る場なのです。
『ぜんぶ女子校のせいだ!』は、女子校に通っていた作者のヤマダの拗らせた過去と、女子校のリアルな生態を描いた作品です。地域や学校のカラーによって多少異なるとは思いますが、女子校に通っていた人や、女子の多いクラスに所属していた人なら思い当たる節があるのではないか、というエピソードが満載されています。
- 著者
- ヤマダ
- 出版日
- 2014-05-15
例えば、女子校に漂うにおい。校則で化粧を禁止されているとはいっても、女子は何となくいいにおいがする、と思っている方も多いでしょう。実際の女子校にはお菓子のにおいが漂っています。作中ではロッカーに放置されたお菓子が原因で、虫が大量発生するという、阿鼻叫喚図が描かれました。
男子との恋愛経験はすべて乙女ゲーム、授業中は妄想にふけり、BL(ボーイズラブ)に目覚めてからは、数式をカップリングしてみたりなど、オタク女子高生にありがちな行動も余すことなく記載。スカートを捲られるため、あえて奇抜なパンツをはいている時の、堂々たる姿に笑いが止まりません。
女子高生時代のヤマダの自虐ネタが中心の本作、イタイと感じながらも笑いに昇華されているので、終始楽しんで読むことができます。女子高生はこれで大丈夫なのか、と時折心配になりますが、イタさこそ10代の象徴。これぞ女子校、というリアルさが詰まった作品です。
女子が皆服装に気を遣い、自分の趣味と流行に添った服を着ている、と思ったら大間違い。中には万年ジャージ、上から下まで大型量販店の商品でも問題なく、とりあえず着られればよし、としている女子も存在します。しかし、彼女たちも心の中ではオシャレになりたい、と思っているかどうかは定かではありませんが、おしゃれというものを簡単にこなせない女子も多いのです。
本屋をネタにしたコミックエッセイでブレイクした久世番子が、服を題材にして描いた作品が『神は細部に宿るのよ』。タグやバーゲン、クリーニングや販売の事まで、服の事なら何でも描かれています。作者が女性なので女性服の話ばかりになりますが、基本は男性も同じですから、男性でも共感できる部分が多いのも特徴。
- 著者
- 久世 番子
- 出版日
絵が上手い人は化粧が上手、と言われていますが、女性漫画家は特にオシャレな人が多いというイメージを持っている人も多いでしょう。しかし、久世番子は自身を「おしゃれ川下」と称し、ダサい女子であると明言。オシャレだと思って買った服が、某ジブリのヒロインの洋服のようだったと言われたなど、自虐ネタも登場します。
ダサい人をオシャレ川下と言うなら、オシャレな人は川上。ダサいと言いつつも服が好きな久世番子は、様々なところに突撃していきます。オールインワンを着こなす人に、トイレについて尋ねるなど、取材は率直。見えてくるのは、オシャレは総じて我慢であるという事実です。
この作品を読んでオシャレになれるというわけではありません。しかし、服に情熱を傾ける人の心情の一端が見えてきます。オシャレ川上女子の洋服に傾ける情熱と、川下女子の服に対する苦手意識や右往左往する様子、両方が楽しめる、服にまつわる女子たちの本当の姿が見える1冊です。
30歳の福田ヤマコは、ずぼらで大ざっぱな性格の独身OL。残業した日はわざと帰るギリギリに上司へメールをして、さりげなく頑張ってるアピールをするなど若干ズレているヤマコの周りには、仕事も恋愛も全力で頑張る同期の日野ユキや、何事も効率重視の省エネタイプな後輩の藤森アイなど、個性的だけど職場に絶対1人はいそうな人物がいます。そんな彼女や彼のあるある日常を描いた4コマ漫画です。
- 著者
- あきばさやか
- 出版日
基本的には4コマ漫画で、短いエピソードが何本も羅列されている構成です。主人公のヤマコ自体は架空のキャラクターではありますが、エッセイなので作者の体験に基づいたものなのでしょう。OLあるあるが詰め込まれているので、OL経験のある女性なら思わず頷きながら笑ってしまうかもしれません。
誰にでもあるような失敗やしくじりを笑いにして読ませてくれるので、もちろんOLじゃなくても共感を覚える部分は多く、失敗しても何となくマイペースなヤマコの姿に励まされます。元はブログで発表されていた漫画ですが、その人気から書籍化に至りました。書籍には描き下ろしもたくさんあるので、ブログで呼んだことのある人にも充分満足してもらえる内容になっています。体の力を抜きたい人に手に取ってもらいたい4コマ漫画です。
いかがでしたか? 人は誰でも一度きりしか人生を味わうことができませんが、人の数だけ人生はあります。だからこそ、人の生活をちょっと覗いてみたい好奇心も動きますよね。実体験だからこそおもしろく、胸に迫ってくるコミックエッセイを、この機会にぜひ手に取ってみてください。
Twitterで大注目を集めたアラサーオタク女子・パカチャンによる、オタク満喫ライフを描いた4コマ漫画です。この作品は、Twitter累計5500万pv超えを果たすという快挙を成し遂げた、妙齢女性作家の日常について描かれています。社会人でありながら、度を越えたオタク生活を楽しんでいる大人が見れる作品です。
- 著者
- パカチャン
- 出版日
主役のパカチャンは、とても自堕落な人。Twitterの更新をしようとしていたが、「1時間だけ寝よう」と言ってそのままなにも作業をしなかったり、「夜食を食べたら多少やる気が起こるかも知れない」と言ってやはりそのまま何もできなかったりと怠け具合がすごいです。
オタクのあるあるももちろん多く出てきますが、このように日常的な社会人としてのあるあるも多いので、仕事をしている人なら誰でも共感できるかもしれません。オタク以外の人が読んでも思わず笑ってしまう、そんな作品になっています。
ド田舎に住む熱心なオタクである小針タキは、広島の田舎での生活に不満を感じ、オタ友であるさよりのルームメイトが引越したのを期に彼女とルームシェアを始めます。主に、タキとさよりの日常を描いたギャグマンガです。
当初タキは、ルームシェアをしたいと思いつつ、キラキラなさよりとは釣り合わないのではないだろうかとなかなか切り出せずにいました。ところがさよりに一緒に暮らすことを提案したところ、あっさりと承諾。「鴨がネギしょって来たなあと思って!」とさよりはあっけらかんと口にします。
- 著者
- 小針 タキ
- 出版日
- 2016-12-15
タキは腐女子、さよりはエロゲ好きという、濃いキャラを持つ2人の共同生活。ここでもオタク文化のあるあるがたくさん飛び交います。同じオタクでありながら、好きなジャンルや属性の違う相手とどのように会話するのか、自分の好きな作品に対する他人との温度差など、オタクの些細なやり取りが楽しめます。
正反対のデコボココンビがおもしろい漫画です。重度のエロゲ好きでロリコンのさよりは明るく開放的な裸族。一方タキはショタコン腐女子で、一度ネガティブスイッチが入ると底の底まで落ちていきます。
ふたりはお互いに相手の地雷や感覚の違いの危機をうまく、そして面白く切り抜けながら仲良く暮らしています。この作品を見たら、オタクの友達をルームシェアに誘いたくなるような楽しさを感じる作品です
本作品は、重度の腐女子でBL大好きの長女、年季のあるオタクである母、大きいお友達(児童向けアニメ好きのオタク)によるオタク家族を描いています。3人はどこにでもいるような平凡な家族ですが……。
- 著者
- しののめしの
- 出版日
実はこの家族、全員がオタクという愉快な家族だったのです。家には床が抜けそうになるほどの漫画やDVDがたくさんあります。本は少し数えてみただけでで長女が100冊、弟が1000冊、母が2000冊というとてつもない量。めんどうで数えられないほどの蔵書量となっているほど筋金入り。
なんといっても仲の良さそうな雰囲気にほのぼのします。しかしそこはそれぞれの道を極めたオタク。相容れないところではとことん口論になります。母と子供たちの年代による趣味の違いや、男女による好みの違い、オタク属性の違いなどで、好き嫌いが3人とも違います。
オタクならこの家族のやりとりに共感できるはずです。オタクを家族だからといって一緒くたにするなと言っていそうな勢いのある作品となっています。たとえ家族でも趣味が合わないと、とことん相容れないというオタクの生態がこの作品でよくわかります。
恋愛と縁の遠い、25歳のオタク女子いつかが、周りの結婚ラッシュや年齢のこともあり、婚活パーティへの参加を決意します。しかし、恋愛偏差値が低すぎて、失敗を繰り返していきます。
- 著者
- 遊佐いつか
- 出版日
いつかは「結婚」が目的で婚活パーティをしているので、恋愛は特にしなくてよいというドライな考えなので、婚活でも浮いた存在になります。そんな中でも、頑張ってなんとか結婚にこぎつけて子供までできて、という流れが全て書かれた作品です。恋愛に不器用なら男女ともに共感できるものなのではないでしょうか。
婚活や結婚後についても語られているわけですが、婚活パーティに関する豆知識が多々でできます。男性参加者の4割がSEをしている、男性の4割が年収300万未満にも関わらず高収入の人の参加者が多いなど、これから婚活を始めるであろう人に役に立つ情報がたくさん出てきます。
この作品を見てから婚活すれば、結果につながるかもと思える程、豊富に情報があります。オタクで婚活をしようか悩んでる方はもちろん、婚活をしている方、控えている方にもぜひ読んでいただきたい、役立つコミックエッセイです。
オタクコミックエッセイの元祖と言ってもいい大人気作品です。
腐女子であるつづ井さんは、日頃からBL妄想に浸っています。そんな彼女の日々の妄想や日常を綴っている作品です。一人でも妄想で楽しそうにしていますが、オタク友人との交流もあり、独り身でも充実した人生を送るつづ井さん。作品自体は、非常に簡素な絵で書かれており、彼女の日常がシンプルに、でもおたくのツボをつきまくる角度で綴られています。
- 著者
- つづ井
- 出版日
- 2016-02-05
腐女子のなかでも、かなり重症の部類に入るつづ井さんの妄想は止まりません。自分の好きなキャラの身長を、壁にテープを張って印をつけて、自分のと並べてみて朝を迎え、その存在を「生まれてきてくれてありがとう、お年玉とか上げたいレベル」と奉ります。
キャラクターへの溺愛ぶりには思わず吹き出してしまいます。この作品は、オタクにとってはかなりあるあるであり、一般人にはかなり奇妙な生態として映るのではないでしょうか。オタクの人々には叫びたくなるようなツボをついた共感を、オタク文化に馴染みがない人には「こんな人間がいるのか」というひと笑いをくれる、シュールすぎるコミックエッセイです。
群馬で生活していたかよの母親が、交通事故にあって大腿骨を骨折してしまい、車椅子生活を余儀なくされてしまいます。
自分で歩くことのできなくなってしまったかよの母。堀田夫妻の遠距離介護生活は、こうして始まりました。
- 著者
- 堀田あきお&かよ
- 出版日
多くの人が関わるであろう「介護」を題材にしたコミックエッセイです。群馬に住む母親が歩けなくなってしまったという理由から始まる、遠方の実家に通う介護生活における苦悩や、それを献身的に支える夫との夫婦愛を描いています。
また、介護体験はかなり具体的に描かれていますので、コミカルに描かれたノウハウ本としてもおすすめできるでしょう。
上記だけならば、どこか見たことのありそうなエッセイ漫画ですが、この漫画のポイントは、かよの父親の存在。彼には堪え性がなく、実の妻の介護に対しても非協力的です。
母親は固い物が食べられませんが、そんなことはお構い無しの父親は自分の好きなものだけ買ってきます。そこでヘルパーさんが柔らかい食べ物を用意してくれるのですが、なんと父親はそれすらも食べてしまうのです。それ以外にも、父親のとんでもないエピソードは枚挙にいとまがないほどで、読者は呆れてしまうかもしれません。
歩けなくなったかよの母には、認知症の症状も現れます。しかし、そんな母親の気高さや「私の人生はこれでよかったんだよ、あんたが生まれてきてくれたからね」という言葉は、読者の涙を誘います。
固い絆で結ばれたかよと母親の親子愛や、かよを必死に支える堀田あきおの愛情、また介護体験レポ漫画としての側面など、非常に読み応えのある作品です。
1940年頃、小学生だったジャーナリストの本多勝一が、地元信州で、小学生、旧制中学、高等学校と成長していく中、いったいどんなものを食べてきたのかを、彼の思い出話ととも描いた漫画作品です。
- 著者
- ["あきお, 堀田", "勝一, 本多", "佳代, 堀田"]
- 出版日
いわゆる「グルメ漫画」とでも言われそうなタイトルですが、この作品の舞台であり、本多勝一が育ったのは昭和の初め頃。今のように便利で、簡単に良い食事を食べられる環境ではありませんでした。
信州と言えば、蜂の子を食べる文化が現代でもよく知られているように、昆虫食が日本の中でも特に食文化として根付いている地域。蜂の子をはじめ、ヒビ(蚕のサナギのこと)やカミキリムシ、また昆虫以外にもカエデやツツジなどの草花も、本多少年は食していきます。
食事を通じて描かれる当時の家族の営みや愛、また戦時中の当時、疎開してきた家族との交流や、そこで育まれる友情といった「人間の繋がり」がテーマになっています。世代を問わず、ぜひ読んでいただきたい作品です。
出版社に勤めていた主人公の杉田純一は、仕事の忙しさで構うことのできなかった彼女にフラれてしまいます。それをきっかけに会社を辞めて、自身の貯金100万円が尽きるまで、彼女が行きたがっていたアジア方面にバックパッカーとして旅行に行くことを決意しました。
初っ端からトラブルに見舞われ続ける杉田は、無事にアジア旅行から帰還することができるのでしょうか?
- 著者
- 堀田 あきお
- 出版日
堀田夫妻が実際に赴いたアジア旅行が元であることから、臨場感あふれる描写が魅力となっている作品です。
杉田がさまざまなトラブルに見舞われながらも東南アジア各国を旅し、成長していくというストーリーで。この作品の醍醐味はバックパッカーと、現地の人々の生活感あふれる様子、また主人公と同じくバックパッカーたちとの交流を描いている点にあります。
漫画で取り上げられているタイやラオスに旅行したことがある方、またはバックパッカーとして旅行をした経験がある方は「あるある!」「また行きたいなぁ」と共感できるような内容となっているはずです。
その国の生活や文化だけでなく、社会や経済に関しても触れられていますので、アジア諸国について興味がある方は、ぜひ読んでみてください。