先日何気なく本棚の奥でほこりをかぶって眠っている絵本をぱらぱらめくっていた。気に入っていたものはどれもストーリーが明快で、絵もかわいらしくてやっぱり今読んでも面白かった。でももっと面白いと感じたのは、昔は何が言いたいのか意味わかんなくてあくびが出た絵本だった。大人になってから読むとやっと本当の良さがわかる絵本を、3つ紹介します。
- 著者
- レオ バスカーリア
- 出版日
ある一枚の葉を主人公にして、四季の移り変わりと葉っぱたちの一生を描いた絵本。絵本ではあるが、絵といっしょに葉の写真ものっている。
葉っぱが生まれ、紅葉し、散るだけなのにこんなに嬉しくて楽しくて寂しくなる。絵も写真も物語を美しく彩っているが、私はこの絵本の文章が好きだ。説明的なのに詩のようでもあり、間の置き方に心を揺さぶられる。幼児向けの絵本なのに「死」という言葉をダイレクトに使い、「生きる」という事への疑問や価値を真っ直ぐに力強く描き出している。勇敢。
葉はずっとそこにあるのに、これは間違えなくいのちの「旅」なのだ。
- 著者
- 中川 李枝子
- 出版日
- 1965-07-01
少女るうこがお母さんにもらった大きな桃色の画用紙から「せかい一強くて、きれいなきりん」のキリカを作り、キリカとともに山の上のクレヨンのなる木へ向かい、様々な動物たちと出会うお話。
この物語の中では少女の空想があたりまえのようにどんどん具現化されていて、素晴らしく自由。画用紙で作ったきりんが言葉を話して庭をかけまわったり、クレヨンで動物たちを塗ってあげたり、そういうことが当たり前のようにおこなわれている。
絵本だから当たり前かもしれないけれど、そういうところにハッとしてしまう。色をのびのびと使った水彩画もとても美しい。
- 著者
- 佐野 洋子
- 出版日
- 1977-10-19
100万回生きて、100万回死んだねこの、もはやわたしがこの本を紹介するのが恐れ多いくらい言わずと知れた名作。
実は、この絵本を子供のころ読んでもまったくなにも感じることができなかった。「めっちゃ生きたねこがめっちゃ死にまくって、最終的に結婚して幸せになったのに嫁が死んでめっちゃ泣いて自分も死んでおわるやつ」くらいにか思えなかったし、正直全然良いと思わなかったのだ。
でもネットを使うようになって、徐々にこの絵本は世界的な名作とされていることを知る。え、あれが!? と思い、改めて何度も何度も読み返して、そしてやっとわかった。これはいのちではなく、愛のお話である。
使い捨てるように生まれ変わってきた猫が、さいごにやっと受け取り、与えることができた「ほんとうの愛」を見たとき、これは決して悲しい絵本ではないのだということも理解した。
この絵本を子供の頃に一度読んで、全然よくわからないと思うこと。中学生くらいでもう一回読んで、やっぱよくわからないと思うこと。そしてもっと成長してもう一回読んで、段々意味がわかってくることに意味があるのかもしれない。
私ももっと歳をとったらもう一度、ほこりをかぶっているだろうこの本を読み返したい。