麻雀は中国で発生したと言われる、34種136枚の牌を使用して行われるテーブルゲーム。ルールが複雑なため、覚えるのはなかなか大変だからこそ、漫画で楽しみたいもの。そこで最強の漫画家雀士として知られる片山まさゆきのオススメ6作品をご紹介します。
片山まさゆきは1959年4月20日生まれ。千葉県旭市の出身です。明治大学文学部に在籍していた際は漫画研究会に所属していましたが、漫画を描かずに麻雀ばかりしていたのだとか。1981年に漫画家デビューし、漫画に専念するために大学を中退します。
麻雀好きな片山まさゆきの様子を見ていた編集者から、得意分野を描くようアドバイスを受け、強運な持杉ドラ夫を主人公とした麻雀漫画『ぎゅわんぶらあ自己中心派』を発表。同時期に連載していた『スーパーヅガン』も大きな話題となり、麻雀人口を大きく増やす結果となりました。
ギャグテイストの作品で人気となりましたが、片山まさゆき自身の麻雀のノウハウを生かした『ノーマーク爆牌党』や、初心者向けの教本的役割も担う『打姫オバカミーコ』を連載。麻雀論が炸裂する、著者自身も代表作と位置付けている作品です。
麻雀漫画界の第一人者と言われている片山まさゆきですが、その麻雀の腕前はかなりものの。『近代麻雀』を発行している竹書房主催の麻雀大会に、欠場した人の代打ちとして参加した際は、並み居る強豪、プロ雀士たちを差し置き、優勝した経験があるほどです。
そんな麻雀知識と愛に溢れた作品を執筆していますが、画力はあまり高くないと本人も認めるところ。漫画好きの間では「絵が下手なプロ漫画家」としても知られています。大学でも先輩だったいしかわじゅんは、アシスタントに来た片山まさゆきを、役に立たなかったので2度と呼ばなかった、と画力についてかなり辛口なコメントをしました。
麻雀漫画以外にも、ゲーム漫画『大トロ倶楽部』や、三国志をモチーフとした『SWEET三国志』を発表するなど、コメディタッチの作品が多め。その一方で青木裕司との共著で国際関係をテーマにした『サクサク現代史!』なども発表。雀荘を経営するなど、麻雀に関わりつつも多方面で活躍しています。
様々なタイプの麻雀漫画を執筆してきた片山まさゆきですが、『打姫オバカミーコ』はその中でも特に麻雀教本としての側面の強い作品です。ルールや用語、麻雀論を解説した作品はすでに存在しますが、戦術本は他にないから描いた、と作者自らがコメントしており、それだけに内容の濃い1冊になっています。
丘葉未唯子(おかばみいこ 通称ミーコ)は、「JMP(日本麻雀プロフェッショナル)」に所属するプロの雀士。とはいえ、基本的なルールを知っているだけの、アマチュア並みの腕前。偶然出会った元プロリーグの王者である波溜晴(なみだめはる)と出会ったことで、運命は大きく変化します。
- 著者
- 片山 まさゆき
- 出版日
- 2004-11-27
基本的には、元王者という腕前を持つ晴が、初心者並みであるミーコに麻雀を教えていくというスタイル。ルールではなく、勝つためにはどうすればよいのか、という戦術が多く語られているため、内容的にはミーコと同じような初心者から中級者向けです。
実際にどの程度強くなれるのかといえば、麻雀好きの読者によると、1度だけでなく繰り返し読めば、必ず知識が身に付き麻雀に強くなれるとのこと。図を多用した漫画ならではの解説のため、教本よりもすんなりと頭に入ってくる点も好評です。
晴によって鍛えられ、メキメキと実力をつけていくミーコ。女流雀士を巡る陰謀や、派閥争いなどに巻き込まれつつも、持ち前の明るく楽天的な性格で乗り越えていきます。女たちの熱戦も見どころのひとつ。ストーリーを楽しみながら麻雀の腕を磨くことができる、まさしく一石二鳥の作品です。
『打姫オバカミーコ』については<『打姫オバカミーコ』は名言光る麻雀バイブル!戦術を学べる名作漫画が無料!>で詳しく紹介しています。
勝敗が描かれる作品において、スポーツ漫画などは敗者の悲壮感に胸を痛めることもあるでしょう。死力を尽くした戦いの先にある、爽やかさなどが見られた時、胸がすくような、寂しいような、何とも言えない気持ちを味わいます。
『ノーマーク爆牌党』は、まさしく麻雀スポ根漫画ともいえる作品。ギャグテイストの作品が多い中、本作はシリアス寄り。プロ級の腕前を持つ片山まさゆきの麻雀理論がふんだんに盛り込まれ、リアルかつ丁寧な闘牌シーンが見どころです。
- 著者
- 片山 まさゆき
- 出版日
雀荘「どら道楽」に通う大学生、鉄壁保、当大介、九蓮宝燈美(ちゅうれんぽとみ)は、麻雀仲間。ある日、3人の前に爆岡弾十郎という天才雀士が現れます。弾十郎は、麻雀界の3大タイトルを、その才を生かして思うままに獲得しますが、やがて腕を上げたライバルたちに、その座を脅かされるように。
本作の主人公は、天才雀士の弾十郎。奇跡的な強さを持ち、主人公ながら最強という、ラスボス的存在として、他のキャラクターの前に立ちはだかります。そんな彼が危機感を抱くほどのライバルとなるのが、保たち。負けても弾十郎に挑み続ける多くの雀士の姿にも胸が熱くなる、スポ根麻雀漫画です。ぜひお気に入りの雀士を見つけてください。
『ノーマーク爆牌党』について紹介した<麻雀漫画の頂点『ノーマーク爆牌党』がすごい!雀士の熱い名言ネタバレ紹介!>の記事もおすすめです。
麻雀は中国発祥という説もあり、役は耳慣れない言葉が多く、牌の呼び方も中国語のような響きを持っています。ルールは複雑で、一度見聞きした程度ではなかなか覚えられないもの。勝つための作戦以前の問題に、どう進めていいかわからない、という方もいらっしゃるでしょう。
片山まさゆきがブレイクするきっかけとなった『ぎゅわんぶらあ自己中心派』は、店野真澄太(みせのますた)が経営する、下北沢のフリー雀荘「ミスチョイス」を訪れた客とともに、主人公の持杉ドラ夫、律見江ミエらが麻雀を打つという1話完結のストーリーです。
- 著者
- 片山 まさゆき
- 出版日
基本的には麻雀漫画なので専門用語やルールなども当たり前に登場しますが、他の作品に比べれば少なめ。連載されていた1980年代に話題になっていた人物や、映画、漫画のキャラクターをパロディ化して登場させている、時事ネタを扱ったギャグ漫画なので、当時の世相を知りたい、懐かしみたいという方にも最適です。
ゲストキャラクターも気になるところですが、レギュラー登場人物のキャラクターが濃すぎるところも魅力のひとつ。幸運すぎるドラ夫、大学生お嬢様のミエ、オチ担当の店主真澄太の、底抜けに明るいやり取りで笑わせてくれます。
個性的なキャラクターが麻雀を打ちながら話をするだけで、何か面白い。卓を囲んだだけで、敵であるはずなのに妙な親近感が生まれるのが麻雀の魅力なのでしょう。麻雀がより身近に感じられる、1980年代の日本を映した1冊です。
『スーパーヅガン』は、とにかくツイていない豊臣秀幸を主人公とした、日常系麻雀コメディ漫画。タイトルの「ヅガン」とは、運がないという意味の「つかん」の最上級系としてつけられた造語。作中でも豊臣の負けっぷりに合わせ、たびたび登場します。
- 著者
- 片山 まさゆき
- 出版日
高校生の豊臣は成績優秀、品行方正という、他の生徒の模範となるような優秀な学生でした。ところが不良グループの織田、明智、徳川に目をつけられ、麻雀で負けてしまってから、運に見放されてしまいます。
大学生になってからも廃人同然の生活を送っていた豊臣。偶然再会した高校時代の友人、早見明菜に麻雀をやめるように懇願され、決別しようと意志を固めます。しかし、そう上手く事は運ばず、カモにされて借金は膨らむばかり。見かねた早見が麻雀を覚え、強運を発揮。勝ち続けた早見は、やめさせるどころか麻雀にのめり込んでいきます。
とことんツイていない主人公の豊臣と、ツキまくっているヒロイン早見という構図が、どこか哀愁を誘って笑ってしまう本作。学生が麻雀をしているという設定なので、アウトサイダー的な薄暗さは一切ありません。豊臣と早見の恋愛模様というラブコメ要素もありつつ、片山まさゆきの実体験も盛り込まれた麻雀シーンで読者を引き込んでいく作品です。
中国の歴史の中で、特に日本人に馴染があるのが、魏、呉、蜀の3国が覇権を争っていた時代でしょう。『三国志』として漫画やゲームの題材になることも多く、日本人にとっても馴染のあるエピソードも多いのが特徴です。
そんな『三国志』を題材に、キャラクターの性格を極端にデフォルメし、ギャグ漫画にしてしまった作品が、『SWEET三国志』です。おおむね『三国志』に忠実に作成されているものの、現代用語を多用し、時事ネタも飛び出す自由なもの。大まかな流れは把握できるため、楽しみながら『三国志』を知ることができます。
- 著者
- 片山 まさゆき
- 出版日
登場人物たちのキャラ付けが極端になっているところが最大の特徴。例えば魏の曹操は、ナルシストで人材コレクター。人徳の人といわれている劉備は、血筋は立派で部下は優秀、愛されキャラだけど、とにかく何もできない無能と、容赦ないキャラ付けがされています。
麻雀漫画紹介なのに、三国志じゃ麻雀関係ないんじゃないか、と思われた方もご安心を。この、何でもありの流れのせいか、片山まさゆき自身が描いた麻雀漫画のキャラクターたちが、本作にも登場。物語をさらなる笑いの渦へと落としていきます。
『三国志』を題材にした作品は数あれど、これほどまでに笑いに特化し、好き勝手にしながらも史実を捻じ曲げない作品も珍しいでしょう。笑って楽しめる、新感覚『三国志』、捧腹絶倒の面白さです。
プレイスタイルという言葉があるように、攻め、守りなど個人の得意分野に特化した戦法がとられるため、1つの競技にしても様々な戦い方が見られます。それは麻雀でも同様で、同じように見えても、やはり人によって異なるものなのです。
プロの競技麻雀の世界を描いた作品が『牌賊!オカルティ』。麻雀というと金銭を賭けるイメージが強いですが、競技麻雀では金銭のやり取りは一切行われません。賭け事としてではなく競技としてあるため、純粋な実力を試す場にもなります。
- 著者
- 片山 まさゆき
- 出版日
朧夏月はプロの雀士。攻撃的な闘牌を好んでいる、自称打撃系。麻雀界には数学的な効率や確率を信じる「デジタル派」が隆盛を極めていましたが、自身のカン頼みの麻雀を打つ「オカルト派」の存在に、どちらともつかない夏月は揺れ動きます。
本作は「デジタル派」と「オカルト派」という、競技麻雀のプレイスタイルの対決がみどころ。数学理論しか信じないクール系の梨積港と、独自理論と直感で生きる群鷗刈人(むれおかると)は、どちらかが間違っているとは言えないものの、そのプレイスタイルの違いが明確に表現されているところが面白いです。
どっちつかずの存在である夏月は読者の立場に近く、両方のプレイスタイルの良し悪しを吟味できるポジション。麻雀をあまり知らない方は、なじみの薄い競技麻雀の世界を、垣間見ることも出来るでしょう。三者三様のプレイスタイルの違いをぜひお楽しみください。
麻雀だけを題材にし、よくこれほど多くの作品を残したものだと、感心してしまう片山まさゆき作品。しかしその内容は少しずつ違っており、麻雀の奥深さを感じさせます。麻雀に興味を持ったら、必ず手に取りたくなる魅力にあふれた作品ばかりです。