全国ホラーファン必読!『このホラーがすごい!2024』ネタバレ見所紹介

更新:2024.9.24

皆さんはホラー小説がお好きですか?もしホラー小説に興味があるなら、背筋・雨穴・梨など、意欲的なモキュメンタリーを手掛け近年のホラーシーンを席巻した作家の特集を組んだ『このホラーがすごい!2024』は要チェック。 古今東西の名作ホラー小説やホラー漫画を知りたいなら、有識者が集った本書を読んで損はありません。今回は宝島社刊『このホラーがすごい!2024』の見所ほか、国内外で取り上げられた作品をネタバレ込みで紹介していきます。最後までお付き合いください。

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『このホラーがすごい!2024』のあらすじと登場人物紹介(ネタバレあり)

『このホラーがすごい!2024』は『このミステリーがすごい!』編集部が刊行した、ホラー小説の最新版ガイドブックです。誌上には国内版ホラーベスト10と海外版ベスト10が掲載され、メジャーマイナー問わず良質なホラー小説が紹介されています。

以下、国内版ホラーベスト10のランキングです。

  1. 禍 小田雅久仁(新潮社)
  2. 近畿地方のある場所について 背筋(KADOKAWA)
  3. をんごく 北沢陶(KADOKAWA)
  4. 本の背骨が最後に残る 斜線堂有紀(光文社)
  5. でぃすぺる 今村昌弘(文藝春秋)
  6. 最恐の幽霊屋敷 大島清昭(KADOKAWA)
  7. 梅雨物語 貴志祐介(KADOKAWA)
  8. わたしたちの怪獣 久永実木彦(東京創元社)
  9. きみはサイコロを振らない 新名智(KADOKAWA)
  10. 食べると死ぬ花 芦花公園(新潮社)

 

国内版ランキングではホラーに力を入れているKADOKAWAの小説が数多くランクインしました。冊数では過半数を超えているのに注目してください。

海外版ベスト10もまた面白い結果になっています。

  1. 寝煙草の危険 マリア―ナ・エンリケス/宮崎真紀(国書刊行会)
  2. 生贄の門 マネル・ロウレイロ/宮崎真紀(新潮文庫)
  3. 異能機関 スティーヴン・キング/白石朋(文藝春秋)
  4. 幽霊ホテルからの手紙 幽蔡駿/ 舩山むつみ(文藝春秋)
  5. 奇妙な絵 ジェイソン・レク―ラック/中谷友紀子(早川書房)
  6. 最後の三角形 ジェリー・フォード短篇傑作選 ジェリー・フォード/谷垣暁美(東京創元社)
  7. ロンドン幽霊譚傑作選 W・コリンズ E・ネビステット他/夏来健次(創元推理文庫)
  8. 大仏ホテルの幽霊 カン・ファギル/小山内園子(白水社)
  9. 妄想感染体 ディヴィッド・ウェリントン/中原尚哉(早川文庫SF)
  10. 穏やかな死者たち エレン・ダトロウ/渡辺庸子(創元推理文庫)

 

巻頭企画はキュメンタリーホラーの旗手として脚光を浴びる3人、背筋・雨穴・梨の鼎談。虚構と現実が融合したモキュメンタリーの魅力や小説とリアルの境界を検証しています。

澤村伊智・平山夢明・岩井志麻子・綾辻行人他、ホラー作家たちが体験した怖い話エッセイも必読。

小説以外に『このホラーマンガがすごい!』のコーナーも設けられており、『裏バイト逃亡禁止』『厭談夜話』『コワい話は≠くだけで。』『ニクバミホネギシミ』『僕が死ぬだけの百物語』が紹介されました。

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ハイリスクハイリターンの怪しい「裏バイト」を描いた『裏バイト:逃亡禁止』。幽霊、怪異、サイコなど、様々なホラー要素が絡み合う人気作です。 「正体がわからないものが怖い」という人間の本能を刺激してくれる同作。 今回はそんな『裏バイト:逃亡禁止』の魅力をネタバレしながら紹介していきます。

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サンデーうぇぶりで連載中の漫画、的野アンジ『僕が死ぬだけの百物語』。意味深なタイトルや演出、本格的なホラー描写で連載当初から話題沸騰の本作は、残すところあと三十話となり、クライマックスを迎えています。 今回は『僕が死ぬだけの百物語』の魅力やあらすじ、登場人物をご紹介していきます。怖い話が好きな人は必見です。

著者
『このミステリーがすごい!』編集部
出版日

フィクションはノンフィクションに越境するか?背筋・雨穴・梨の鼎談

『このミステリーがすごい!2024』の巻頭企画は背筋・雨穴・梨による鼎談。ホラーに明るくない方の為に、まずは3名の基本プロフィールと代表作を紹介します。

雨穴は作家・webライター・ユーチューバー。もとは漫画家志望でしたが2018年に『オモコロ』コンテストで新人賞を獲得、ライターデビューを果たします。以降はオカルトとミステリーを交えたシュールな作風の動画をYouTubeに投稿。それと並行しオモコロにも記事を上げ、カルト的人気を誇るようになりました。

2020年10月、モキュメンタリー仕立てのホラーミステリー『変な家』の動画を公開。再生回数2060万以上を叩き出し、のちに飛鳥新社から書籍化。実写映画化漫画化もされ話題を呼びました。

本人は白いお面と全身黒タイツを纏い、人外系覆面作家として活動しています。テレビ東京ドラマ『何かおかしい』の原案も務めました。

著者
雨穴
出版日
著者
["雨穴(飛鳥新社刊)", "綾野暁"]
出版日
人外系ユーチューバー雨穴のベストセラー『変な家』ネタバレ解説レビュー

人外系ユーチューバー雨穴のベストセラー『変な家』ネタバレ解説レビュー

あなたは今をときめく人外系ユーチューバー・雨穴をご存知ですか? 本名性別正体不明、職業はwebライター。 もとは「オモコロ」で一風変わった記事を公開していましたが、ユーチューバーデビューを果たしたのち人気が加速。自作動画原案のホラーミステリー、『変な家』『変な絵』はたちまちベストセラーになりました。 今回は雨穴の作家デビュー作、『変な家』をご紹介していきます。

映画化決定したベストセラー雨穴『変な家』待望の続編『変な家2 11の間取り図』ネタバレ徹底解説

映画化決定したベストセラー雨穴『変な家』待望の続編『変な家2 11の間取り図』ネタバレ徹底解説

2023年年末に発売された雨穴『変な家2 11の間取り図』。本作はホラー系ユーチューバー兼オモコロライターとして活動中の雨穴氏の、商業小説三作目になります。 今回は『変な家』よりさらにパワーアップした『変な家2 11の間取り図』のあらすじ、ならびに注目ポイントを、ネタバレを交えてご紹介していきます。

もまた『オモコロ』のライター。幼少期に2ちゃんねるのオカルト板、「洒落にならないほど恐い話を集めてみない?」通称「洒落怖」にハマり、都市伝説・八尺様のファンになります。

以降ネット界隈で精力的に活動し、2015年に共同創作サイト「SCP財団」日本支部にPear_QU名義で登録。2020年に投稿した民俗ホラー『SCP-511-JP - けりよ』『しんに』は、考察の捗る記事として受けます。同サイト7周年記念に開催された「嘘のコンテスト2020」では、『攀縁』がTale部門総合評価2位を獲得しました。

現在は漫画『コワい話は≠くだけで。』原案を手掛けるほか作家活動に傾注。『かわいそ笑』『6』『自由慄』『お前の死因にとびきりの恐怖を』など、モキュメンタリーの傑作を生み出し続けています。

著者
出版日
著者
出版日
著者
["景山 五月", "梨"]
出版日
SCP有名作家・梨の注目ホラー小説『かわいそ笑』ネタバレレビュー

SCP有名作家・梨の注目ホラー小説『かわいそ笑』ネタバレレビュー

現在注目を集めているホラー小説『かわいそ笑』。 SCP記事やオモコロで活躍している梨の商業小説デビューである本作は、2ちゃんねるや同人サイトに纏わるオカルトジンクスなど、ネット黎明期の怪談をフックにした内容で読者の心を掴みました。 今回は梨『かわいそ笑』のあらすじや魅力をネタバレ解説・考察していきます。

レッドブルつばさの今月の偏愛本  B面|第2回『かわいそ笑』読者が参加することによって完成する体験型ホラー小説

レッドブルつばさの今月の偏愛本 B面|第2回『かわいそ笑』読者が参加することによって完成する体験型ホラー小説

本好き芸人でnote芸人でもある、レッドブルつばささんによるブックセレクトコラム「今月の偏愛本 A面/B面」がスタート!B面では、新旧・ジャンル・話題性に囚われずレッドブルつばささんが「今読んでほしい!」と思う本を自由におすすめしていただきます。 第2回は決して得意ではないという「ホラー」ジャンルから、『かわいそ笑』という小説をおすすめします。(編)

安全圏にはいられない!?梨×景山五月『コワい話は≠くだけで。』越境する恐怖の真髄

安全圏にはいられない!?梨×景山五月『コワい話は≠くだけで。』越境する恐怖の真髄

SCP出身のホラー作家梨が原案を、新進気鋭の漫画家・景山五月が作画を担当するホラー漫画『コワい話は≠くだけで。』。 本作は景山自身が恐怖体験をした語り手に取材し、または体験者が書いた記録や録音をもとに描いた体裁で進み、現在進行形で不可解な事件に立ち会っているライブ感と共に、徐々に現実が侵食されていく生々しい恐怖が味わえます。 今回は『コワい話はキくだけで。』のあらすじや登場人物、魅力をご紹介していきます。

最後に紹介する背筋は「カクヨム」出身の新人作家。

2023年に同サイトに投稿したホラー小説『近畿地方のある場所について』がX(旧Twitter)でバズり、一躍時の人となります。彼もまたモキュメンタリーホラーを得意とし、SNSとリアルタイム連携する形で、安全圏にいると油断した読者の認知に揺さぶりをかけてきます。

『近畿地方のある場所について』はコミカライズ公開中。新刊『口に関するアンケート』『穢れた聖地巡礼について』も好調な売れ行きを記録しています。

著者
背筋
出版日
著者
背筋
出版日
著者
背筋
出版日

鼎談のテーマは現在のモキュメンタリームーブの趨勢と人気ホラーの変遷。

3人にはネット中心に活動していること、モキュメンタリーを手掛けている共通項があります。雨穴が「オモコロ」でルポルタージュ風の記事を執筆していたのも、ネットでは創作小説が読まれない前提に立っていたから。

昨今の読み手は嘘に敏感です。欺かれることや損をすることに臆病になっているとも言えます。BeReal.や実話怪談が好まれる背景にも、作り話を過剰に警戒する読み手の猜疑心がまじっていました。

「SCP財団」出身の梨や「カクヨム」出身の背筋も雨穴の意見に賛同を示し、「もしかしたら本当かも」と疑うことで生まれる、リアルと紐付いた伝染型の恐怖に言及しています。

されどモキュメンタリーに対する姿勢と温度感は三者三葉。雨穴は「創作という枠組みから極力出たくない」「もしかして本当なんじゃないかと少しでも読者に思わせてしまったら負け」と語り、梨もまたフェイクドキュメンタリーのフェイク部分に比重を割いていると強調します。

それに対し背筋は「自分にとってのホラーはプロレスのリングみたいなもの」「もしかしてマジなのかと1パーセントくらい思ったりする、そのもしかしてを楽しむ一種の仕掛けがモキュメンタリー」と自己分析しました。

知られざる名作ゴロゴロ!今読むべき作品は?

ここからは『このホラーがすごい!2024』の中で、筆者が特別に推したい小説をご紹介していきます。

著者
小田 雅久仁
出版日

国内版ランキングにて堂々の1位に輝いた小田雅久仁のホラー短編集。

人の耳にもぐる秘技を身に付けた男の数奇な人生『耳もぐり』、ある新興宗教団体の儀式にサクラとして参加した女の体験髪禍』、公衆便所で髪を貪る女の奇行『食書』、希死念慮に取り憑かれた無職の若者がバイオ企業が経営する実験農場で鼻の形の苗を移植される『農場』ほか、高熱の時に見る悪夢めいて不条理な世界観には抜け出せない中毒性がありました。

五感とリンクした生理的嫌悪の描写も秀逸。指のささくれを剥くように身体感覚に訴えかけてくるホラーです。

著者
北沢 陶
出版日

審査員満場一致で第43回横溝正史ミステリ&ホラー大賞を受賞した北沢陶の小説。大正時代末期の大阪船場を舞台に、愛妻に先立たれた画家・壮一郎と、謎多き人外の青年・エリマキの友情を描きます。

船場特有の訛りがなんともノスタルジックな情緒を醸す話。人間と人外バディの活躍を描いたブロマンスとしても読めるので、そういうのが好きな層に刺さります。

新人離れして端正な文体は滋味深く、時間を忘れて没頭しました。

著者
大島 清昭
出版日

住民が次々変死を遂げる最恐の事故物件。友人の不動産屋にその調査を依頼された私立探偵を待ち受ける怪異とは……。

タイトルに偽りなし、嘗て住んでいた霊媒師が家族もろとも殺された一軒家で相次ぐ怪現象には背筋が凍ります。追い追い挟まれる実話怪談風のエピソードも戦慄。

映画『来る』が好きな人は、事件関係者ならびに癖強霊能者が集合する終盤の展開に必ずやテンション上がるはず。

大島清昭は『赤虫村の怪談』『影踏亭の怪談』に連なる、ホラー作家・呻木叫子シリーズでも人気を博しています。最新刊は呻木叫子シリーズ第三弾『バラバラ屋敷の怪談』。こちらもぜひチェックしてください。

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