仕事から帰った後、家事を終えてひと段落して。無性に泣きたい時、熱くなりたいとき、リフレッシュしたい時はありませんか?そんな時、大人でも感動できる漫画を紹介します。読めば一気に引き込まれて、泣けると話題の作品ばかりです。
2000件の出産のうち、約300件は何らかの難ありと言われており、出産は一回一回が奇跡とまで言われています。
そんな出産と日々向き合う産科医・鴻鳥 サクラの物語が描かれた作品『コウノドリ』。年齢や性別問わず、すべての方におすすめできる感動漫画です。
- 著者
- 鈴ノ木 ユウ
- 出版日
- 2013-06-21
2~5話でひとつのエピソードが終わるのですが、どのお産も命がけ。妊婦をはじめ、サクラ含む医師たちも必死になって赤ちゃん誕生のために手を尽くします。それぞれの赤ちゃんとの対面までがリアルで、空気感が伝わってきます。作中で描かれる赤ちゃんが生まれる瞬間はまさに奇跡を見ているようで、涙が止まらなくなるでしょう。
赤ちゃんが無事に生まれるのは当たり前、という確実な安全を求められる医療の現場の裏側も描いており、現役の医師や助産師など関係者からも大きな共感を呼んでいます。
また、2015年にドラマ化され、大きな話題を呼びました。これをきっかけにまとめ買いした方も多いでしょう。1巻だけ手に取ってみて、まずは気になるエピソードだけ読んでみるのもよいかもしれません。
『コウノドリ』に関しては「漫画『コウノドリ』に感動!泣けるエピソードを最新24巻までネタバレ紹介!」で詳しく解説しています。
『羊のうた』の主人公は、高校生の高城一砂(たかしろかずな)。彼は幼い頃に母を亡くした後、父の友人である江田夫妻の家で暮らしていました。
1つ年上の姉・千砂(ちずな)と父は2人で暮らしていましたが、一砂は別れて暮らすようになってから一度も会ったことはありません。
ある日、一砂は美術室で赤い血のような色を見たとき、突然具合が悪くなってしまいます。ソファで休んでいたときに、父や姉とともに暮らしていた幼い時の夢を見ました。
目を覚ました一砂は、十数年ぶりにかつて家族で暮らしていた家を訪れます。その家で出会ったのは、一砂の姉・千砂でした。
- 著者
- 冬目 景
- 出版日
- 2009-10-23
主人公の一砂は、母を亡くし父や姉と離れて暮らしてはいますが、それ以外は至って普通の高校生です。もちろん本人も、自分が何か特別なものを持っているなどと思ったことはありません。しかしそれも、「高城」の家に伝わる病のことを知るまでのことでした。
それは、他人の血を欲し、欲望のままに人を襲ってしまうという病気。まるで吸血鬼のような奇妙な症状に悩まされるのです。高城の家に生まれる女子はこの奇病に冒されることが多く、一砂の姉である千砂もまた、病に侵されていたのです。
抗えない病に冒された一砂や千砂の葛藤が、美しい絵で表現されています。また、描かれる葛藤がメインの2人だけではなく、彼らの周りにいる家族や友人の思いも描かれているので、複雑な人間関係とともに奥深いストーリーが展開されていきます。
全体的にシリアスな雰囲気が続き、笑える要素はあまりありません。しかし、それでも暗くなりすぎず最後まで引き込まれるのは、本作が美しい絵で描かれるヒューマンドラマであるからでしょう。笑いよりも重厚なストーリーを楽しみたい方は、ぜひチェックしてみてください。
『羊のうた』に関しては「漫画『羊のうた』が欝展開なのに美しい!最終回までの魅力をネタバレ紹介!」で詳しく解説しています。
努力している人ほど、その努力を表に出すことはなく、何でもないように笑っているもの。苦労している人もその苦労を態度に出すことはなく、泰然として穏やかな人が多いように思えます。その奥にある思いはどういうものなのか、一見しただけでは窺い知ることはできません。
『人間仮免中』は、本当にこんなことが現実に起こるのか、というほど壮絶な人生を描いた自伝コミックエッセイです。作者の卯月妙子が体験したことが赤裸々に描かれていますが、包み隠さずという言葉を体現したような状態なので、あまり現実味を感じられないかもしれません。
しかしこれは、実際に彼女が経験したこと。その事実を知ると、面白いという感情よりも、複雑な気持ちになるのです。
- 著者
- 卯月 妙子
- 出版日
- 2012-05-18
20歳で結婚したものの、夫が経営していた会社が倒産。ホステスやストリッパー、AV女優など、身体を張ってお金を稼いできたものの、夫は投身自殺を図り、帰らぬ人となってしまいました。自身も統合失調症を患っており、2004年に自殺未遂、その後も入退院をくり返します。
卯月妙子の転機は36歳の時。25歳年上のボビーと出会い、恋をしました。そうは言っても、人生が大きく変わるわけではなく、その後投薬を怠ったことで歩道橋から落ちるなど、簡単には穏やかな生活をおくることはできません。
しかし、どん底にいて死にかけていても、彼女は生きています。彼女の生に対する貪欲さは称賛されるべきものです。読者はいい加減穏やかに生活してほしい、と幸せを願わずにはいられません。
圧倒されるような描写が多い作品です。統合失調症の症状が出ている時の状態も克明に描写されているため、卯月妙子が見えている世界をより身近に感じることができるでしょう。
影響されやすい方はご注意ください。元気のある時に手に取ることをおすすめします。
『人間仮免中』に関しては「『人間仮免中』がすごい!還暦の恋人ボビーとの純愛に泣ける【ネタバレ注意】」で詳しく解説しています。
自分の育ての親が、本当の親じゃなかったら……。こう考えたことはありませんか?
『うさぎドロップ』を読めば、血のつながった親子だけが「家族」ではないのだ、と気づくことになるでしょう。
30歳独身男のダイキチは、祖父の葬式で6歳の女の子・りんに出会います。なんと、彼女は祖父の隠し子でした。親族から疎まれ、やむにやまれぬ事情を抱えた彼女をダイキチが引き取って育てることとなります。こうして、てんやわんやの育児生活が始まります。
- 著者
- 宇仁田 ゆみ
- 出版日
- 2006-05-19
最初は心許なかったダイキチが、ここぞというときにりんのために懸命になる姿に、何度も目頭が熱くなります。
5巻から後は少し飛んで彼らの10年後を描いており、りんは16歳に成長。幼なじみだった悪ガキのコウキはイケメンに成長し、彼らの高校生らしい恋愛模様も始まります。
ダイキチとりんの関係に対する周囲の反応やりんの本当のお母さんとの関係、ダイキチ自身の恋、成長したりんの恋など、最後まで目が離せません。
ちなみにこの名作もスマホアプリで無料で読むこともできます。変化するふたりの成長の物語をぜひご自身の目で見ていただければと思います。
『うさぎドロップ』に関しては「『うさぎドロップ』結末が賛否両論?ラストはなぜああなったのか考察【無料】」で詳しく解説しています。
錬金術という技術が存在する世界。『鋼の錬金術師』は、死んでしまった母親を蘇らせるために行った禁忌の技「人体錬成」によって体を失ってしまった兄弟の物語です。
高名な錬金術師を父親に持つ兄のエドワード(愛称はエド)と弟のアルフォンス(愛称はアル)は、病死してしまった母親を蘇らせようと禁忌の技に手を染めてしまいます。類まれな錬金の才能を持った彼らでしたが、人体錬成は失敗。母親とは呼べない無残な姿で蘇らせてしまうのです。
そしてその代償も大きく、エドは左脚を失い、アルは身体全てを失ってしまいました。アルを失うことを恐れたエドは、錬金術で自身の右腕を代価として甲冑にアルの魂を定着させることに成功します。
彼らは失ってしまった弟の肉体を取り戻すため、冒険の旅にでるのです。
- 著者
- 荒川 弘
- 出版日
死者を蘇らせようとして失敗してしまうというお話は、昔話やいろんな物語で使われるテーマです。やはりこの作品でもその行為は失敗に終わり、大きな代償を伴ってしまっています。物語全体に、こういった死生観を示唆する内容が散りばめられているのも本作の特徴なのです。
死生観とは、死によって生の意義を考えること。錬金術によって死者を蘇らせてしまえば「死」というものの意味が揺るぎ、「生」への渇望や喜びが失われてしまう……そういった意味を含んでいるのかもしれません。実はこういった死生観の捉え方は、作者自身の経験が作品に影響を与えているそう。
冒頭で罪の十字架を背負ってしまったエドとアルの物語は、決して不幸なだけではありません。
国家に認められた錬金術師として活躍するエドの成長も少年漫画らしい明るい要素で、加えてアルの可愛らしさも特筆すべき点です。いかつい鎧姿と少年らしい純粋な性格のギャップが生み出します。その落差が、シリアスな展開の多い物語のなかで、適度な笑いを提供してくれるのです。
少年漫画の傑作中の傑作。ぜひ、この機会に読んでみてください。
『3月のライオン』は将棋を題材とした漫画です。将棋と聞くと難しそうという印象がありますが、将棋をまったく知らなくても楽しめます。また、地味だと思われがちな将棋のイメージを覆す、格闘漫画のような熱い闘いと人間ドラマが描かれています。
前作でおなじみの羽海野チカらしいあたたかな人間味や優しさと、天才棋士の孤独と才能という、「静と動」ともいえる真逆の要素で進んでいく作品です。その「動」の部分は、衝撃の始まりと目に焼きつくようなシーンで描かれています。
- 著者
- 羽海野 チカ
- 出版日
- 2008-02-22
幼い頃に両親を亡くし、「将棋の家の子」として育てられた天才高校生棋士・桐山零。育ての父の本当の子供たちからは疎まれ、学校でも友人はおらず、すがれるものは将棋しかない孤独な彼。身も世もないほどに将棋に全てを注ぎます。そんな彼が一人暮らしを始めた先で出会ったのは、隣町で和菓子屋を営む川本家の3人姉妹でした。
一見大人しそうな零は、内にどう猛な衝動や気持ちを抱えています。孤独感と敗北への恐怖、幼少期から染みついた負のエネルギーが、彼を将棋へとのめりこませていたのでした。将棋は孤独な彼の唯一の逃げ場所だったのです。
ひとりで抱え込む傾向のある彼を心配する人も周囲にいたのですが、彼はそんな声に気づけていませんでした。しかし、川本家3姉妹との交流を通じて、人の優しさと温かさを知ります。その気持ちで溢れた彼の心は、いつしか自分も人を守りたいと思うようになるのです。
不器用で臆病だった彼が人と出会い、成長していく様子に胸が熱くなる名作漫画です。
『3月のライオン』に関しては「漫画『3月のライオン』14巻までの見所を全巻ネタバレ紹介!」で詳しく解説しています。
「人生」を描くマンガ家戸田誠二の傑作『スキエンティア』は、30~40ページの短編が7作収録された短編集です。
外れの作品はひとつもありませんが、その中でも夜を越えるために是非とも読んで欲しい大傑作「ボディレンタル」と「覚醒機」をご紹介します。
「ボディレンタル」
自殺願望者の女性、篠原香織が主人公。夢も目標もなく、頑張って生きることに疲れた彼女が「自殺」とネットで検索すると、「自殺願望者募集!」というページを見つけました。
「全身マヒの女性の医学的サポート」という仕事に応募してみると、書類審査を通過し、面接に進むことに。
巨大IT企業の元社長を名乗る老婆に、3000万で身体をレンタルさせてくれと頼まれる香織。老婆の脳波を飛ばして、遠隔で香織の身体を使って働くと言うのです。
香織は即答で仕事を受けます。
香織の身体を得た遠藤は、IT企業創業者としての知識を活かし、ITベンチャー企業で1ヶ月限定のアルバイトをすることに決めます。普通、未経験者がIT企業で、1ヶ月限定で働くということはありませんが、遠藤は人脈を駆使して仕事を決めたわけではありません。あくまで、香織として面接を通過するのです。香織自体に実績はありませんが、面接で、給料の3倍働くと自信をもって答えた表情を見て、社長は採用を決定します。
香織は、遠藤が働く様子を、映画でも観るように感じます。生きる意味を仕事に見出した人間の最後の仕事を体験するのです。
生きる、というより、生ききるということを教えてくれる短編マンガです。
- 著者
- 戸田 誠二
- 出版日
- 2010-01-29
「覚醒機」
30歳の売れないミュージシャンの相澤は、同世代の同じく売れないミュージシャン田島から、脳の働きを活性化させる機械の被験体にならないかと誘われます。その機械を使うと、画期的で斬新な詞やメロディが浮かぶというのです。
説明を受けにいったふたりは、使用後7~8年で亡くなるが、世の中に何かを残せる可能性は非常に高くなると告げられます。
音楽以外に何もないという田島は使用を決意しますが、相澤は使用に踏み切ることができません。
機械を使った田島はヒットアルバムを量産し、相澤はサラリーマンになります。
数年後、結婚をし、子どもができた相澤の元に、田島から会いたいというメールが届きます。
ミュージシャンもマンガ家もビジネスマンも、クリエイティブな世界で、目標を持って生きている人は、本作のような機械があるなら使いたいと思うこともあるのではないでしょうか。寿命が7~8年になるなら使わないけれど、20年なら?30年なら?使いたいという人はいるだろうと思います。
でも、本当に大切なのは、年数なんかじゃなくて、「丁寧に生きる」ことなんです。そのことをこの作品から教えられました。
「丁寧に生きれば、返ってくる」
そう思えたら、きっと夜を越えられるでしょう。
エロマンガのようなタイトルですがまったくエロくない本作は、普遍的な人の弱さを描いたルポマンガです。作者は気持ち的に底の方までいっていますが、程度の差はあれ、生きることにしんどさを感じたことのある人は共感できるでしょう。
「何があっても私を認めてくれる居場所」
「自分には〇〇する資格がない」
上記のようなことを考えたことのある方もいるのではないでしょうか。「何があっても私を認めてくれる居場所」なんてないと言う方もいるかもしれませんが、あった方がいいし、ないとやっぱりしんどいと感じてしまう人もいると思います。
「自分には〇〇する資格がない」というのは、特に真面目な人ほど陥ってしまいがちな思考でしょう。幸せになる資格がない、楽しむ資格がない、生きる資格がない。真面目だったり、自信が持てなかったり、自分のことを好きになれなかったりする人はそんな風に考えてしまったこともあるのではないでしょうか。
本作が優れているのは、上記のようなキーフレーズだけ拾ってみても、自分も!と共感できるところ。その裏には、自分の内面の深いところに潜っていく分析と、非常にストレスと労力と時間がかかる言語化という作業が垣間見えます。
ラブソングを書くシンガーソングライターに近いものがあるかもしれません。恋する人に刺さるワンフレーズを考えることと、さびしさやしんどさを抱える人、そして何より自分を救うために分析と言語化を進めること。本作は生きづらさを抱える人たちに刺さるラブソングのようなものかもしれません。
負のスパイラルに陥った作者は、その後、過食などが原因でバイトをクビになり、医者からは自宅療養をすすめられ、まわりの人からは頑張りを認めてもらえず、死んだ方が楽だとさえ考えるようになります。そういった経験を丁寧に描いていることが共感を呼ぶのでしょう。
- 著者
- 永田カビ
- 出版日
- 2016-06-17
週5でバイトをして、貯金を100万するというのはどん底の状態にあった作者からするとかなり凄いことだと思いますし、そうでなくても、20歳そこそこで100万貯めるというのは凄いと思う同世代も少なからずいるでしょう。それでも両親からは認めてもらえません。
「常に焦っていて苦しくて
いつでもどこでも何か居心地が悪かった」
上記のような言葉もしんどいと感じている人には響くのではないでしょうか。
この作品を読むことで、しんどいのは自分だけじゃないと思えたり、言語化できない漠然とした不安感を言語化してもらえたりするでしょう。そのまま「救い」にはならないかもしれませんが、「救い」への一歩にはなるかもしれません。
作者は、徹底した分析、言語化、人とのつながり、そしてレズ風俗での経験などを経て、漫画を描きたい自分と出会います。そして生きる力「甘い蜜」を手に入れるまでに至るのです。
何のために生きているのか、何によって自分の心が満たされているのかわからない方は、作者の辿った軌跡を読むことで、ヒントをつかめるかもしれません。
寂しい人、しんどい人、生き苦しい人は是非読んでみてください。本1冊分の救いは間違いなくあります。
7年ぶりに種子島を訪れた直人は、「灯台の白い少女」の噂を耳にします。直人には心当たりがありました。
7年前、高校2年生の時に種子島の高校に転校してきた直人は、泳げないにも関わらず水泳大会への出場依頼を受けてしまい、ひとり、海で泳ぎの練習をしていました。練習で溺れた直人を助けたのは一学年上の深月でした。
直人は深月に泳ぎを教えられ、徐々に成長していきます。それと同時に、ふたりの距離も縮まっていって……。
- 著者
- 降本 孟
- 出版日
- 2017-03-10
ネタバレになってしまいますが、深月は直人と過ごした夏に亡くなります。序章でも深月の遺影のコマがあることから、深月の死自体は、この物語の大ネタとは言えません。
初めて好きになった年上の素敵な女の子が死んでしまって幽霊になって出てきた、と書くと、ベタベタな話だと思う人もいるでしょう。間違っていません。本作は非常にベタです。ただいい意味でベタで王道なので、青春恋愛マンガ好きの心をストレートに揺さぶるのです。
王道な青春恋愛マンガは星の数ほどありますが、その良し悪しを分けているのは何かというと、持論になりますが雰囲気の描き方でしょう。絵の美しさ、構図、セリフ、それらが見事に融合して、二度と戻ってこない夏の日をキラキラと描き出しているのが本作最大の魅力。1巻でスマートにまとめた構成力も素晴らしいと思います。
二度と戻ってこないからこそ美しく、ありえない奇跡だとわかっていても泣けてしまう。王道青春恋愛マンガ好きにぜひ読んでいただきたい、2017年イチオシの泣けるマンガです。
今の自分は子供の時に描いた夢の通りになっていますか?
宇宙飛行士になった人気者の弟・日比人と、就職して夢を諦めかけていた兄・六太。『宇宙兄弟』は、そんな彼らが幼い頃に一緒に見ていた「宇宙飛行士になる」という夢を叶えるために、奮闘していく物語です。
- 著者
- 小山 宙哉
- 出版日
- 2008-03-21
一緒にJAXAの試験を受けて宇宙飛行士になっていく仲間たちは熱く、イキイキしているキャラクターばかり。どの登場人物も頭がよくて行動力がありますが、それ相応に迷いや悩みを抱えています。読者は、応援しながら読み進めたくなるでしょう。
迷いながら、諦めたくなりながらも宇宙飛行士を目指していく六太たち。夢に向かってひたむきな彼らが発するセリフは、熱くて胸がいっぱいになります。
主人公の夢だけでなく、多くの人の夢も引っ張るように宇宙へと飛ぶロケット。大人になっても熱い夢を持つ彼らの姿がかっこよく描かれた作品です。
『宇宙兄弟』に関しては「漫画『宇宙兄弟』最新34巻までの見所を名言でネタバレ紹介!」で詳しく解説しています。
『海街diary』は、身寄りのないすずが3姉妹のところへやってくるところから始まります。父が亡くなり、葬式で3姉妹は異母妹のすずと出会い……。
その後、4女として迎えられたすず。こうして、それぞれ性格が異なる4姉妹の生活がくり広げられます。
- 著者
- 吉田 秋生
- 出版日
- 2007-04-26
父が不倫してできた異母妹のすずは罪悪感に駆られています。しかし周囲を巻き込んで物事を解決に導く、強くしなやかな性格のため、前に進んでいくことができるのです。
また、実はしっかり者で世話焼きの長女が不倫をしているなど、それぞれ複雑な状況を抱えています。四者四様の恋愛・結婚・家族のあり方が静かに、穏やかに描かれていくのです。
不倫や異母妹と聞くとドロドロしていそうな雰囲気ですが、そのさらりとした流れが内容を重くさせません。さらりとしているのに、当たり前に日々を過ごしている登場人物たちが発するセリフが、深く胸に響きます。
安藤は幼い頃からサッカーが好きで、才能もありました。しかし中学時代に自分より格上の選手とあたり、自分で努力の限界を決めてしまうのです。そんな時、サッカー女子日本代表の四季が彼の前に現れます。彼女は見知らぬ人であるはずの安藤になぜかついてくるのですが……。
『1/11じゅういちぶんのいち』は、サッカー選手の安藤を取り巻く周囲の人物からの視点で描かれた漫画です。
- 著者
- 中村 尚儁
- 出版日
- 2010-12-03
中学生から成人してプロとして活躍する姿までを描きます。サッカーを題材にはしていますが、その内実は人間ドラマ。周囲の内情をひろいながら安藤の姿が浮かびあがってくる構成です。
ヒロインの四季に出会ったことで再度サッカーへの情熱を燃やし、夢に向かっていく安藤。高校で入部希望者がいなくても、怪我で周囲からの期待が落ちても、絶対に諦めることはありません。その姿はチームメイトはもちろん、彼と関わる人みんなに、自身の問題と向き合う強さを与えてくれます。
彼のひたむきな姿、そしてヒーローになれなかった周囲の人物たちの諦めない姿はビター。大人泣きすること間違いなしの感動漫画です。本作で、青春を思い出してみてください。
公生は幼少期からその精確な演奏の腕前から将来を期待されたピアニストでした。しかし、母親が亡くなってしまったトラウマから、ピアノを弾けなくなってしまいます。そんな時に現れたのがヴァイオリニストのかをり。その演奏と同じく自由な彼女に影響され、公生は再びピアニストとしての道を選ぶのですが……。
『四月は君の嘘』は、音楽を通して少しずつ深まっていく2人の絆が描かれた作品です。
- 著者
- 新川 直司
- 出版日
- 2011-09-16
公生は母が亡くなった直後もコンクールに出場していました。亡くなる前に母にひどいことを言ってしまった彼。そして彼女に対する悪いイメージのまま、ピアノを弾くのです。それは、正確さだけで弾かれる、ロボットのような演奏でした。
そのまま演奏を続けるうちに、だんだんとピアノの音が聞こえなくなってしまうのです。その一連の流れは痛々しく、胸にずっしりと重く響きます。
本作で物語の鍵となるのは、公生のトラウマ。それは母とのエピソード以外にも終盤である意味を持ちます。最後にトラウマを乗り越える彼の姿は非常に感動的です。
悲しみと感動、2種類の泣きどころがあります。トラウマを乗り越える少年の成長に感動できる名作です。
どんなに人気の俳優でも、今や知らぬ人のいない作家でも、生まれた時から有名だったわけではありません。小さなころから、何らかの才能の欠片を持っていた人もいるでしょう。
多くの人は大人になっていく数十年で、自身の才能を育てます。そこには、かならず師となる人が存在するのです。
『かくかくしかじか』は、人気漫画家の東村アキコの幼年期から、漫画家になるまでを描いた、感動エッセイ漫画です。
- 著者
- 東村 アキコ
- 出版日
- 2012-07-25
漫画家デビュー後の話も描かれていますが、比重が置かれているのは、美大の受験時期に出会った先生とのエピソードです。
彼女は、金沢美術工芸大学の出身。美大に入学するには、絵を誰かに習わなければならない、というのが一般的なイメージですが、東村アキコも受験にともない美術教室に通いました。そこで出会ったのが、日高健三先生。
日高先生は、絵の事しか頭にないというほど、生粋の絵画バカという人物でした。生徒が描いた絵が下手だとはっきりと口にし、スランプで描けないと嘆く生徒に向かっては、容赦なくキャンバスに顔面を押し付けるという乱暴っぷりを見せます。常にジャージに竹刀を携えていて、逃亡する生徒の首根っこを掴み、引きずりながら連れ戻すなど……およそ現実とは思えないような描写は爆笑必至です。
そんな日高先生との爆笑エピソードのインパクトが強すぎる本作。ただ、巻を追うごとにしんみりとした空気が漂います。特に、東村アキコが若さゆえにとってしまった行動には、共感する人も多いでしょう。懐かしい時間と人を思い出した時、少しだけほろ苦い記憶も掘り起こされる、そんな作品です。
『かくかくしかじか』に関しては「『かくかくしかじか』の名言全巻ネタバレ紹介!東村アキコと日高先生の絆とは」で詳しく解説しています。
石田は小学生時代に耳の聞こえない硝子をいじめていました。しかし、その後1番の加害者として吊しあげられてしまい、今度は彼がいじめのターゲットになってしまいます。心優しい硝子は彼を心配しますが、そのまま転校してしまいました。
彼は中学、高校になってもいじめの影響でひとりぼっちでした。しかし硝子と再会を果たしたことをきっかけに、彼の日常は少しずつ変わっていき……。
『聲の形』は、障がいがある少女と、過去の自分と葛藤する男子のかかわりを丹念に描いた作品です。
- 著者
- 大今 良時
- 出版日
- 2013-11-15
石田は硝子に会ったら、いじめたせいで壊してしまった補聴器を弁償しようと、アルバイトでお金を貯めていました。そして彼女に会って、謝罪が終わった暁には死のうと考えています。
自分だけが悪かったわけではないのに受けた理不尽ないじめ。人気者から一気にひとりぼっちになってしまったことや、長年の苦しみの圧力によって、彼の心は空っぽになっていました。
そこに硝子の優しさが沁みていきます。石田は、いじめていたという後ろめたさから、うまく話ができません。時には苛立ちを彼女にぶつけてしまうことさえあります。しかし、どんなときでも彼女は彼を責めようとしませんでした。
過去の後悔と痛い青春に共感する名作漫画です。
『聲の形』に関しては「漫画『聲の形』の魅力をネタバレ徹底考察!伝えたい焦りと伝わらない口惜しさ」で詳しく解説しています。
母親が何者かに殺された主人公が、18年前にタイムリープして事件の真相を明らかにしていくというミステリー漫画『僕だけがいない街』。悲惨な未来を変え、大切な人を救いたいという主人公の強い思いに心が動かされる作品です。
主人公の藤沼悟は漫画家になるという夢を長年持ち続けながら、ピザ屋のバイトで生計を立てる28歳。そんな悟には、悪い出来事が起こるかもしれないと察知すると、その数分前に戻って、過去をやり直せるという能力がありました。彼はその能力を使い、人知れず数々の事件や事故を防いできたのです。
- 著者
- 三部 けい
- 出版日
- 2013-01-25
あるとき、悟の母親が何者かに殺される事件が起こったことがきっかけに、悟は18年前の小学5年生だったころにタイムリープしてしまいます。悟が小学生のころ、同級生が謎の死を遂げる事件が起きていました。小学生に戻った悟は、母や謎の死を遂げる同級生を救うため、真犯人を探しはじめます。
とにかく「謎」ばかり、という印象。「悟と同じピザ屋で働く女子高生・愛梨はなぜ悟に近づくのか?」「なぜ悟の母は殺されなければならなかったのか?」「そして悟はなぜ小学生に戻ったのか?」このような、多くの謎に包まれながら、悟は小学生の姿で少しずつ事件の真相に迫っていきます。
物語は、後半から急展開を迎えます。前半で「謎」だったものが明らかになり、事件や事件の犯人の過去が見えてくるのです。悟は母や仲間に対する強い思いを胸に、真犯人に立ち向かいます。そんな悟のヒーローのような行動がかっこよく、また隠された真実が知りたくて最終巻まで一気に読みたくなってしまう作品です。
過酷な未来を変えるため、姿の見えぬ相手に挑み続ける悟の姿に胸を打たれるはずです。最後の場面まで見逃せないストーリー。典型的な「泣けるマンガ」ではない作品を読みたい方におすすめです。ぜひ手にとってみてください。
大人になればなんてことはない病気でも、子どもにとっては脅威となることがあります。子どもはそれだけ弱く、庇護されなければならない存在。しかし、生活していくためには働かなければならず、病気の子どもを抱えて右往左往する人もいるでしょう。
『37.5℃の涙』は、新米の病児保育士を主人公とした物語です。子育てをした事がない人には、あまりなじみのない職業でしょう。保育所や小学校に通う児童が病気になったとき、仕事を休むことができない親の代わりに、病気の子どもの世話をしてくれるのが、病児保育士です。単純に面倒を見るだけではなく、病状が悪化しないか見ていないといけないこともあり、高い観察力と対応力が必要とされます。
- 著者
- 椎名 チカ
- 出版日
子どもが病気になったとき、保育所に行くことができるぎりぎりの体温が、37.5度。それを超えると、預かってもらうことができなくなるのです。そんな時、頼りになるのが病児保育。主人公、杉崎桃子は、新米の訪問病児保育士として働いています。少し感情表現が苦手で笑顔が怖いのが玉にきずですが、病気の子どもや頼るところのない両親のため、奮闘していました。
基本的には桃子と病気の子ども、その親を中心とした連作短編のような構図で物語は進んでいきます。子どもたちは生意気なときもありますが、隠された本音はとても素直でいじらしいもの。病気を早く治して、安心させてあげたいという想いに、胸がきゅんと締め付けられるような切なさを覚えます。
桃子の成長物語でもある本作。子どもとの交流にハラハラさせられますが、それ以上に、読者に衝撃を与える事実が明かされました。彼女の隠されていた過去が絡み、物語はより重い展開へ。さまざまな親子の形に、病児保育だけでなく、育児全般について深く考えさせられる作品です。
人はいずれ生をまっとうし、静かな眠りにつきます。寿命は人それぞれですが、病気などの場合なら、自身も周囲も心構えをすることができます。しかし、突然大切な人を失った場合は、同じようにはいきません。喪失感を胸に、その人が突然いなくなった時間を生きていかなければならないのです。
表題作「かへ」は、寒さの厳しい田舎の港町から物語が始まります。漁に出る老年の男源じいさん、その夫を出迎える妻のトメばあさんは、小さな定食屋を1人で切り盛りしていました。老夫婦の今後を話し合って、少しの言いあいをして。代わり映えのない、穏やかな日常の中に突然鳴り響いた電話は、2人の運命を大きく変えてしまいます。
電話は、1人息子である龍太の死を告げるものでした。交通事故で突然両親を亡くした孫2人を連れて帰ろうとした2人ですが、龍太が都内で経営していたカフェに立ち寄ります。多くの人に愛される店を営んでいた息子の意志を汲み、源じいさんとトメばあさんは、息子のカフェを引き継いで経営することになりました。
- 著者
- ["藤井組", "山本 揚志"]
- 出版日
1人息子を失った田舎の老夫婦が、東京に出てカフェを営んでいくという本作。主人公は老夫婦という異色の作品です。源じいさんとトメばあさんは訛りがひどいのですが、言葉に温かみが感じられ、穏やかな口調がクセになってしまいます。タイトルの「かへ」とは、彼らが言うカフェのことです。
亡くなった龍太との思い出、東京で店をやっていくことの世知辛さなど、次々と試練が老夫婦を襲います。しかし、苦しみながらも生きていく姿に、寒さの厳しい地方で育った人の我慢強さが感じられる作品です。
自分たちが知らなかった息子の姿に触れ、それがふと自分たちの知る姿と重なったときの、胸を締め付けられるような喪失感に、つい涙があふれてきます。しかし、悲しい物語ではありません。人は、失った人たちを大切に想いながら、日々をしっかりと歩んでいくことができる……そう感じられるでしょう。
コーヒーを読みながら、ゆったりと作品世界に浸りたくなる、癒し効果も抜群の一冊です。
『うしおととら』の主人公は、中学2年生の蒼月潮(あおつきうしお)。彼は500年以上の歴史を持つ寺の息子でした。寺の住職でもある父親から、毎日のようにお化けだの妖怪退治とホラ話を聞かされることにうんざりしていました。
その日も、父親からお化けの説教をされ、それに潮は反抗します。あっさりと返り討ちに合い、蔵にある本の虫干しを命じられてしまいました。渋々蔵の中へと行く潮でしたが、偶然、蔵にあった地下室に落ちてしまいます。
そこで潮が見たのは、槍に貫かれて動けなくなった妖怪・とらでした。とらは潮に槍を抜くように迫りますが、父親の言っていた妖怪退治の槍の話を思い出した潮はそれを拒み、地下室から逃げ出します。とらの妖気に引かれてやってきた妖怪たちにより、周囲の人間に危険が迫っていると知った潮は、とらとある約束をして槍を抜くのですが……!?
- 著者
- 藤田 和日郎
- 出版日
主人公の潮は中学2年生。歴史ある寺の息子で、嘘が嫌いで正義感の強い真っ直ぐな性格です。少年漫画の主人公らしく、妖怪・とらの封印を解いてしまってからは数々のバトルのなかで成長していきます。
そんな彼に封印を解かれたのが、「とら」という妖怪。「とら」は潮が付けた呼び名で、その正体は2000歳を超える大妖怪です。同じ妖怪をも恐れさせるほど強い力を持ち、最初は潮を喰ってしまうつもりでしたが、潮と日々を過ごすうちにだんだんと考えが変わっていきます。
各キャラクターに魅力があることはもちろんですが、潮ととらの2人がコンビを組むことでさらに物語を盛りあげていきます。さまざまな妖怪とのバトルを通して、主人公の潮が強くなっていくのはもちろん、2人の関係がどんどん変化していく様子からも目が離せません。
ギャグや絵柄などに多少時代を感じて慣れない方もいるかもしれませんが、ストーリーの面白さは世代関係なく楽しめるでしょう。そして、コミックス全34巻に及ぶ長編ストーリーの中でくり返されるバトルはすべてクライマックスへと繋がり、集約されていきます。妖怪大活劇がどういうラストを迎えるのか、ぜひ手に取って確認してみてください。
『うしおととら』に関しては「漫画『うしおととら』の名言&名シーン徹底紹介!最終回のあの泣ける言葉も」で詳しく解説しています。
グルメ漫画『深夜食堂』の舞台は、深夜12時から朝7時まで営業している食堂です。固定のメニューは数種類だけ。あとはお客さんが食べたいものを言って、作れるものなら作る、というのが食堂のスタイルです。
「深夜食堂」を訪れる客は、実にさまざま。そのなかの1人に、ヤクザの剣崎竜がいました。見かけによらず、赤いタコさんウィンナーが好物です。ある日、彼は同じく食堂の常連客でゲイバーを営んでいる小寿々と言葉を交わすようになります。小寿々の好物は甘い卵焼き。2人は店で会うとおかずを交換するようになりました。
いつものように小寿々が卵焼きを食べながらお店で竜を待っていた時、暴力団の発砲事件のニュースが流れ……。
- 著者
- 安倍 夜郎
- 出版日
深夜食堂と呼ばれている「めしや」でマスターをしている男性の名前は作中で明らかにされていません。ただ、マスターと呼ばれています。彼は20年以上も年中無休で店を営んでいます。
基本的に1話完結型で、すんなりと読むことができます。また、都内にある食堂なので、常連客にはカタギではない人や水商売の人も多く登場。かといって派手な展開や裏社会のことが描かれているわけではなく、物語は静かに進んでいきます。激しい感動よりも、心が少しずつ温まってくる作品といえるでしょう。
食堂が舞台ということで、もちろんたくさんの料理が登場しますが、どちらかといえば料理は引き立て役。メインとなるのは、食堂のお客さんを中心にした人間ドラマです。じんわりと感動したい方におすすめの一冊です。
『BECK』の主人公は、14歳の田中幸雄。ある日、子供達にいじめられている縫い目だらけの犬を助けたことをきっかけに、不思議な男と出会います。その時は名前も聞かずに別れてしまいましたが、後日、幼馴染の石黒泉に誘われていったボウリングの帰り、偶然に再会しました。
彼の名前は南竜介という16歳の帰国子女。アメリカにいた頃は、全米で有名なカリスマバンドのダイイング・ブリードのギターとバンドを組んでいたという過去を持っていて……!?
- 著者
- ハロルド 作石
- 出版日
- 2013-12-12
主人公の中学生・田中幸雄、通称コユキは、平凡な毎日の中で暮らす自分をひどくつまらないもののように感じています。よくある心理描写ですが、多くの人が思春期に感じたことのある正体のわからないモヤモヤだからこそ、漫画のなかでもたびたび描かれ、そして共感を呼ぶのでしょう。
そんな彼が出会ったのが、南竜介。帰国子女で顔立ちも整っているイケメンですが、女グセが悪く、借りた金は返さないなど、16歳にしてえげつない男です。しかし、バンド活動に対する情熱は本物で、コユキを音楽の世界へと引き込むことになります。
平凡な中学生が音楽に目覚め、その才能を開花していくというストーリーは王道の展開ですが、才能と運だけでトントン拍子に進んでいくことはありません。むしろ現実の厳しさと戦いながら進んでいく主人公たちの姿はリアリティがあり、読み進めると同時にぐいぐいと内容に引き込まれていくでしょう。
ロックを知らない人でも、初心者から始めた主人公の目線から物語を見ることで、楽しむことができます。音楽好きはもちろん、詳しくない人にこそ読んでいただきたい漫画です。
『BECK』に関しては「漫画『BECK』6の魅力!あらすじ、最終回、名言をネタバレ紹介!【無料】」で詳しく解説しています。
仙台市に住む高校生の宮本大(みやもとだい)は、世界一のジャズプレイヤーを夢見て、毎日広瀬川の土手でテナーサックスを吹いていました。大は、学校では中学から続けているバスケットボール部に所属しています。3年の最後の試合を前に、バスケには身長や身体能力などの限界を感じる一方で、土手でサックスを吹きながら、音に限界はないと思うのでした。
バスケの最後の試合の後、大は中学の同級生である近藤周平を訪ねます。彼は、中学卒業記念に大をジャズ喫茶のライブに誘った人物でした。中学時代は高校に入ったらジャズピアノをやると言っていた周平でしたが、久しぶりに会った彼はすでにピアノを辞めており、医大に向けて勉強に励んでいました。そんな彼に、大は初めて自分のサックスを聴かせることにしたのですが……。
『BLUE GIANT』は、ジャズに青春を捧げる男たちの熱い物語です。
- 著者
- 石塚 真一
- 出版日
- 2013-11-29
主人公の宮本大は、中学から高校まで6年間バスケットボールに打ち込む一方で、ジャズに魅せられて独学でサックスを練習しています。高校最後の試合までダンクシュートを決められなかったと悔やむ大は、スポーツにはやはり身体的な限界があると感じていました。ただ、音楽にはそういった限界はないと信じています。とにかく音楽に一途で一生懸命な様子が物語の冒頭から伝わってきます。
音楽の世界で成功するのは一部の人間だけと誰もが思うでしょう。大の周りにも彼の夢を否定する人間がいますが、そんななかでも彼は諦めることも意志を曲げることなく、努力を怠りません。そんな姿は、読者に勇気を与えてくれます。
そんな彼のキャラクター性と、絵のなかから音が聞こえてくるような迫力ある演奏シーンはまさに本作の見どころ。ジャズ好きはもちろん、まったく詳しくない人も充分に楽しめます。元気を出したい時にぜひ読んでみてください。
『BLUE GIANT』に関しては「「ブルージャイアント」の素晴らしさを伝えたい!続編5巻までネタバレ紹介!」で詳しく解説しています。
井上芽衣子は、社会人になって2年目。同棲相手の種田成男との交際期間はもう6年になります。種田は新聞社の下請け会社でバイトをしながらバンド活動をしている男で、収入が少ないため芽衣子と一緒に暮らしていたのでした。
そんな彼に対して苛立ちを感じたり、仕事を楽しいと思えず嫌になったりしながらも、芽衣子は日々をやり過ごしています。そして、いたって平凡に、ややさえない顔をしながら暮らしていました。
しかし、そんな芽衣子と種田の別れはある日突然訪れて……。『ソラニン』は、切なさに胸が苦しくなる、大人向け青春漫画です。
- 著者
- 浅野 いにお
- 出版日
- 2005-12-05
主人公の芽衣子は秋田県の出身で、種田は福岡県の出身。2人とも地方から上京してきたという似たような境遇でした。上京当初こそ希望を持っていましたが、それもだんだんと失っていきます。
芽衣子は平凡で退屈な自分の人生に、少し嫌気がさしていました。とは言っても、何をどう変えればいいのか、まったく分かりません。
一方、種田はアルバイトをしながらバンド活動を続けていますが、やがてバンドに対する自信を失っていきました。そんな種田に芽衣子が本音をぶつけるようになり、2人はだんだんと変わっていきます。
生活するために働くものの、仕事に対する情熱があるわけでもなく、漠然と自分の将来に不安を感じる気持ち……。芽衣子と同じくらいの年代の方なら、共感できるでしょう。
彼らが人生に向き合う瞬間に、注目してみてください。
『ソラニン』に関しては「漫画『ソラニン』の魅力を徹底紹介!大人の入り口に立ったあなたにおすすめ!」で詳しく解説しています。
桃ヶ丘音楽大学に通う千秋真一は、世界的に有名なピアニストである千秋雅之を父に持ち、自身もピアノ科に所属するエリートでした。しかし、千秋が本当になりたいのはピアニストではなく、指揮者です。そのために留学したいという気持ちがありましたが、飛行機恐怖症のために海外に行くことができないのでした。
ある日、何もかもうまくいかず自暴自棄に深酒をした千秋は、そのまま酔い潰れて眠ってしまいます。目を覚ました時、彼が目にしたのはゴミ山の中でピアノを弾く、野田恵という女子学生でした。
『のだめカンタービレ』は、対照的な2人が織りなすドタバタコメディが楽しめる、本格クラシック漫画です。
- 著者
- 二ノ宮 知子
- 出版日
- 2002-01-08
有名ピアニストの父と資産家の母を持つ千秋。生まれも育ちもまさにエリートで、そのうえ容姿にも才能にも恵まれています。そのせいか俺様で高慢な性格ですが、なぜか本人が不本意に思っているうちに周りの人間の面倒を見てしまうお人よしなところもあるのです。
ピアノ、ヴァイオリン、指揮と何でもこなす天才ですが、その裏にあるのは人一倍の努力。それが嫌味に感じることもなく、むしろ読めば読むほど応援したくなるキャラクターといえるのです。
そんな千秋が出会うのが、野田恵(通称のだめ)です。千秋からたびたび「変態」呼ばわりされる彼女は、部屋はゴミ部屋で本人は風呂嫌い、人の弁当を盗み食いするなど……かなりインパクトの強いキャラクターです。しかし、どんな曲も聴いただけで弾ける才能は確かなもので、彼女の弾く自由で楽しいピアノは、読んでいるだけで思わず笑ってしまうような魅力があります。
のだめと千秋のラブコメ要素ももちろんありますが、それ以上に物語の中心になってくるのは、やはりクラシック音楽です。2人だけでなく、他のサブキャラクターたちが、音楽という厳しい世界の中で挫折したり苦しんだりしながら、それぞれのスタイルで音楽と向き合っていく姿が描かれます。その熱に、胸を打たれる方も多いでしょう。
登場するクラシック音楽も有名なものから、あまり知られていないものまでさまざま。もちろん曲を知らなくても十分に楽しめるように描写が工夫されていますが、実際に聴いてみるとまた臨場感が変わってくることもあるでしょう。実際の曲を聴いた後、もう一度読み返してみるのも面白いかもしれません。
広大な宇宙の中で、「自分とは何か」「愛とは何か」などの問いに頭を悩ませながら成長する主人公が描かれています。『プラネテス』はSFマンガでありながら、生きることの難しさや夢を追うことの素晴らしさを感じることができる作品です。
- 著者
- 幸村 誠
- 出版日
時は2070年代。火星に移住施設ができるなど、宇宙開発がすすめられています。その一方、廃棄された人工衛星やロケットの残骸などの「スペースデブリ」(宇宙のごみ)が軌道上に数多く存在することが社会問題となっていました。
本作は「スペースデブリ」の回収屋である星野八郎太、通称ハチマキを主人公として描かれています。
全4巻と比較的読みやすいですが、物語の内容は非常に重厚。宇宙開発の華やかな一面に焦点があてられる作品が多いなか、本作は異色なテーマといえるでしょう。スペースデブリをはじめとする社会問題や、宇宙にいることで生じる障害が取りあげられます。また、登場人物たちの悩みが生々しく、丁寧に描かれているため、リアリティに溢れた物語に感じられるのです。
登場人物は頭脳明晰で優秀な人物というより、宇宙空間で多くの悩みに葛藤する人間味のある人物として描かれています。主人公のハチマキは、現実とはかけ離れた大きな夢を追うため、孤独に生きることを選びます。そして新入りの女性・デブリは回収屋であるタナベと出会い、自分の孤独な生き方を見つめなおすようになるのです。
宇宙という広大で何もない空間の中で、ハチマキは自分の存在や自分のやりたいことの意義を見失ってしまいます。しかし、タナベをはじめとする宇宙で働く仲間たちに支えられ、「自分とは何か」「宇宙で働く意味は何か」といった問いに少しずつ答えを見つけ出していくのです。
等身大の登場人物が宇宙で苦しみを乗り越え、夢を追う姿に共感し、じっくり考えさせられます。たまには立ち止まって、自分の人生を考え直してみたいという方におすすめです。
『プラネテス』に関しては「『プラネテス』を真面目に語る。評価の高い名作漫画はタイトルから深かった!」で詳しく解説しています。
愛称「弱ペダ」でおなじみの自転車競技を題材にした『弱虫ペダル』。何の変哲もない主人公が、普段の生活で培ってきた力を活かし自転車競技部に入部し、仲間とともにインターハイを目指すスポ根漫画です。
秋葉原まで往復90キロの道のりを、交通費削減のためにママチャリで通っていたオタク少年、小野田坂道。ある時、関西から引っ越してきた鳴子章吉という少年と友達になりました。
中学時代に自転車競技で活躍していた彼と出会うことで、坂道は自転車で速く走る楽しみを知り、自転車競技部へ入部するきっかけを得ます。上り坂の多い道のりを長年通い続けていたおかげで、上り坂に強い「クライマー」と呼ばれる素質があった坂道。彼は先輩部員の巻島裕介の指導のもと、その才能を発揮していくのでした。
- 著者
- 渡辺 航
- 出版日
- 2008-07-08
ネガティブな表現が少なく、自転車競技を扱うだけに疾走感に溢れた本作品は、全体的に明るい印象を受ける熱血スポ根漫画です。小柄でメガネくんの主人公、坂道が仲間とともに全国制覇を目指すストーリーは少年漫画の王道といった様相を見せてくれる展開となっていて、話を追うごとに数多くのライバルキャラが登場します。
魅力的な男性キャラクターが多く登場し活躍する本作品では、それぞれにライバル的な位置づけのキャラクターが設定されているなど、登場人物そのものにスポットが当たるエピソードが多いです。
また、漫画ならではの超人的な能力を持った登場人物も多く、レースシーンなどでは少々誇張された表現で熱いバトルが展開されます。リアルな自転車競技というよりは、少々ファンタジックな一面を持つスポーツ漫画作品です。
少年漫画の王道パターンを数多く含みながらも、男性キャラが多数登場するなど、と男女両方の読者に好まれる本作品。自転車の疾走シーンや、少年少女が汗を流す姿が鮮明に描かれており、作品全体に爽やかな雰囲気を醸し出しています。少年少女たちが夢に向かって突っ走っていくスピード感満載の物語を、ぜひ堪能してみてください。
今や国民的に認知され幅広い層から評価される漫画『ONE PIECE』。ひとつなぎの大秘宝(ワンピース)を求め海賊となった少年が、仲間を集め冒険をくり広げる、大海原を舞台にした冒険ファンタジーです。
世界のすべてを手に入れたという海賊王であるゴールド・ロジャー。彼が遺した「ひとつなぎの大秘宝(ワンピース)」をめぐって、世界は海賊たちが競い合う「大海賊時代」へと突入します。そんな時代に、海賊王を目指すひとりの少年が立ちあがります。後にさまざまな仲間と出会い、強敵を打ち倒していく彼の名はモンキー・D・ルフィ。トレードマークの麦わら帽子をかぶり、冒険の海へ旅立ちます。
- 著者
- 尾田 栄一郎
- 出版日
- 1997-12-24
壮大な世界観を誇る本作。練りあげられた深い設定と続々と登場する多彩なキャラクターたちによって、その世界の広さをうかがい知ることができる物語です。
「冒険」というロマンが詰まったテーマがまず魅力的。海を舞台にくり広げられる、海賊たちによる秘宝争奪戦は、読者を実にいろんな冒険に誘ってくれます。ある時は珍獣の島での大冒険、またある時はカラクリ仕掛けの城でメカたちとの大乱闘。呪われた聖剣をめぐる騒動では仲間の裏切り疑惑が浮上するなど、さまざまな展開を迎えます。
仲間との固い絆、夢や希望を与えてくれるエピソード。そんなワクワクが止まらない要素がてんこ盛りの冒険活劇です。しんみり感動することも、あれば大号泣することもしばしば。子どもから大人まで幅広く支持される傑作を、この機会にぜひ読破してみませんか?全巻を読みあげるのは大仕事ですが、それだけの価値がある名作です。
戦後最大のヒットマンガのひとつに数えられるほどの作品で、ボクシングをテーマにして描いた『あしたのジョー 』。ケンカに明け暮れていた少年が元ボクサーの男に才能を見出され、ともに一流のボクサーを目指していく物語です。主人公が試合後真っ白に燃え尽きたシーンは特に有名でしょう。
東京の浅草ドヤ街でケンカに明け暮れていた少年、矢吹丈(愛称はジョー)。彼がアル中の元ボクサー丹下段平と出会います。ジョーと地元暴力団との乱闘を見た段平は、彼に天性のボクシングセンスを感じ、一流のボクサーにしようとしはじめるのです。しかし、素行の悪いジョーは彼の言葉に耳を貸さず、段平から小遣いをせしめては悪行を重ねます。
ついに警察に逮捕されてしまったジョーは鑑別所に入ることになりますが、そこに段平から手紙が届きます。「あしたのために」と書かかれたその手紙をきっかけに、ジョーはボクシングを始めることになるのです。
- 著者
- ちば てつや
- 出版日
- 2000-06-01
『あしたのジョー』の後にあるボクシング漫画はこの作品の影響を受けている、といわれているほどの存在感を放ちます。劇画路線を始めたばかりの、当時の「週刊少年マガジン」を支えた作品でもあります。しかし、本作が未だに高い評価を受け、影響を受ける作家が多いのは、単にそういった実績だけが理由ではありません。その背景には、熱血スポーツ漫画としての面白い要素をすべて内包していることと、感動的なラストシーンが描かれているからでしょう。
はじめは荒んだ生活をしていた少年がボクシングというものを知り、絶対に勝ちたい相手であるライバル、力石徹と出会うことで、彼の中で熱い情熱が湧き上がります。そんな彼が最後の試合で力石を相手に全力でぶつかっていくラストシーンは漫画誌に残る最高の場面だと断言できます。あれこそまさにスポ根漫画の魅力そのものです。
試合後ジョーが真っ白に燃え尽きたあの有名なシーンは、今でも彼が死んでいると考える人、生きていると考える人両方がいるようです。見る人次第ではあるでしょうが、あのジョーの満ち足りた表情を見ると、どちらだったとしても最高のラストシーンであることには変わりはないでしょう。
若い世代の人たちには少々とっつきづらい劇画タッチの作品だとは思いますが、昔も今も、熱い情熱を描く作品の魅力は色褪せないもの。ジョーの生きざまを味わうことができる名作、ぜひ手にとってみてください。
『あしたのジョー』に関しては「『あしたのジョー』登場人物10人の名言を徹底紹介!名作漫画を最後まで解説」で詳しく解説しています。
「いくえみ男子」というカテゴリーを生み出した作家いくえみ綾による、大人向け少女漫画『潔く柔く』。エピソードごとに違う登場人物の視点で描かれる群像劇となっている本作では、彼らはまったく無関係なわけではなく、それぞれに複雑に関わり合っています。
この物語は、ACT1~ACT10までの話で構成されており、それぞれが違った人物の視点で描かれています。そして各項で描かれるエピソードは繋がっており、登場人物たちも知り合いであったり、なんらかの形で関わっていたり、短い文章では解説できないほど複雑に絡み合っているのです。
- 著者
- いくえみ 綾
- 出版日
- 2004-11-25
多くの登場人物と、各自の視点で描かれる物語はメインとなるキャラクターのトラウマを扱ったエピソードが多く、切なさを全面に出している本作。ある日突然親しい人間がいなくなってしまったら……。そんなちょっと重いテーマを持たせた本作は、心に余裕を持たせてから読むことをおすすめします。というのも、感情移入しすぎると切なすぎる内容であるかもしれないからです。
さて、冒頭で触れた「いくえみ男子」の解説をせねばなりません。本作品にももちろん登場しますが、作者が描く男性キャラクターの多くは、女性が思い描く理想の男子といわれています。単純なカッコよさだけではなく、見た目はゆるめだけどいざというときは自分を引っ張ってくれるタイプだったり、無邪気な所もあっったり、スキもあったり……。
とにかく女性が好む要素をバランス良く持ち合わせた究極の男子なわけです。そんないくえみ綾が描く男性キャラクターのことを、女性ファンたちは「いくえみ男子」と呼ぶのです。まさに彼女にしか描けない魅力的なキャラクターであるといえるでしょう。そんな彼らをじっくり眺めるのも、よい楽しみ方かもしれませんね。
女性視点で描かれているため、女性キャラクターの心理描写がリアルな点も本作品の特徴。よい部分も悪い部分も含めて女の子らしい言動が目立ちます。そういったところは、女性が共感を得やすいのではないでしょうか。全体的にちょっと切ないお話ですが、次々に変わっていく登場人物の視点が、徐々に交わっていく話運びは一読の価値があると思います。おすすめの一作です。
『潔く柔く』に関しては「『潔く柔く』が面白い!原作漫画を名言や結末などからネタバレ考察!【無料】」で詳しく解説しています。
明治時代、維新後の世の中を生きた剣客、緋村剣心の生きざまを描いた物語『るろうに剣心』。アニメ化や映画化もされた超人気作です。
逆刃刀を携え、不殺(殺さず)を誓った剣士である剣心。彼は「人斬り抜刀斎」の異名を持つ元維新志士でした。道場師範代の神谷薫との出会い、宿敵たちとの闘いの中で、剣心は過去への贖罪、これからの生き方を見つけていきます。
- 著者
- 和月 伸宏
- 出版日
- 2006-07-04
単なるアクション漫画とは違います。たしかに少年心をくすぐる必殺技や派手な戦闘シーンも見どころですが、それ以上に命の重さについて考えさせられるお話です。決して人を殺さないと誓った剣心。彼がなぜ不殺を信条とするのか、剣心の悲しい過去とともに、その理由も紐解かれていきます。
「勝者が正しい訳ではない」という剣心の台詞。正義が必ず勝つという少年漫画の常識を覆したこの言葉に、衝撃を受けた読者も多いのではないでしょうか?悪人ならば殺してもいいなんて、そんな道理はないんですよね。「いくら憎くても殺さない。生きて罪を償わせる」という剣心の考え方が心に染みます。味方であっても敵であっても、命の重さは変わらない。この作品は、読者に本当の正しさとは何かと、強く訴えかけてきます。
とにかく心打たれる台詞が多く登場する作品です。愛する者を守るために必要なのは、力の強さではなく、想いの強さなのだとこの作品は語り掛けます。一度読めば、いままでの価値観や人生観が変わるかもしれません。剣心の強く、優しい生き方にきっと感銘を受けることでしょう。
『フルアヘッド!ココ』は、全速力で夢へと突き進んでいく少年の姿を描いた物語です。
とあるきっかけで、少年ココは海賊になりたい!と夢を抱きます。念願叶って、キャプテンバーツ率いる海賊スイートマドンナの仲間になったココ。本作は、彼とさまざまな海賊たちのロマンを描いた海洋冒険ストーリーです。
- 著者
- 米原 秀幸
- 出版日
- 2013-08-08
これぞ少年漫画!と言いたくなるほど、夢と希望にあふれた物語です。
弱小だったココが冒険の中で出会いや戦いを経て、どんどん強くなっていく姿が見ていて爽快。初めから強い主人公よりも、弱かった人間が困難を乗り越えることで仲間とともに強くなっていく方が読んでいて楽しいですよね。
舞台となっているのは大航海時代のヨーロッパ。海賊たちは伝説のファルコンの民が残したとされる遺産を探しに海へと飛び出します。海賊の冒険と言えば、お宝は外せないアイテムですね。ストーリーのテーマが一貫して変わらないので、非常に読みやすい漫画といえます。
日常で味わえないドキドキ感が存分に味わえる作品です。
日々喧嘩に明け暮れる高校生の前田太尊(たいそん)。『ろくでなしBLUES』は、そんな彼を中心にヤンキーたちの抗争を描いた学園漫画です。舞台となっているのは、東京都武蔵野市の吉祥寺にある帝挙高校。プロボクサーを目指して上京した太尊は、その高校に通いながら他校の強敵たちと熾烈な抗争をくり広げます。
太尊の成長と男たちの熱い生きざまから、目が離せなくなるでしょう。
- 著者
- 森田 まさのり
- 出版日
ヤンキーたちのどこか青臭くて、不器用な生き方に憧れます。純粋に強さを求める男たちの一途さや実直さは、気高ささえ感じられるもの。これぞ男のカッコよさ!と思える登場人物たちがたくさん出てくるのも魅力のひとつです。
主人公、太尊の男気溢れた性格には誰もが惚れ惚れしてしまうことでしょう。喧嘩が強くて、仲間を大事にし、だけど決して周囲に力を誇示したりしない。その人柄ゆえ、太尊の周りにはいつも人が集まってきます。
きっと彼の大らかな優しさが周囲の人間を引き付けているのでしょう。喧嘩は強いのに、恋愛や下ネタには弱いなんて……そのギャップも素敵です。
緻密に描かれる喧嘩のシーンは迫力満点。舞台となっている吉祥寺とその周辺の風景が忠実に書かれているのも見どころです。全身全霊で青春を謳歌する男たちの姿に気持ちが昂ること間違いなし!ぜひ一度お手に取って見てください。
『金色のガッシュ!!』の主人公の高嶺清麿(たかみねきよまろ)は中学生でありながら、マサチューセッツ工科大首席卒業生の論文を読破してしまう秀才。そんな彼は頭が良すぎるあまり周囲に馴染めず、不登校をくり返していました。ある日、清麿のもとに一冊の赤い本を持った謎の子供が現れます。その子供、ガッシュはなんと魔王の後継者で……。
- 著者
- 雷句 誠
- 出版日
バトルと友情をテーマにした本作。子供向けと思われることも多いですが、大人が読んでも十分楽しめる内容です。ガッシュの謎が徐々に解き明かされていく展開に、大人も子供も引き込まれてしまうこと間違いなし!
魔界の王様を決めるため、人間界でバトルをくり広げるという、設定がまず魅力的。よくあるバトル漫画かと思いきや、戦うチームは魔物の子供と高校生の人間です。これはありそうでなかった組み合わせです。闘いを通して強くなっていく主人公2人組の姿、そして徐々に深まる絆には感動を覚えるでしょう。
壮絶なバトルのなかで、タイミングよく挟まれるギャグも必見。思わずクスリとくるものから爆笑するものまで、やはり漫画は読んでいて楽しいのが一番!素直に面白い、そう思わせてくれる作品です。
荒れ寺で寺子屋を開いた男、浪人朽木と、強盗を働き島流しとなった父の子で、朽木の教え子でもある雲雀、ふたりの生活を中心とした話です。その他にも、火事で母を亡くし部屋に引きこもってしまった松乃介や兄についての事から執拗に朽木を絡む同心の細目など、重く暗い事情や思いを持った人々が丁寧に描かれています。他人と交流し、それぞれの思いや秘めるものがある様子が情感たっぷりに描かれた作品です。
- 著者
- 山中 ヒコ
- 出版日
役人に取り押さえられそうになった父親を助けようとして激流の川に落ちてしまった雲雀ですが、人殺しの子として周りの人々から見捨てられてしまいます。しかし、そんな中で朽木は服を脱ぎ川に飛びこもうとするのです。周囲はその危険性から朽木を止めようとします。
「朽木!!死ぬぞ!!!」
「……雲雀は某(それがし)の寺子にて!!」
(『死にたがりと雲雀』より引用)
今後も物語の中で様々な困難が雲雀に降りかかり、時に命がけの時もありますが、朽木は必ずどんな時でもこの台詞を言い雲雀を助けます。自分の教え子であるから、というそれだけの理由。ただ、シンプルで力強い朽木の気持ちが伝わってくるセリフです。
ほのぼのとした先生と教え子、親代わりと子供という優しさの感じる関係性を通して、ふたりは成長していきます。登場人物たちも様々な重い過去や事情を持っていますが、彼らの隠されていた真実は周りの人々の助けによって癒されていきます。時に向き合い、時に逃げ、時に救われる様が丁寧に、そして美しさを持って描写されています。
穂積のデビュー作です。月刊フラワーズにて銀の花賞を受賞、2013年には同作でブクログ大賞マンガ部門を受賞しました。
- 著者
- 穂積
- 出版日
- 2012-09-10
表題作「式の前日」はその名の通り、結婚式を挙げる日の前日を描いたものですが、20ページ程度ととても短くあっという間に読み終わってしまいます。他の収録作品も短めなのでスキマ時間に読むには最適です。
嫁入り前の女性の、嬉しさと寂しさが複雑に混ざり合った感情を、ひょうひょうとしてはいるけれど、温かく受け止める男性の優しさを感じる作品です。
最後に2人の関係が明かされ、驚きと切なさでまた読み返したくなります。
19歳で漫画家デビューして以降、りぼん、マーガレットなど人気雑誌で数々の作品を発表している人気漫画家谷川史子による著作です。
読み切り短編集や長編漫画、小説などのイラストも手掛けています。カラーイラストは本当に綺麗で柔らかい色使いで優しい気持ちになるものばかりです。少女漫画の王道という感じですが、素朴なイメージなのでブリブリしたのは苦手という方でも読みやすいのではないでしょうか。
- 著者
- 谷川 史子
- 出版日
主人公、加瀬素子は東京の大学に通う20歳の女の子です。ちょっとしたイタズラ心から、見知らぬ息子想いの母との文通を始めます。
ところが東京でその母親と出会ってしまうのです。文通している母親はキャラクターがお茶目で、でも大切な事はキッチリ教えてくれる心強い存在。素子もその素質がありそうなので、将来こんなお母さんになっていそうな気がします。
何と言っても文通の内容がほのぼのしていて和みます。キャラクターがしっかり作られているので、少女漫画的な展開もすんなりと受け入れる事ができるのです。
素子「学食のカレーを食べたのですが 肉がひとつも入ってなかったのにショックを受けました」「友人が気の毒がってシャケを一切れわけてくれました」
母「肉々したカレーをいやというほど食べさせてあげます」「シャケは母が川で捕獲しておきます」(『手紙』より引用)
こんなやり取りが繰り返され、実際に東京で会った時も手紙の印象そのままの相手に素子は安心感を覚えます。同時に、本当の母親に対する気持ちと素直に向き合う事になるのです。
他人の母親には素直に優しくできるのに、どうして本当の母親を思いやれないのだろう。見知らぬ母親との文通によって、素子は母親に優しくなれない自分と向き合います。うるさくお説教されるから、こちらはもう大人なのに世話を焼きたがるから……そうした行動に隠れているのは子供を想う母親の愛情です。
それに気が付いた時に素子は大粒の涙を零します。互いの存在を認め合う事で親子は自立した大人同士の関係に変わっていくのかもしれません。日々の何と言う事のない出来事を手紙にしたため、笑顔が増えていく素子。
素直になる事を忘れてしまった人たちへの手紙のような作品です。
いつもニコニコしているけれど、誰とも特別親しくない人がたまにいると思います。この短編漫画の主人公はそんな女性です。一見よくいそうな人物にスポットライトを当てることで漫画に入り込みやすくなっています。
- 著者
- 脇田茜
- 出版日
いなくなった猫に夢を語るOL河合。夢を叶えるために噂やセクハラも受け流して、割り切って毎日働いています。
感情に蓋をしている様を、段ボールに気持ちを詰めて「河合感情倉庫」に次々に収納していくなど、コミカルな表現がさらに主人公と読者の距離を縮めてくれます。職場や学校のあの人の事を思い出させるけれど、自分にもそう言う所があるな、と次第に共感に変わっていくのです。
「笑顔で受け流す以外 できないんですかね」(『凪をさがして』から引用)
大木が食って掛かった夜から河合は変化していきます。見られている事にも気が付かず、感情に任せて走り出すシーンが印象的です。それまで河合さんはすっきりとしたシンプルな線で描かれていたのに、陰影の深い人間味あるタッチになり、それまでどれ程心にため込んでいたかを物語っています。
大木の真っ直ぐな言葉に徐々に心を開いていく様子は、何かが始まる期待でいっぱいです。2人が色づいて見えるような素敵なシーンでした。
行方不明の猫が他の意味を含んでいた事がわかると、なるほどそう言う事かと納得します。
夢のために頑張っているつもりが、いつのまにか現実から逃げる手段になっていたという事もありますよね。たまには誰かに心のうちを明かして、心のやり取りをしてみると案外道が拓けるのかも知れないと思わせてくれる作品です。
『恋文日和』や『ピースオブケイク』、最近では『溺れるナイフ』が映画化されるなど、話題の人気漫画家ジョージ朝倉の短編作品。ペンネームは男性のようですが、女性です。クールでお洒落な絵と、激しい感情を爆発させる登場人物の突き抜けたキャラクター設定が織りなす独特の世界観で、根強い人気を誇ります。
- 著者
- ジョージ 朝倉
- 出版日
- 2002-05-10
『水蜜桃の夜』で描かれるのは血の繋がらない兄妹の禁断の愛。仲の良い幼少期、同じ気持ちを共有した思春期、秘めた想いでイライラする青年期と、主人公沙羅が義兄に対して投げかける言葉にドキドキさせられっぱなしです。沙羅とナツの色気が凄いので、恋してしまうのも仕方ないと思ってしまいます。
自分の想いに気付いてほしい沙羅は、夏休みに帰省してきた義兄ナツに対し、攻撃的なまでに自分の女の部分を露にするのでした。気持ちに気付いているナツは、するっとかわして逃げるのです。そのずるい態度が蒸し暑い夏の空気の様に沙羅を苛立たせます。
許されない恋を追いかけているようで追い詰められていた沙羅。その姿があまりにも赤裸々で切ないのと同時に、女性の怖さを見せつけられます。そして思い出の秘密基地が取り壊された日、2人を思いとどまらせていた堤防がついに決壊するのでした。
「痛いのは 恋愛にはなれないから それでも 強く強くひかれてたから」(『水蜜桃の夜』から引用)
体は結ばれても上手くいかない事はとうにわかっていた沙羅の心中に、女性の怖さと叶わぬ恋へのやり切れなさを感じます。むき出しの女性性はジョージ朝倉作品の醍醐味です。報われない想いへ決着をつけようともがく姿に、共感する方も多いのではないでしょうか。
ひと夏で長年の苦しい恋を諦める切なさを実感できる作品です。
直木賞作家三浦しをんが、昔話をテーマに描いた小説集のコミカライズ作品です。新しいのに懐かしい、昔話の雰囲気に浸れます。とても綺麗な絵で、カッコいい男性が多く出てくるので、イケメン好きも満足の作品です。
- 著者
- ["三浦 しをん", "西田 番"]
- 出版日
人生の結末や大きな壁にぶつかったとき、人は何を語るのでしょうか。本作は、読者に読み聞かせるように描かれた原作に忠実に漫画化されています。原作ファンも初めて読む方も楽しめるように、丁寧に大切に作られたことが伝わってくる作品です。
昔話には人生の教訓が含まれていますよね。それが説教臭くなく大事な事を教えてくれるから、大人になってもその人の心に刻まれているのだと思います。
「ロケットの思い出」は空き巣犯が語る物語です。愛犬との散歩で培った知識で空き巣を繰り返すうちに、偶然同級生の部屋に空き巣に入ってしまいます。
友達もいない、というよりも作れない男の孤独な心にずっと引っかかった愛犬ロケットとその死。空き巣に入りロケットにどことなく似ている同級生と再会した事によって、男は危ない橋を渡って行きます。
ロケットは最後の夜、晩御飯を食べられずに死んでいきました。「俺」は、だから今でもロケットの命日には夕飯を食べずに過ごすと言います。
奇妙な話ですが、誰にでも心の拠り所があり、それはとても尊いものなのだと思わせてくれる作品です。
その他にも、年齢の離れた叔父に恋してカウンセリングを受ける少女や、整形美女を乗せた運転手の物語など、あり得なさそうであり得そうな短編漫画が収録されています。人生のレールを踏み外す寸前の人、完全に脱線した人が語る物語には、喜び、悲しみ、後悔や郷愁、若さゆえの頑なさが織り込まれているのです。
年代も性別も様々な語り手たちの物語に胸が熱くなること必至。きっとあなたも共感できる作品を見つけられるでしょう。タイトルごとに話が完結して読み易く、話もたくさん収録されているので読みごたえも充分です。
全話読むと関連性が見つかるので、そんな仕掛けも楽しんで下さい。
いかがでしたか?大人でも感動できる漫画をご紹介いたしました。少しでも気になったら、手に取ってみてください。日常を忘れて、感動して、泣けると話題の作品ばかりです。気分転換にもおすすめですよ。