ごく普通の女の子が、ある日突然不思議なチカラを持ったら…。1990年代少女漫画の金字塔といえる『美少女戦士セーラームーン』が20周年を迎えて話題となっています。かくいう私もちょうどドンピシャ世代です。この時代、「変身ヒロイン」が主人公となるマンガが数多く登場します。主な傾向として、明確な敵を倒す善者と、困っている人を助けるために敢えて悪者になる2パターンに分かれます。今回は、アラサー世代が夢中になった「変身ヒロイン」が登場する少女漫画を前者と後者2作品ずつご紹介します。アナタはどれ派でしたか?
- 著者
- CLAMP
- 出版日
- 2015-03-27
『カードキャプターさくら』は、講談社の雑誌『なかよし』で1996年から2000年に連載、1998年から1999年にアニメ放送された作品です。
小学4年生の少女・木之本桜は、父・藤隆の書斎で不思議な本を見つけます。本を開くとそこから羽の生えたぬいぐるみのようなカードの精霊・ケルベロスが現れ、この本に収まっていた『クロウカード』(大魔道師クロウ・リードの遺産である強力な魔法を宿したカード)が些細な不手際から散らばってしまったことを明かします。クロウカードが災いをもたらす前に再封印を施すべく、桜にカードを封印する力を託し、桜はケルベロスとともにカードの完全収拾を目指していく、というお話です。
毎回、カードを収拾するさいに桜の友人である大道寺知世がデザインするコスチュームを身に纏うのですが、そのファッションに夢中となった方も多いのではないでしょうか?
- 著者
- さいとう ちほ
- 出版日
- 2011-03-01
『少女革命ウテナ』は、小学館の雑誌『ちゃお』で1996年から1998年に連載、1997年にアニメ放送(テレビアニメ版と並列)された作品です。アニメ『美少女戦士セーラームーン』シリーズのメインスタッフだった幾原邦彦が制作集団ビーパパスを結成し、少女漫画家さいとうちほと組んで制作されたという異色な作品でもあります。
幼い頃に助けてくれた王子様に憧れ、王子様になりたいと願うようになった少女・天上ウテナ。入学した鳳学園で「薔薇の花嫁」と呼ばれる少女・姫宮アンシーと出会います。実は、この学園ではエンゲージした者に「永遠」に至る「世界を革命する力」を与えるという「薔薇の花嫁」をかけて、戦い続ける決闘ゲームが繰り広げられていました。その対戦者である生徒会役員(デュエリスト)たちは、ウテナがかつて王子様から貰った指輪と同じ「薔薇の刻印」と呼ばれる指輪を持っており、ウテナもまたこの決闘ゲームに巻き込まれていきます。
男装の麗人、同性愛(というよりも、少女たちの強い絆を表すエスの関係に近い)描写、アニメ版だと前衛的なビジュアルや音楽など、それこそ「革命」的な少女漫画作品であったとも言えます。また、少女たちがこの時期抱く、特有の繊細な感情やセクシュアリティのゆらぎなどがとてもよく描かれています。アニメのほうが馴染み深いという方が多いかもしれませんが、ぜひマンガ版も読んでみてください!
- 著者
- 立川 恵
- 出版日
- 2011-10-13
『怪盗セイント・テール』は講談社の雑誌『なかよし』で1994年から1996年に連載、1995年から1996年にアニメ放送された作品です。
マジシャンの父と、元怪盗の母を持つ中学2年生の少女・羽丘芽美。彼女は、人並み外れた身体能力と華麗なマジックを操り、夜になると自らが住む聖華市に出没する怪盗セイント・テールというもう一つの姿を持っていました。学院礼拝堂の見習いシスターにして情報アシスト役の親友・深森聖良と共に、巧妙な詐欺や窃盗で巻き上げられた金品を盗み、本来の持ち主に返すという怪盗活動を行っていたのです。刑事の息子で芽美のクラスメートの天才少年・アスカJr.こと飛鳥大貴に追われる芽美ですが、いつしかお互いに微妙な感情が生まれるようになります。
怪盗漫画はもちろん過去にも存在しましたが、人助けのための盗みが前景化されているという点で、他のものとは一線を画す作品であり、魔法ではなくマジックによって変身するという点も新鮮な設定でした。
- 著者
- 種村 有菜
- 出版日
- 2014-03-07
『神風怪盗ジャンヌ』は、集英社の雑誌『りぼん』で1998年から2000年に連載、1999年から2000年にアニメ放送された作品です。しばしば「セーラームーン(神話や歴史を前提とした物語)+セイント・テール(怪盗)」と解説されます。
新体操部所属の日下部まろんは、一見普通の女子高生。しかし、実は巷を騒がす怪盗・ジャンヌの正体であり、ジャンヌ・ダルクの生まれ変わりだったのです。神の娘・ジャンヌとして準天使のフィン・フィッシュとともに、神の力で美術品に憑依する悪魔たちを封印し回収していました。そうとは知らずに警察や警官を父に持つ親友の東大寺都に追われながらも使命をこなしていたのですが、彼女の前に謎の少年・名古屋稚空が転入してきたことによって事態は急変します。稚空の転入と時を同じくして、ジャンヌの前に怪盗シンドバッドが現れ、敵対することに。そして、まろんは自分の知らない恐ろしい真実や過酷な運命に晒されることになっていきます。
種村有菜を一躍有名にした作品ですが、彼女が描くキャラクターや背景の繊細なタッチ、色使い、そして目の比率を非常に大きく描く手法は後に続く少女マンガ家に影響を与えました。「目でか!!」とつっこみながらも、まろんの過酷な運命をハラハラしながら夢中になって読んでいたのは私だけではないはずです。
『神風怪盗ジャンヌ』については<種村有菜『神風怪盗ジャンヌ』は乙女の永遠バイブル!名言を全巻ネタバレ紹介>の記事で紹介しています。気になる方はぜひご覧ください。
いかがでしたか? 90年代以前の少女漫画は、主に「ちょっぴりドジだけれどいつか自分にとっての王子様がやってくる」というような受け身の女の子たちが主役の設定が多かったのですが、今回紹介した90年代の作品の共通点として、身体能力が高く、天真爛漫な少女たちが、能動的に悪に立ち向かっていくという点が挙げられるかと思います。細やかな分析はここではおこないませんが、そういった作品のテーマとこの時代を生きた女性たちのあいだに、なにかしらの影響関係があったのではないでしょうか。
当時のことを思い出して改めて読み返してみてもよいですし、読んだことがなかったという作品があったらぜひ読んでみてください!