人気作家・東野圭吾の小説は、映像化される作品の多いことでも知られています。ここでは、映画やドラマは見たことあるけど小説は…。という方でも、気軽に読み始めることができる小説をご紹介していきます。
1958年、大坂生まれの作家、東野圭吾。彼が、直木賞・柴田錬三郎賞・吉川英治文学賞などの伝統ある文学賞を受賞し、第一線で活躍し続けている理由は、どこにあるのでしょうか。
作家というと文系のイメージがありますが、大阪府立大学電気工学科卒業、日本電装(現・デンソー)でエンジニアとして働くなど、経歴を見てもわかるように理系の東野圭吾ならではの科学的・物理的なトリックで読者の興味をさらい、それに加えて、作中人物の心の動きや、まわりの人間関係における心理的な細かい描写に読者が惹きつけられるからでしょう。
また、その時代に問題になっている、医療や法律の問題を掘り下げる硬質で社会派のミステリー、人情に篤いヒューマンサスペンス、アーチェリーやウインタースポーツなどのスポーツを絡めたミステリーなど、多岐にわたる作風、つまり持っている引き出しの多さも魅力のひとつになっているのです。
作家デビューから30年を経ても色あせることのない東野圭吾の生み出す作品は、これからも注目され続けることでしょう。
脳移植により、自分の人格が変わっていくことを止められない青年の、恐怖と葛藤を描いた作品です。2005年に玉木宏主演で映画化され、2014年には神木隆之介主演でドラマ化もされた、東野圭吾が“唯一ひらめきのあった作品”と語る本格医療サスペンスです。
主人公・成瀬純一は、画家になることを夢見ながら、産業機器メーカーで働くごく普通の青年です。ある日部屋探しのため不動産屋を訪れた純一は、強盗と遭遇し拳銃で頭を撃たれてしまいます。目が醒めると、そこは病院のベッドの上。彼はそこで、自分に世界初の脳移植手術が行われたことを知ります。
- 著者
- 東野 圭吾
- 出版日
- 1994-06-06
退院後、純一は自分の性格が変わっていくのを止めることができません。大好きだったはずの恋人の恵と一緒にいても無意味に感じてしまい、絵のタッチも明らかに変わり、その変化は周りを戸惑わせるほどのものでした。しかし、元の成瀬純一もまだ彼の中には残っていて、自分がどんどん別の人間に変わっていく恐怖を感じ、いったい今の自分は誰なのかと苦悩します。
恵との距離が離れていく様子が切なく、純一の人格が徐々に消滅していく描写は、読んでいるこちらにまで焦燥感をあたえます。彼に移植された脳とは?彼がとった行動とは?
人の死とは、心とはいったいなんなのかを考えさせられる作品になっています。
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本作は、東野圭吾の作品にはめずらしい、ラブストーリーを描いたミステリーになっています。
主人公・敦賀崇史は大学時代、毎朝向かいの電車で見かける女性に恋心を抱きます。大学を卒業し、崇史と親友の三輪智彦は、揃ってコンピューターメーカーのバイテック社に勤務することになりました。
- 著者
- 東野 圭吾
- 出版日
- 1998-03-13
ひとつ目の物語では、足に障害があるため、どこかそのことをコンプレックスに思っている智彦から「彼女ができたから会ってほしい」と言われ、崇史は心から喜びます。ですが、紹介された智彦の彼女は、大学時代、名前もわからず恋い焦がれていた電車の彼女・麻由子だったのです。崇史はショックを受け、激しい嫉妬にかられる毎日を送ります。
ふたつ目の物語では、崇史は麻由子と同棲しており、仕事も順調。何ひとつ不満の無い生活を送っています。智彦とは同じ会社にいるものの、疎遠になっていました。小さい頃から親友だった智彦のことを、なぜか崇史はあまり思い出すことができず、自分の記憶に何とも言えない違和感を覚えます。
いったい真実はどちらなのでしょうか?なぜふたつの物語が存在するのでしょう?全ての謎が明らかになったとき、驚愕の真実が判明します。
山荘に集まった男女8人が、犯人は誰なのかと疑心暗鬼にかられていく様子を描いた作品です。ページ数も少なく、あまり小説が得意でない方でも、気軽に読めるミステリー作品になっています。
- 著者
- 東野 圭吾
- 出版日
- 1995-03-07
主人公・樫間高之は、婚約者の森崎朋美を交通事故で亡くしていました。事故から3ヶ月後、高之は、朋美の父・伸彦から“一緒に別荘に行こうと”誘われます。亡くなった朋美を偲ぶ為に集まろうというのです。こうして森崎家の別荘に集まった男女8人でしたが、逃亡中の銀行強盗犯が別荘に侵入し、8人は監禁されることになってしまいます。緊張感が漂う中、ついにメンバーの1人が刺されて倒れているのが見つかるのです。
ですが、状況的に銀行強盗犯に犯行は不可能。8人は、自分たちの中に犯人がいるのでは、と疑い始めます。
作品のあちこちに、ヒントとも呼べるようなセリフが多々あり、一緒に謎解きを楽しめるような作品になっています。犯人はいったい誰なのかを、予想しながら読むのも良いですし、素直に騙されてみるのも楽しいでしょう。
兄が殺人事件を起こしてしまい、加害者の親族となった主人公の心情を、丁寧に描いた名作です。2006年、山田孝之主演で映画化され、小説・映画共に大ヒットを記録しました。
主人公・武島直貴が高校3年生のとき、兄・剛志は金欲しさに空き巣に入り、強盗殺人まで犯してしまいます。両親がいないため、剛志が刑務所に入れられ、直貴は1人ぼっちに。事件のことは直ぐに広まり、学校にも通いづらくなった直貴は、学校を辞め、住んでいたアパートにもいられなくなります。
直貴を心配する剛志からは、月に1度刑務所から手紙が届くようになりますが、“殺人犯の弟”というレッテルはその後も直貴を苦しめ続けます。進学や就職、バンドのプロデビューなど、直貴が今度こそうまくいくかもしれない、と思う出来事がある度、殺人犯の兄のことが露呈し、頓挫してしまうのです。
- 著者
- 東野 圭吾
- 出版日
直貴は、自分を理解してくれる女性・由美子と結婚しますが、今度は娘が差別されるようになり、兄との絶縁を決意します。
殺人を犯した罪と罰は、決して加害者本人が刑を真っ当するだけでは終わらない、ということを痛感させられます。どうして人を殺してはいけないのか。そんなわかってはいるけど説明の難しい疑問に、明確な答えをくれる、胸がいっぱいになり、涙してしまう作品になっています。
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東野圭吾の作品をまだ読んだことのない方に、ぜひおすすめしたい作品1位は『秘密』です。日本推理作家賞を受賞し大ヒットした本作をきっかけに、東野は一気にブレイクを果たしました。1999年、広末涼子、小林薫主演で映画化。2010年には、志田未来主演でドラマ化もされた作品です。
杉田平介は、愛する妻・直美と小学5年生の娘・藻奈美と3人で幸せに暮らしていました。それがある日、直美と藻奈美の乗るスキーバスが崖から転落。藻奈美は奇跡的に命を取り留めましたが、直美は死亡してしまいます。
- 著者
- 東野 圭吾
- 出版日
直美の死を悲しんでいた平介ですが、意識の回復した藻奈美の体には、妻・直子の魂が宿っていました。2人は戸惑いながらも、表向きは親子として生活していくことを決めます。こうして、藻奈美の姿をした直美と、平介の秘密の生活がスタートしました。
やがて中学生、高校生と成長していく直美でしたが、平介と心のすれ違いが生じ始めます。そんな時、ずっと眠ったままだった藻奈美の意識が再び戻ってくるのです。
平介と直美の葛藤が、なんとも切ない物語ですが、先が気になりどんどん読めてしまう作品になっています。
東野圭吾のおすすめ作品を、ランキングにしてご紹介しました。東野作品は登場人物をリアルに描いているので、すぐに作品の世界に入り込むことができます。意外な結末に驚かされることも多く、とても魅力的な作品ばかりなので、読んだことのない方にもぜひおすすめしたいです。