世の中に恋愛系漫画は多々あれど、ハーレムものは現実味が無くて面白くない! ちょっと大人向けの、ビターな恋愛漫画が読みたい! そう思われる方も多いかもしれません。今回は、そんな方におすすめな青年向け恋愛漫画を紹介します。
徳島県にある藍染屋の息子である主人公の陸は、幼い頃から一途に想い続けてきた幼馴染の百香と同じ大学へ進学しようと、京都に出ようと考えていました。しかしそれに猛反対する両親。父親いわく、陸の家には代々伝わるお役目があるのだそう。そしてそのお役目を共に果たすようにと許嫁を紹介されます。
気立ても良く家柄も良い、紹介された許嫁は、なんと喋る狸!狸であるミヨと陸の運命はいったいどうなってしまうのでしょうか。
- 著者
- 水瀬 マユ
- 出版日
- 2014-04-26
一途に幼馴染を想っていた結果、家庭の事情で狸が許嫁になってしまっていた、という巻き込まれ系ラブコメ漫画の本作品。
ヒロインである狸のミヨは、人間でいる時は可愛らしい女の子の姿で、主人公のことをきちんと慕っていて好感が持てるのですが、主人公である陸は家庭の問題から強引に狸を許嫁とされたり、果てには善行で徳を積んでしまうと最終的には狸になってしまうという制約があったり、かなり不憫な役回りで可哀想になってきます。だからこそ、幼馴染との恋を応援してあげたくなるのです。
とにかく続きが気になる、そんなドタバタ異類婚姻譚的ラブコメ漫画です。
男心の繊細な動きを巧みに描き出す山本中学による本作は、職場の元カノに未練タラタラの冴えないサラリーマン・井口正行を主人公にした、ちょっぴりエッチなラブコメディです。
人数合わせで参加した合コンで知り合っためちゃくちゃ可愛い女の子・ここみと、一夜を共にしてしまう(?)正行ですが、彼女は何と高校生だった……!?という物語で展開するストーリーは、衝撃的だけどリアルにありそうな物語で、読んでいる人の心をわしづかみにします。
- 著者
- 山本 中学
- 出版日
- 2015-07-23
まず、主人公である正行の人柄がすばらしいです。ここみに超可愛くお願いされても、セックスを誘われても一切手を出さない!
いや、気持ちは揺らいでいるはずなんです。ここみは可愛いですから、男としては誘われたら手を出したくなるものですよね。でも正行は言います。
「やろうと思えば全然やれるよ? でも、カラダだけ繋がったってしょうがないでしょう?」(『繋がる個体』より引用)
なんて聖人君子! 正行すばらしい。
さらに、ここみには実は女子高生という以外にも、正行の元カノ・くるみの妹であるという衝撃の事実が発覚します。しかも、くるみもまだ正行に未練があるとくればコレは見事な三角関係ですよね。ここみとくるみ、2人の間で揺れ動く正行との三角関係の行方も見どころの1つです。
また、ここみがめちゃくちゃ可愛くって! モテるここみからすれば、男性はみんなちやほやしてくれるもので、誘ったら断られることなんてなくて、甘やかしてくれる存在なわけなんです。でも、正行は叱るし誘いに乗らないし、甘やかしてもくれません。そんなところに惹かれたここみが、正行を振り向かせようと奮闘する姿もキュートでいじらしくって、たまらないですよ。
好きな人と自分を繋ぎたい、繋がらないのに繋がれない切なさに、胸が抉られます。3人の恋の行方を見逃せませんよ。
『繋がる個体』については<『繋がる個体』のヒロインがどっちもかわいすぎてつらい!【ネタバレ注意】>の記事で紹介しています。気になる方はぜひご覧ください。
俗世間から切り離された、お寺の跡継ぎである佐伯清玄を主人公にした、「お寺系ストーリー」です。
清玄は僧侶として、妻帯はしないと決めていたのですが、断りきれずにお見合いをすることに。その相手が、以前、清玄がファンだった元マラソン選手の清沢節子というから、果たして……という冒頭から物語は進んでいきます。
- 著者
- 朔 ユキ蔵
- 出版日
- 2012-04-10
寺の跡継ぎとはいえ、若い男性である清玄は己の欲望と日々戦っています。エッチなことをしたいけれど、それに「執着」してしまう自分はいただけない……と思い悩むのですが、やはり体は反応してしまってセックスしてしまう、と葛藤する姿に共感を覚える人もいるでしょう。
だからこそ、断ったとはいえ憧れだった節子との結婚生活にも少し未練があって……と悶々としていたところ、お見合いの日の翌日から、なぜか寺の弟子候補として節子が再び現れたものだから大変です。
毎日顔を合わせることになる相手に、清玄は煩悩を押さえることができるのでしょうか?
さらに、寺は寺で様々な問題を含有していて、その問題からも目を背けられない。そんなお寺ライフの中、近くの寺へ手伝いに行っていた同僚・高木清徹が1年半ぶりに戻ってくることになり、まさかの三角関係に!という怒涛の展開が読み手を飽きさせません。
また、非の打ちどころがないように見える節子にも、何やら悩みがありそうな雰囲気で注目ですよ。
清玄と節子、清徹との三角関係の行く末はもちろん、愛と欲、生と死とを融合させながら進む物語は、ぜひ一度は手に取ってほしい作品です。
単行本帯によると「週刊ヤングジャンプ史上、最速で売れているラブコメ!!」という超人気作です。
秀知院学園は富豪名家の子息が数多く通う名門校。そんな学園の生徒たちをまとめ上げる生徒会長は白銀御行(しろがね みゆき)。学力は全国でも最上位レベルで、模範的な立ち振る舞いから生徒会長に抜粋された、努力家の天才という言葉が似合う人物です。
かたや副会長は四宮かぐや。日本有数の財閥である「四宮グループ」本家の長女として生まれた生粋の令嬢で、また様々な分野で功績を残している正真正銘の天才でもあります。
お互いのことを意識し合っていた2人ですが、その高すぎるプライドから「向こうから言ってきたら付き合ってやる」というスタンスを双方が取っていた結果、何もないまま半年間。ついには2人とも「付き合ってやってもいい」という思考が「如何に相手に告白させるか」という方向へ変化してしまいます。
超高校級の頭脳を持つ2人の、恋の駆け引きという名の恋愛頭脳戦がこうして始まってしまったのです。
- 著者
- 赤坂 アカ
- 出版日
- 2016-03-18
副題は「天才たちの恋愛頭脳戦」ですが、主人公の1人でもあるかぐやが白銀への恋心を自覚していくにつれて、ポンコツ化が著しく進んでいくため、巻を追うごとに「頭脳戦してないじゃん」と思わされる回数が増えていくこの漫画。しかし頭脳戦が減っていくと同時に、純粋な恋愛漫画としての面白さは増していくので、人によって面白いと思う場面が全く違うものとなってくるでしょう。
作者である赤坂アカもこの点は自認しているようで、「天才たち?」「頭脳戦?」という両質問に対し「はい、すみません」(いずれも4巻あとがきより引用)と述べています。
御行とかぐや様の駆け引きを楽しむ漫画なので、かぐや様がヒロインだと思われるのですが、単行本の登場人物紹介欄によるとかぐや様はあくまで主人公なのだそう。ちなみにヒロインと書かれているのは、書記の藤原千花というゆるふわ天然の女の子。天然ゆえの爆弾を投下することで話が大きくギャグに傾く貴重な面白キャラです。
初期のころはクールな表情をしている事の多いかぐや様が、話を追うごとに赤面シーンが増えたり変顔が増えたりと、ポンコツ具合が増して可愛くなっていく様子は必見です。またカバー下のおまけ漫画も一読の価値あり、ブックカバーや保護フィルムをかける前に目を通しておくことをおすすめします。
『かぐや様は告らせたい』について紹介した<漫画『かぐや様は告らせたい』全巻ネタバレ紹介!平野紫耀と橋本環奈で映画化>の記事もおすすめです。
眉月じゅんの恋愛漫画です。ファミレスでバイトをする高校生、橘あきらは寡黙な女の子。元々は陸上選手だった彼女は、アキレス腱の怪我によって選手生命を絶たれてしまいます。そんな失意の底にある彼女でしたが、励ましてくれたアルバイト先であるファミレスの店長、近藤正巳の優しさに惚れ、恋に落ちるのです。
40代の冴えないファミレス店長と、クールな女子高生との恋の行方は……。
- 著者
- 眉月じゅん
- 出版日
- 2015-01-09
コミックナタリー大賞で2位、また漫画家の島本和彦がツイッターで『恋は雨上がりのように』に関するツイートを発信するなど、連載直後から各所で話題になった恋愛漫画です。2018年にテレビアニメも放送予定となっており、未だに勢いは衰えていません。
この恋愛漫画の見所は、女子高生橘あきらと、彼女のバイト先の店長である40代の冴えないおじさんのやりとり。読んでいるこちらが身悶えするようなピュアでじれったい恋愛模様なのです。
脇を固める登場人物たちも魅力的。陸上選手としてのあきらに憧れていた女の子や、血の繋がっていない姉に恋をしているバイト先の同僚、あきらのことが好きで同じファミレスでバイトを始めてしまうお調子者の同級生など、一癖も二癖もあるサブキャラクターが数多く登場し、話に華を添えてくれます。
一方サブキャラとの絡みが増えるにつれて、メインテーマであるあきらと店長との関係性という部分の進行が多少滞る時もあります。しかし、じれったいながらもゆっくり順調に進展していく彼女らの関係性には、そのくらいのスローテンポな進行がよく似合うのではないでしょうか。
『恋は雨上がりのように』については<漫画『恋は雨上がりのように』の魅力を最終回まで全巻ネタバレ紹介!映画化!>の記事で紹介しています。
中学生の上場優一は、憧れの女の子、青田恵子の着替えを盗撮したくて女子更衣室の覗きをすることに。しかしそこで見てしまったのは幼馴染で身長181センチの富士山牧央の着替えるシーン!その衝撃的なシーンが頭から離れない優一は……。
- 著者
- オジロ マコト
- 出版日
- 2013-05-28
衝撃的な着替えを目の当たりにした優一は、その日の帰りに偶然にも牧央と一緒に帰ることになります。その時に小さな子供に対して優しくする牧央の様子をみて、勢いで告白してしまうのですが、意外にも牧央にOKされるのです。突如始まった2人のお付き合いは、中学生らしい初々しい様子で……読みながらニヤニヤしてしまう雰囲気!
誰でも通る道である思春期真っ只中の、男の子ならではの女の子に対する淡い期待や突如訪れるラッキーハプニングの中で、ワクワクドキドキする様子が、ものすごくリアルに伝わってくる作品になっています。なんてことない中学生活、日常の中にある些細な出来事がとても輝いて見えるような、思春期のお付き合いを男性目線で描かれていて、女性の恋愛漫画とはまた少し違って面白いです!1話1話が、まさにキラキラ輝く青春の1ページを読んでいるような気持ちになります。
一緒に時を刻んでいく初々しい2人の青春ストーリーにこちらまでドキドキ、そしてニヤニヤが止まらないストーリー、青春のドキドキを忘れてしまったというあなたにもおすすめです!
小さな紅い実がはじけるように心が揺れ動く瞬間を、様々な視点から描いた恋愛漫画短編集です。表紙の男女を描いた目次前のプロローグを含めると、「蓮先生の書斎」「カウンターパンチ」「初恋」など全8話を収録しています。
- 著者
- 高橋那津子
- 出版日
- 2013-11-15
おすすめは1話「蓮先生の書斎」。近所に住む義理の兄は小説家で、書く作品は素晴らしいが本人はぐうたらでだらしのない男。そんな伯父のところに、母からのおつかいで食事を届けに行った主人公は、「伯父さんが小説を書いてるとこ見てみたい」とせがみ、執筆風景を見ることに。それを見た主人公は、思いがけず恋に落ち……というお話です。
このように、恋に落ちるその瞬間を切り取った短編集。恋愛漫画が好きな方、特に表紙の雰囲気に惹かれた方にはおすすめですし、背景の描写も丁寧なので、そういった面でも魅力的な作品といえるでしょう。
続いて日暮キノコの恋愛漫画。付き合って10年目、同棲を開始してからは8年目という、結婚はしていないけれどただの恋人と呼ぶのもなんか違う。そんな微妙な関係の狭間にいる同棲カップルの、日常におけるすれ違いや交流を描いた恋愛漫画です。
- 著者
- 日暮 キノコ
- 出版日
- 2012-11-20
2014年にはBSでドラマが放送されていたので、ご存知の方も多いのではないでしょうか。今までありそうでなかった、「同棲しているカップルの日常」をメインテーマに据えた恋愛漫画です。
赤の他人同士がひとつ屋根の下で一緒に暮らしていくわけですから、すれ違いや喧嘩が起こることもしばしば。ですが、そのすれ違いを男女両方の視点から丁寧に描くことで、互いを思いあっているという部分をきちんと描写しています。
また、どのようにすればそういったすれ違いを防げるかも明示していくこの漫画は、同棲カップル必読のバイブルと言っても過言ではない程リアリティーに溢れています。
同棲をしている方、または「彼氏or彼女とそろそろ同棲をしてみようかな。」なんて考えている方には、全てをなげうってでも読んでいただきたい恋愛漫画です。
『喰う寝るふたり 住むふたり』については<『喰う寝るふたり住むふたり』名言全巻ネタバレ!男女のゆる同棲漫画【無料】>の記事で紹介しています。気になる方はぜひご覧ください。
主に4コマを描いてきた宮原るりの初ストーリー形式の漫画です。主人公の宇佐和成が親の転勤に伴い、賄い付の下宿「河合荘」に引っ越してきます。そこには図書館によく足を運ぶため、読書少女と呼ばれている先輩、河合律がいました。
- 著者
- 宮原 るり
- 出版日
- 2011-05-30
どうにか律とお近づきになろうと奮闘する和成と、読書に情熱を傾けはするものの恋愛には関心の薄い律。
真性のマゾヒストである城崎や、ダメ男に振り回される錦野麻弓、サークルクラッシャーの異名を持つ小悪魔渡辺彩花など、個性的な河合荘の住人に、時に面白がられ、時に励まされながら、和成は律へのアプローチを続けていきます。
ショートカットで透明感のある律の、ギャグパートでの可愛さもさることながら、知らないうちに恋に心が傾いている様子を窺わせるような表情の変化に、読者もドキリ。無愛想で無表情だからこそ、小さな表情の変化に、心が華やぐのを感じます。
河合荘でのドタバタな日常の中で確実に育まれていく2人の恋。それを律が認めるまでには長い時間がかかりますが、自覚のない恋心を持て余す瞬間というのも、可愛らしいものです。ゆっくりだけれど、着実に踏みしめていくような緩やかな恋の成長を、律の愛らしさとともにお楽しみください。
『僕らはみんな河合荘』について紹介した<漫画『僕らはみんな河合荘』の魅力を11巻まで全巻ネタバレ紹介!律ちゃん神>の記事もおすすめです。
本作の主人公は大学3年生の清田。就活の時期でありながらも社会人の自分を想像できず、仲良くなった同じ大学の女友達桜井を気になりながらも突如現れた美女、種田ようにも心惹かれてしまいます。でも種田さんには秘密があって……。
- 著者
- 渡辺 ペコ
- 出版日
- 2013-04-23
「ときおり現れる目の前の線を おぼつかない足取りで 一歩ずつ超えていったら いつかその足取りもまた 一本の線になるだろうか?」(『ボーダー』より引用)
タイトルのボーダーは、境界線のことです。学生から社会人へ、友達からその先へ、生きていれば出くわす様々なボーダーを清田が超えていくことができるのか、そういったストーリーからきています。
このボーダーの感覚は、日常的に多くの人が持っているものではないでしょうか。例えば、この人となら結婚できる?できない?なんてときの境目、その境界線がボーダーです。人に対して、自分に対して、物事に対して、超えられるのか超えられないのか、深く意識していなくとも常に心の中に存在していると言えます。
2人の女性に惹かれてしまい、言い訳をしながらどちらとも距離を詰めていく清田は種田さんの抱えている秘密を知ってしまい、そのボーダーを超えられるのか、その基準とは何にあるのか、悩むことになります。最後に清田がくだす決断が気になる展開に目が離せなくなることでしょう。
2位は、佐々木ミノルの恋愛漫画です。よく間違えられているのですが、読みは「中卒ワーカーから始める高校生活」になります。近頃ネットでも広告をうっているので、数ページは見たことある方もいらっしゃるのではないでしょうか。
母は他界し、父は服役という家庭環境の中で、高校進学を諦め中学を卒業してすぐ、妹を養うために工場で働き始めた片桐真実。働きが評価されて、現場指揮の仕事を任されることになっていたのですが、大卒の新人にその地位を奪われてしまいます。
同時期に妹が全日制の高校受験に失敗、通信制高校に入学することになってしまいました。「お兄ちゃんも一緒に通おう」という妹からの提案と、見下された大卒新人への見返しのために真実も妹とともに通信制高校に通うことに……というあらすじになっています。
通信制高校を舞台に描かれる、真実を主人公に据えた恋と青春の物語です。
- 著者
- 佐々木ミノル
- 出版日
- 2013-05-29
舞台がいわゆる「普通の高校」ではなく「通信制高校」という、裏表紙からの言葉を借りるのであれば「人種のルツボ」なので、出てくる人々はとても個性豊かです。中卒労働者である主人公の真実やその妹をはじめ、ヒロインのお嬢様、70歳を過ぎたおじいちゃん、20代のシングルマザーなどなど……。
主人公は犯罪者である父を持ったが故に、高校進学が出来なかったというコンプレックスを持っているなど、大半の登場人物が過去に何かしらを背負っています。
主人公とヒロインの恋愛を一応のメインテーマとしながら、それを更に推し進めるための起爆剤として、登場人物のコンプレックスや葛藤を解消していきます。そのため、恋愛ものでありながら上質な青春ものとしても読むことが出来る構成になっており、非常にテンポよく読み進めることが出来るのも本作の魅力です。
自分をコンプレックスの塊のように感じ、自信がなかった主人公や、重い過去にとらわれたヒロインたちが「高校生活」を通じて、どのように成長していくのかというのも、この作品の見どころでしょう。もちろん、中卒労働者である主人公と、生粋のお嬢様であるヒロインとの恋愛関係の進展も必見です。
ちなみに作者の佐々木ミノルも通信制高校の卒業生で、作中の高校は当時通っていた学校がモデルになっているそうですよ。
『中卒労働者から始める高校生活』については<『中卒労働者から始める高校生活』全巻ネタバレ紹介!無料なのに面白い!>で紹介しています。ぜひご覧ください。
1位は柳本光晴の恋愛漫画。「マンガ大賞2017」で大賞を受賞した『響~小説家になる方法~』の作者でもあるので、そちらに聞き覚えがある方は多いかもしれません。
中学までは陸上をやっていた褐色肌がトレードマークの女の子、千穂。彼女は高校の入学式の日、肌どころか髪の毛までもが真っ白な美少女の遥と、その幼馴染である和也と出会います。遥のお人形のような可愛らしさは千穂の憧れで、和也は千穂の一目ぼれの相手。そんな不思議な三角関係を築いた3人はひょんなことから仲良くなり、いつも一緒に遊ぶようになりました。
しかし、遥は生まれつき身体が弱く、高校卒業はおろか、1年生の2学期すら待たずに死んでしまうのでした……。「私の事を思い出した時 それが きれいな思い出になるように」という願いを持って死んでいった遥、残された千穂や和也の未来と胸中は?
- 著者
- 柳本 光晴
- 出版日
- 2014-02-10
タイトルの通り「女の子(遥)が死ぬ話」という一言で簡潔にあらすじを述べることができる本作ですが、実際のところ遥の死の描写はあまりにもあっけなく訪れ、後半はほとんどが回想と、遥の死後の千穂と和也のお話になっていきます。
全7話構成で、6話が物語としてのエピローグであり、遥の死後の千穂と和也の高校生活などを描いています。7話のみ遥視点のお話であり、すでに遥は入院していて死の直前。体は無残にも痩せ細り、人形のような可愛らしさだった遥は見る影もありません。しかしそこに訪れる和也。「遥が死ぬまで毎日ここに来る」という和也に対し、遥の応えは……。
7話の、『女の子が死ぬ話』としての結末は、是非皆さん実際にご覧になってください。年相応の女の子としての弱さと、和也に楔を打ち込むしたたかさを併せ持つ、作中随一の名場面です。
単純な「人が死ぬお涙頂戴もの」ではなく、女の子が死ぬことによって生まれる関係性と、それを構築しながらも心にまでは入り込めない悲しさを描いています。また、死ぬ間際で弱さを見せながらも相手を思い続ける遥の気高い精神など、ベタではありますが、斬新に描ききった漫画と言っていいのではないでしょうか。
解りやすい話の展開をしていながらも、読み終わった後は胸にのしかかってくる、そんなエネルギーをもつ本作は『響~小説家になる方法~』以上のものを秘めています。恋愛漫画好き必読の1冊です。
まだまだ他にも面白い恋愛漫画は山ほどあるのですが、その中でも「これだけは読んでほしい!」というものをピックアップしました。甘いだけでは終わらない大人な恋愛漫画に、胸をときめかせてみてはいかがでしょうか。