大林宣彦のおすすめ映画32選!原作とともに味わう新旧不朽の名作

更新:2020.9.7 作成:2020.9.7

2020年4月10日、この世を去った日本が誇る映像の魔術師・大林宣彦。余命宣告を受けてもなお、最期まで映画監督として生き抜きました。その生きざまは多くのクリエーターに影響を与え続けています。そんな大林作品からおすすめをピックアップ。さらに、大林宣彦が監督を手掛けた映画の原作も紹介します。

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目次

尾道が生んだ天才!幼少から映画を愛し続けた巨匠・大林宣彦のプロフィールを紹介!

大林宣彦(おおばやしのぶひこ)は、1938年1月9日生まれ、広島県尾道市出身。

大林宣彦が生まれて初めて監督をしたのは6歳の時。35mmフィルムに手描きをしたアニメーション映画でした。幼い頃から映画好きだった大林は、8ミリカメラにも親しみました。大学入学のため上京し、成城大学文芸学部芸術コース映画科に入学。そこで、後に妻となり、大林作品を支える大林恭子に出会います。そして、在学中にプロポーズ。

8ミリカメラを使って自分で映画を作り始め、大学は中退。当時は、自主製作映画という概念そのものがなかったので、後にその先駆者と呼ばれることになります。そこで頭角を現わすと、草創期のテレビCM界から声が掛かり、CMディレクターとし参加。数々のCMを制作し、ヒット商品も生み出すのでした。

1977年には、『HOUSE』で商業映画監督デビューを果たします。1980年代には、自身の故郷である尾道市を舞台とした「尾道三部作」と呼ばれる『転校生』『時をかける少女』『さびしんぼう』が次々に大ヒット。若手女優の登竜門として広く知られました。1990年代に入ると、『ふたり』『あした』『あの、夏の日~とんでろ じいちゃん~』という「新尾道三部作」も発表します。

2000年代以降は、尾道以外の歴史や伝統にも目を向け始める大林監督。『なごり雪』をはじめとする「大分三部作」の制作にも取り組みました。しかし2016年、『花筐/HANAGATAMI』クランクイン直前に肺ガンが判明。「余命3ヶ月」と宣告されます。

余命宣告されてからも、映画製作に命を掛けた映画監督・大林宣彦。2020年4月10日、この世を去りました。くしくもその日は、最新作『海辺の映画館―キネマの玉手箱』の公開予定日でした。享年82歳。最後まで映画監督として、その生涯を終えました。

なぜ大林宣彦作品の人気は衰えないのか。映像の魔術師・大林宣彦の魅力とは

映画やCM、アニメなど日本の映像業界に多大なる影響を与えた大林宣彦。今なお愛され続けるその理由を紐解いていきたいと思います。

自主製作映画の先駆者であり、テレビCMの創成期に映画的手法を取り入れ、これまで存在しなかったCMディレクターという地位を築き上げた大林宣彦。そこから、映画監督へと転身、常に時代の先を走り続けてきました。

そんな大林宣彦が作品を生み出す時の大切にしていたことは、今まで誰もやっていないことへの挑戦と故郷・尾道や地方への思いです。特に多くの作品を残しているのが尾道。地域の持つ魅力そのものが映画をより豊かにしているのです。

そうしたこだわりに、自身のさまざまなテクニックをかけ合わせることからついた呼び名は「映像の魔術師」。映画好きはもちろん、そうでない人たちもみな、その映像表現に衝撃を受けました。独自の作家性をきちんと持ちつつも、エンターテインメントへの昇華も忘れない。その微妙なバランスが大林作品の最大の魅力です。 
 

表現は自由である、大林監督の作品はいつもそう教えてくれます。大林作品に多く登場するこの世にいない人たち。彼らと生きている人間とのボーダレスな世界観はそこからきているのかもしれません。独特の死生観は、戦争を体験した大林監督ならではなのでしょう。

大林宣彦が伝えるメッセージに私たちは強く惹かれているのかもしれません。

そんな大林宣彦が大学生に向けてテレビ番組で語った「最後の講義」が書籍化されています。戦時中の想いや映画監督になるまでに影響を受けた作品など、命懸けで最後に若者に伝えたかった内容がぎっしりと詰まっています。

著者
大林 宣彦
出版日

【映画ライターおすすめ】監督らしさが1番輝く映画作品『異人たちとの夏』(1988年)

 

筆者にとって大林宣彦監督は特別な存在です。というのも初めて映画館で見た映画が『ねらわれた学園』だったからです。その経験があったからこそ、後に映画の仕事に就いたといっても過言ではありません。初めての映画体験は驚きの連続でした。その後も大林作品を見続けてきましたが、今回おすすめする映画『異人たちとの夏』を見た時に感じた不思議な感覚が今でも忘れられません。

原作は、山田太一の同名小説。妻子と別れた中年のシナリオライター・原田が、幼い時に亡くした両親や怪しげな女性と出会い、奇妙な交流を持つことになるという物語です。 

大人になった主人公が子どものようにはしゃぎながら、自分より若い両親とちゃぶ台を囲み、父と念願のキャッチボールをする。主人公の喜びとその情景の美しさに心奪われます。 
 

一方で、得も言われぬ独特な雰囲気がありゾクっとするのです。そこが大林作品の最も魅力的なところ。本作もやはり一筋縄ではいきません。感動と驚き、このバランスが最も素晴らしい作品が『異人たちとの夏』だと思います。

 

ここから先は、大林宣彦が監督した映画作品の中から原作とともにその魅力を紹介します。 

【おすすめ映画原作】この作品の実写化は大林宣彦が初めて『ブラック・ジャック』(1977年)

『ブラック・ジャック』は、1973年から『週刊少年チャンピオン』に連載された手塚治虫の人気漫画です。主人公のブラック・ジャックは、天才的な外科医としての技術を持ちながら無免許の医師。多額な医療費を請求しては、重症患者を救います。人里離れた診療所に身を潜めて暮らすブラック・ジャックの元に、最後の望みをかけた患者が集ってくるのでした。

この原作を『瞳の中の訪問者』というタイトルで、1977年に実写映画化したのが大林宣彦監督です。これまでに何度も実写化されており、この時のブラック・ジャックは宍戸錠が務めました。本作は、「春一番」という物語を映画化。失明した千晶がブラック・ジャックにより角膜手術を受けると、いるはずのない青年の姿が見えるようになるという物語です。

当時まだ新人だった片平なぎさと志穂美悦子が初々しい演技をみせています。ブラック・ジャックのビジュアルが非常にインパクトのある作品です。

原作の詳細が気になった方は、こちらの記事もご覧ください。 

<『ブラック・ジャック』5分でわかる10の意外な事実!天才無免許医の謎を解く!【ネタバレあり】 >

著者
手塚治虫
出版日

【おすすめ映画原作】名作を大林宣彦流で実写化『金田一耕助の冒険』(1979年)

横溝正史の短編集『金田一耕助の冒険』。「~の中の女」というタイトルの作品集となっています。その中の一つが『瞳の中の女』。金田一が登場しながら事件は未解決のまま終わった問題作です。

舞台は吉祥寺。金田一耕助と等々力警部は、1人の青年を追っていました。彼は1年前、ある不可解な事件に巻き込まれ記憶をなくしています。事件の鍵を握る女性も、彼の瞳の中にだけ存在しているため、なんとか記憶を取り戻そうとしているのでした。

この短編は、角川映画の金田一耕助シリーズの第3弾として実写映画化されました。金田一耕助役に古谷一行を迎え、原作の『瞳の中の女』では事件が解決してないところを映画独自に発展させています。大林節で描かれる金田一耕助は、これまでのシリーズとは違った趣があります。

著者
横溝 正史
出版日

【おすすめ映画原作】ジュブナイルSF小説の傑作!『ねらわれた学園』(1981年)

眉村卓のジュブナイルSF小説の1つが『ねらわれた学園』。映画化やテレビドラマ化が幾度もされている人気作品です。

ある日、これまであまり目立たなく大人しかった美少女・高見沢みちるが、阿部野第六中学の生徒会長に当選。彼女は不思議な力で徐々に学園を支配していくのでした。そんな彼女のやり方を疑問視する関耕児が中心となり高見沢に反発。楠本和美らクラスメイトが関に協力することになるのですが……。

このSF小説を大林宣彦が映画化。映画では主人公の名前を三田村由香に置き換え、主演を角川映画『野生の照明』で華々しくデビューを飾った薬師丸ひろ子が務めています。

中学生という設定も高校生に変更されました。その当時、画期的な特撮処理をいくつも施し見事に実写化。大ヒットを記録し大林宣彦を一躍世間に知らしめた作品です。

原作の詳細が気になった方は、こちらの記事もご覧ください。 

<眉村卓のおすすめ社会派SF作品5選>

著者
眉村 卓
出版日
2012-09-14

【おすすめ映画原作】大林宣彦の故郷で撮影!尾道三部作、第1弾『おれがあいつであいつがおれで』(1982年)

山中恒の児童文学『おれがあいつであいつがおれで』を大林宣彦監督が実写映画化しました。

小学6年生の斉藤一夫とクラスに転校してきた斉藤一美という女の子とは幼なじみ。2人が再会したある日、ひょんなことから一夫と一美の心が入れ替わってしまいます。そんな最中、一夫が引っ越しすることに。果たして2人は元に戻れるのでしょうか。

実写映画では小学生のままだと難しいこともあり、年齢を引き上げています。そこで、主人公を演じたのが、尾美としのりと小林聡美のフレッシュコンビ。この作品で、各映画賞の新人賞を受賞した2人です。

大林監督の故郷・広島県尾道市へ舞台を移し、その美しい情景が作品をさらに豊かにしています。「尾道三部作」の記念すべき第1弾。後に続く尾道シリーズはここから始まりました。2007年には大林監督自身によるセルフリメイクもされています。

著者
山中 恒
出版日

【おすすめ映画原作】大林宣彦の代表作!尾道三部作、第2弾『時をかける少女』(1983年)

中学3年生の芳山和子は、学校の実験室でラベンダーの香りを嗅いだ途端、倒れてしまいます。目を覚ました彼女には、時間を移動する能力が身についていました。同級生の深町一夫や浅倉吾朗にこのことを相談するのですが……。
 

筒井康隆原作のジュブナイルSF小説の『時をかける少女』は、1967年に発表されて以降、今なお愛され続けている名作です。これまで幾度となく映像化や漫画化、絵本化、舞台化もされてきた人気作品。

1983年、原作と同名タイトルで大林宣彦監督により実写化されました。『転校生』に次ぐ、「尾道三部作」の第2作目です。本作で映画初主演を務めたのが原田知世。日本アカデミー賞をはじめとするいくつもの映画賞で新人賞を受賞し、角川映画の大型新人として一躍注目を浴びることに。思春期の少女の揺れ動く心情をノスタルジックに描いてた名作で、大林宣彦の代表作となりました。

原作の詳細が気になった方は、こちらの記事もご覧ください。 

<筒井康隆のおすすめ小説ランキングベスト5!『時かけ』を生んだ、SF作家。>

著者
筒井 康隆
出版日
2006-05-25

【おすすめ映画原作】福永武彦作品の映像化は大林宣彦が初!『廃市』(1984年)

詩人としても知られる作家・福永武彦。独特な手法で小説も執筆しています。これまで一度も映像化されたことがなかった福永作品の実写映画化を実現したのが、大林宣彦です。『廃市』を原作に同名の映画を監督しました。

卒業論文を書くためにある田舎町を訪れた大学生の僕。そこで姉夫婦と妹の三角関係に巻き込まれてしまいます。正反対な性格の美しい姉妹に愛された1人の男の運命を僕が見届ける本作。哲学者のような深い考察で、愛や孤独を描いた福永の世界観を堪能できます。

撮影は、原作の持つ叙情的な風景を描くため16mmフィルムを使いました。福永作品を映像化することが夢だった大林宣彦は、本作で見事に夢を叶えています。『転校生』で抜擢した小林聡美を主演に迎え、根岸季衣や峰岸徹、尾美としのりなど大林作品の常連が脇を固めました。

自分はこれほど想っているのに、相手に想いが届かない。そんな淋しさも描いた本作に、共感する人も多いかもしれません。

著者
福永 武彦
出版日

【おすすめ映画原作】少年の愛と冒険の物語『少年ケニヤ』(1984年)

『少年ケニヤ』は、紙芝居作家から絵物語作家に転身した山川惣治作の絵物語です。絵物語とは、挿絵が非常に多い小説のこと。映画やテレビドラマ、漫画、アニメと多くの派生作品が作られています。

父親と再会するため冒険の旅を続ける少年を描いた物語です。1941年、日本軍が真珠を攻撃。ケニヤに駐在する村上親子は敵国の拘束を恐れ、奥地へ逃げる途中、父とはぐれる息子ワタル。そんな彼を助けたのは、マサイ族の酋長や不思議な美少女・ケートでした……。

1984年、この原作がアニメ映画として製作されます。監督を大林宣彦が務め、共同監督をテレビアニメ『キン肉マン』や「デジモン」シリーズなどの今沢哲男が務めました。主演のワタルを高柳良一、ケートを原田知世が演じることに。アニメと実写の融合した大林ワールド炸裂の作品となっています。

著者
山川 惣治
出版日

【おすすめ映画原作】大林宣彦が撮るニューカレドニア!『天国にいちばん近い島』(1984年)

作家・豊田三郎を父に持ち、自身も作家として活動している森村桂の旅行記『天国にいちばん近い島』。亡き父が語っていた「神さまにいつでも逢える島」。その島はニューカレドニアだと確信した作者が、ちと親と再会できるかもと、ニューカレドニアへの旅立ちを決意します。

本作が発表された1966年は、まだ海外旅行が今ほど自由でなかった時代。そんな苦労も描かれていて、非常に興味深い作品です。

この作品を実写映画にしたのが、大林宣彦監督。主演には原田知世を迎えました。実際にニューカレドニアで撮影を行った映画は、原作そのままの美しい風景が広がります。

天使のような原田知世が風景の一部となり、本当に「天国にいちばん近い島」に違いないと思わせてくれます。夢のような島で、人の善意に触れ、さまざまな体験をするさまは、原作・映画ともに癒しを与えてくれる珠玉の作品です。

著者
森村 桂
出版日

【おすすめ映画原作】へんてこな女の子の正体は⁉『なんだかへんて子』(1985年)

児童文学作家・山中恒が1975年に発表した児童小説『なんだかへんて子』。勉強が大キライな小学生の主人公ヒロキは、ママに怒られてばかり。そんなある日、ヒロキの前にへんてこなお転婆少女が現れます。彼女の正体は何者なのか。巻き起こる騒動の数々を描いた作品です。

この物語は、1985年に大林宣彦監督により実写映画化されます。タイトルは『さびしんぼう』。この言葉は大林の造語で、広島の方言で悪ガキを「がんぼう」と呼ぶことに呼応しています。映画では、登場人物の年齢を小学生から高校生に引き上げました。

高校生のヒロキが出会ったピエロの恰好をした不思議な少女「さびしんぼう」。彼女との交流とヒロキの初恋を描いた切ないラブストーリーです。『アイコ十六歳』でデビューを果たした富田靖子が主演を務めました。

「尾道三部作」の最期の作品である本作も、大林作品独特の世界観で楽しませてくれる人気作です。本作の中では、大林宣彦が少年時代に感銘を受けたショパンの「別れの曲」がたびたび使用されています。

著者
山中 恒
出版日

【おすすめ映画原作】美しい4姉妹の愛の物語を大林宣彦が表現『姉妹坂』(1985年)

10代の女性から圧倒的な人気を誇ったファッション誌『プチセブン』。そこに連載されていたのが本作の原作、大山和栄の少女漫画『姉妹坂』です。大山和栄は絵もストーリー作りも非常に素晴らしく、後世に多くの影響を与えた女性漫画家のひとりです。

姉妹坂と呼ばれる坂の近くで茶房を営む、彩、茜、杏、藍の4姉妹。両親を亡くしたこの4姉妹、実は血がつながっていないのです。そんな4姉妹の幸せな日々の中で織りなす愛と青春を描いた物語。

この人気漫画は1985年に実写映画化されました。4姉妹を紺野美沙子、浅野温子、沢口靖子、富田靖子の豪華メンバーが演じ、作品を華やかに盛り上げています。そんな彼女たちを美しく描いたのが大林宣彦監督。原作同様に、4姉妹のそれぞれの心情を巧みに表現しています。

京都を舞台にした本作。今なお、観光地としての人気を誇る京都ですが、映画で見る京都はより一層の趣と、どこか懐かしさを感じます。漫画と比較してみるの面白いかもしれませんね。

著者
大山 和栄
出版日

【おすすめ映画原作】夏の海、揺れる恋心『彼のオートバイ、彼女の島』(1986年)

多くの趣味を持ち、さまざまなジャンルでの執筆活動をおこなう人気作家の片岡義男。そんな彼が1977年に発表した恋愛小説が『彼のオートバイ、彼女の島』です。

原田知世の姉・原田貴和子が主演を務め、日本デビュー作となった同名の実写映画が話題となりました。相手役として役者デビューを果たした竹内力も出演。監督は大林宣彦が務めました。

原作小説では竹内力演じるコオが主人公。ある日、オートバイで旅に出るコオは、原田演じる不思議な女性・ミーヨと出会います。オートバイに興味を持つミーヨにしだいに惹かれていくコオでしたが……。

バイク好きの若者に絶大なる人気を誇った片岡の小説『彼のオートバイ、彼女の島』は、映画が公開されると、さらに人気に火が付きました。映画で使用されたバイクに惹かれたファンも多い本作は、ある意味でオートバイも主役級の活躍。主演の2人のみずみずしい演技も加わり、爽快な気持ちを味わえる作品です。

原作の詳細が気になった方は、こちらの記事もご覧ください。 

<片岡義男のおすすめ作品5選!小説からエッセイまで多数執筆する作家>

著者
片岡 義男
出版日

【おすすめ映画原作】大林宣彦が描く嘘をめぐるラブコメディ『結婚という冒険』(1986年)

脚本家として、映画やテレビドラマ、舞台を多く手掛けるジェームス三木が、1985年劇団NLTのために書き下ろした戯曲が『危険なパーティー』。ジェームス三木の戯曲集『結婚という冒険』に収録されています。

ある映画監督が、撮影で南の島の酋長と親しくなります。この島では友情の証として妻に一晩もてなさせるという風習があり、監督が島に行った際も酋長の妻にもてなされていました。そこで、酋長が来日する際、自分の妻の替え玉を用意してもてなすことにするというラブ・コメディ。監督を大林宣彦が担当し、脚本をジェームス三木と大林監督、『さびしんぼう』の内藤忠司が共同で担当しています。

タイトルを『四月の魚』に変更。それは、フランス語でエイプリルフールを意味するところからきているようです。この物語のキーワードは「嘘」。相手を大事に思うからこその「嘘」が騒動を巻き起こしていくのです。

主演には、ミュージシャンの高橋幸宏。音楽監督も務めています。彼は、『天国にいちばん近い島』にも主人公の父親役で出演しました。ジェームス三木もテレビ司会者役でカメオ出演。遊び心溢れる大人のラブ・コメディに仕上がっています。

著者
ジェームス三木
出版日

【おすすめ映画原作】日本の懐かしい情景と少年の日々『わんぱく時代』(1986年)

『田園の憂鬱』などで知られる近代日本を代表する詩人でもある作家の佐藤春夫。彼が描く少年文学の『わんぱく時代』は隠れた名作です。作者の少年時代をモチーフに描かれた物語。

戦争の影を落とす日露戦争前後の和歌山県。自然豊かな情景の中、戦争ごっこをした少年時代や年上の少女との淡い初恋も。しかし、そんな穏やかな日々はいつしか社会への反逆へと向かっていきます。詩人でもある佐藤のロマンチズム溢れる傑作です。

佐藤の「少年の日」という詩の一部から抜き出した『野ゆき山ゆき海べゆき』というタイトルで大林宣彦が実写映画化しました。映画では原作の設定を生かしつつ、年上の少女に恋する少年たちの話を中心としたオリジナルの展開になっています。

主演を務めた鷲尾いさ子はこの作品で初主演となりました。エキゾチックな魅力で、みなが憧れる美しい少女を演じています。

原作の詳細が気になった方は、こちらの記事もご覧ください。 

<佐藤春夫のおすすめ著書5選!代表作『田園の憂鬱』や詩集など>

著者
佐藤 春夫
出版日
2010-10-09

【おすすめ映画原作】大林宣彦流の解釈で少年少女が生き抜く姿をセンセーショナルに描く!『漂流教室』(1987年)

『漂流教室』は、ホラー漫画の第一人者である楳図かずおの漫画作品です。1972年から『週刊少年サンデー』にて連載されました。未来の荒廃した世界に送られてしまった小学生の姿を描いた物語です。

主人公の高松翔は小学6年生。ある日、授業中に大きな地震に襲われ、外を見ると荒れ果てた大地と化していました。教師は全員が亡くなり、生き残りは生徒たちだけに。やがて、荒れ果てた世界は文明が崩壊した未来の世界だとわかり、生き残りのため奮闘しますが、争いが起き……。ただのホラー作品ではなく、恐怖のなかでも子どもたちの生き抜こうとする姿、親子の絆などが描かれています。

1987年大林宣彦によって同名タイトルで実写映画化が実現。大林作品『野ゆき山ゆき海べゆき』で映画デビューを果たした林泰文が主演を務めました。映画版では、未来志向でポジティブな作品となるなど原作とはかなり異なる物語となっており、原作と映画と別の作品として楽しめます。今井美樹の主題歌が印象的な作品です。

原作の詳細が気になった方は、こちらの記事もご覧ください。 

<楳図かずおのおすすめ漫画ランキングベスト5!ホラー漫画の神様! >

著者
楳図 かずお
出版日

【おすすめ映画原作】でこぼこコンビを大林宣彦が竹内力と三浦友和で映像化!『おかしな2人』(1988年)

『おかしな2人』は、『釣りバカ日誌』で有名なやまさき十三が原作、さだやす圭が作画を担当した漫画作品です。

ヤクザの室田は、流れ者の山倉を殺して保険金で借金を取り戻そうと、フィリピンまで追いかけてきました。しかし殺すことはできず山倉と組むことに。そんなおかしな2人が一攫千金を求めて暴れ回る姿を描いています。でこぼこコンビのバディ感が非常に面白おかしい物語です。

この原作を元に大林宣彦が実写映画を監督しました。タイトルは『日本殉情伝 おかしなふたり ものくるほしきひとびとの群』。衣装などのビジュアルは再現しつつ、ストーリーに関しては大幅に変更されオリジナルの展開となっています。主演は新人の竹内力と三浦友和が務めました。Vシネマの帝王となる前の竹内力にも注目です。

著者
["やまさき 十三", "さだやす 圭"]
出版日

【おすすめ映画原作】ひと夏の妖しい経験『異人たちとの夏』(1988年)

山本周五郎賞の記念すべき第1回受賞作品『異人たちとの夏』。『ふぞろいの林檎たち』などの脚本家としても知られる山田太一の小説です。映像化や舞台化もされている人気作品。

ある夏の日、原田は懐かしい人に出会います。それは、在りし日の父母でした。また、同じマンションに住む桂という不思議な女性にも出会う原田は、彼女と愛し合うように。早くに両親を亡くした彼は足繁く父母のもとに通い、しだいに衰弱していくのでした。

1980年、この小説をもとに同名で実写映画化されました。主人公の原田を風間杜夫が演じ、両親役に片岡鶴太郎、秋吉久美子、妖しい女性・桂に名取裕子と豪華メンバーが集結しました。浅草という場所が映画の世界観により深みを出しています。

両親に会えたことが嬉しく、見た目は大人のまま子どものように振る舞う原田。父とキャッチボールをするシーンは映画史にも残る感動的なシーンです。

原作の詳細が気になった方は、こちらの記事もご覧ください。 

山田太一のおすすめ文庫小説5選!映画『異人たちとの夏』原作者

著者
山田 太一
出版日
1991-11-28

【おすすめ映画原作】大林宣彦の人気作!儚く美しい姉妹の愛『ふたり』(1991年)

小説『ふたり』は赤川次郎の代表作。彼の多くの著書のなかでも大人気作品です。

北尾実加は、高校2年生の姉・千津子を事故で亡くしてしまいます。ある日、千津子の声が聞こえてくる実加。千津子の励ましにより、悲しみを乗り越え恋や友情、ピアノにスポーツと懸命に前に進む実加。しかし、父親の浮気の発覚により家族は徐々に崩壊、やがて千津子の声も聞こえなくなってしまい……。

1991年に公開された同名の実写映画は大林宣彦監督の作品。「新・尾道三部作」として製作されました。映画は原作にほぼ忠実ではありますが、千津子の声だけという設定を、幽霊として姿を現すという設定に変更しました。

大切な人との別れが描かれた本作。別れを忘れないようにと生きる一方で、少しずつ心から離れていってしまうもの。しかし、それも成長に必要なことかもしれないと感じられる1冊です。

原作の詳細が気になった方は、こちらの記事もご覧ください。 

<赤川次郎の初心者向けおすすめ代表作ランキングベスト9!>

著者
赤川 次郎
出版日
1991-11-28

【おすすめ映画原作】大林宣彦がロックにかける高校生の青春の1コマを撮影!『青春デンデケデケデケ』(1992年)

第105回直木賞を受賞した芦原すなおの青春小説『青春デンデケデケデケ』。1960年代、香川県観音寺市に住む高校生たちがアメリカのバンド・ベンチャーズの「パイプライン」から影響を受け、ロックバンドに青春をかける物語です。

登場する数々の名曲は、ロックファンでなくとも知っているものばかり。そんな音楽に乗せて、きらきらとした青春の1ページが描かれた作品です。

大林宣彦監督が、この原作を実写映画にしました。高校生たちのキャスティングも素晴らしく、大林作品馴染みの林泰文や浅野忠信が出演。彼らのはちきれんばかりの青春は必見です。

原作と同じ香川県を舞台にすることで、その土地の持つ独特な雰囲気と観音寺弁がリアルさを生み、作品に深みを出しています。劇中でももちろん60年代ロック・ミュージックが使用されています。

原作の詳細が気になった方は、こちらの記事もご覧ください。 

<本当に面白い直木賞受賞作品おすすめ10選!【1990年代編】>

著者
芦原 すなお
出版日

【おすすめ映画原作】ノスタルジック・ファンタジーの傑作!『はるか、ノスタルジィ』(1993年)

児童文学『おれがあいつであいつがおれで』『なんだかへんて子』を大林宣彦の実写映画化へ提供してきた山中恒が、大林映画のために書き下ろした作品が『はるか、ノスタルジィ』です。

山中恒の故郷である北海道・小樽が舞台。ルポライター・舞台作家である綾瀬慎介が、記憶に残る少女遥子にそっくりな少女はるかとの出会いによって、少年時代の痛ましい記憶を辿ることに。そんな中、2人の前に高校生の慎介が現われ……。

映画では、綾野慎介を勝野洋、はるかと遥子を石田ひかりが務めました。石田は映画『ふたり』に続いて、大林作品に。友情出演として多岐川裕美、石田ゆり子、入江若葉、岩松了など豪華ゲストが出演しているのもみどころのひとつです。

山中恒&大林宣彦コンビによるノスタルジック・ファンタジーの決定版ともいえる作品となりました。

著者
山中 恒
出版日

【おすすめ映画原作】時代の先を走る大林宣彦の大作『雨の旅人』(1993年)

放送作家や脚本家として活躍する末谷真澄の小説『雨の旅人』。時空を超えて一寸法師ほどの小さな侍と少年の交流を描いた物語です。

小学生の楠林悟はある日、水の精だという墨江少名彦に出会います。少名彦は一寸法師のような小さな侍の姿をしていました。この出会いを通して、自然について、武士の心得などを学び少しずつ成長していく悟。一方、少名彦は水質汚染が原因で弱まっていくのでした。自然保護や人間としての優しさなど考えさせられる物語です。

『水の旅人 侍KIDS』というタイトルで、原作者の末谷真澄が脚本、大林宣彦が監督を務め実写映画化。水のシーンが多く、当時の最新技術を利用した合成作業が多く、映像の魔術師・大林宣彦の腕があってこその大作となりました。

少名彦を山崎努が演じました。また、原田知世が10年振りの大林作品に参加していることでも話題に。現代にも通ずる普遍的な内容は老若男女問わず楽しめます。

著者
末谷 真澄
出版日

【おすすめ映画原作】大林宣彦が女性の輝く瞬間を描く!『女ざかり』(1994年)

鋭い評論家やエッセイストとしても知られる丸谷才一のベストセラー小説『女ざかり』。新聞社の論説委員の女性が、社説に対し思わず受けた政府からの圧力に反撃していく物語です。贈与論、御霊信仰、憲法廃止論などの社会問題を織り交ぜながら、エンターテインメントに徹した見事な作品です。

監督は大林宣彦が務め、女性の輝く瞬間をテーマに映画化しています。主人公の女性論説委員・南弓子を吉永小百合が演じています。第49回毎日映画コンクール女優主演賞を受賞し、原作の内容も含め非常に話題となった作品です。

昨今話題となるジェンダーの問題。本作では女性を主人公としていますが、いわゆる「女らしさ」だけでなく「男らしさ」というものも上手に描写されています。そういった視点から本作を読んでみると、主人公がより魅力的に見えてくるかもしれません。

原作の詳細が気になった方は、こちらの記事もご覧ください。 

<丸谷才一のおすすめ作品5選!『ユリシーズ』を翻訳した作家の名作から随筆>

著者
丸谷 才一
出版日
1996-04-10

【おすすめ映画原作】「新・尾道三部作」の第2弾!『午前0時の忘れもの』(1995年)

『午前0時の忘れもの』は、赤川次郎が描くファンタジー小説です。

バスの転落事後で湖の底に沈んでしまった人たち。残された家族や恋人たちは行き場のない悲しみに暮れていました。事故が起きてから1ヶ月後、亡くなった人たちが、愛する人に別れを告げるため、午前0時に深夜のバス・ターミナルにやってくるのでした。命の輝きと愛することの素晴らしさを描く赤川次郎の最高傑作です。

映画『ふたり』に続き、赤川次郎のファンタジーを『あした』というタイトルで実写映画化した大林宣彦。「新・尾道三部作」の第2弾作品です。

『あした』というタイトルに込められた思いは、残された人たちが愛するものたちとの別れを胸に、新しい「あした」へと旅立つさまを意味しているのでしょう。

著者
赤川 次郎
出版日

【おすすめ映画原作】大林宣彦が三毛猫ホームズを映像化!『三毛猫ホームズの推理』(1998年)

血を見るのが苦手で女性恐怖症という刑事・片山義太郎は、女子大で起きた殺人事件を担当します。捜査の中で殺害された学生が売春に関わっていたことがわかり、片山は大学に潜入することに。しかし、学長の森崎も殺害されてしまい、彼の飼い猫であるホームズを引き取ることになった片山。果たして事件のゆくえは……。

赤川次郎の長編推理小説『三毛猫ホームズの推理』は1978年に発表され、以降「三毛猫ホームズ」シリーズとして大人気に。猫を主人公にした推理小説に、多くのファンが魅了されています。猫とダメ刑事のコンビが可愛く、登場人物のキャラクターも魅力的で、事件の謎も含め非常に楽しい推理小説です。

映画、テレビドラマ、漫画など多くの派生作品が作られていますが、1998年には大林宣彦監督が『三毛猫ホームズの推理<ディレクターズ・カット>』というタイトルで実写映画化。再度、赤川次郎原作に挑戦しています。本作の片山を演じたのは陣内孝則です。癖のある三毛猫のホームズが探偵さながら事件を解く鍵を見事に見つけていきます。

原作の詳細が気になった方は、こちらの記事もご覧ください。 

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著者
赤川 次郎
出版日

【おすすめ映画原作】大林宣彦が撮る愛に狂う女の性!『SADA』(1998年)

畳屋の娘として生まれた阿部定は、芸者から売春婦となります。各地を転々としていたところ、「きく本」という料亭で働くことに。そこで主の喜久本龍蔵と出会うことになるのでした。定が狂おしいほどの愛に生きる姿を生々しく描いた衝撃作です。
 

脚本家としても活躍する作家・西澤裕子の『SADA』は、昭和11年、日本中で騒がれた「阿部定事件」を描いた作品。愛した男の性器を切断するというなんともセンセーショナルなその事件は、多くのマスコミに取り上げられ注目を浴びました。

この原作を『SADA ~戯作・阿部定の生涯』というタイトルで実写映画化した大林宣彦。脚本は原作者の西澤裕子が務めました。定には黒木瞳、喜久本龍蔵に片岡鶴太郎といった豪華な顔ぶれが集結。黒木の演じる定の男を狂わす妖艶な演技は高く評価されました。ベルリン国際映画祭国際批評家連盟賞を受賞した傑作です。

著者
西沢 裕子
出版日

【おすすめ映画原作】大林宣彦と山中恒の4度目のタッグ!『とんでろじいちゃん』(1999年)

山中恒原作の児童文学『とんでろじいちゃん』。ぼんやり考え込むくせがある小学3年生のユウタは「ボケタ」というあだ名をつけられています。ユウタは、夏休みの間、本当に「ぼけた」おじいちゃんの見張りを頼まれることに。そんな見張りの中、ユウタはなんと空を飛んでいるおじいちゃんの姿を見つけるのですが……。不思議がいっぱいの楽しい物語です。

これまで何度も山中恒の原作を実写映画化している大林宣彦が、『あの、夏の日~とんでろ じいちゃん~』というタイトルで本作も映画化しました。本作が「新・尾道三部作」の最終作です。

夏の尾道を舞台に、おじいちゃんと孫の少年が巻き起こす冒険を描いたファンタジーです。ストーリーの中ではさりげない伏線が張られていたり、尾道の町並みが美しかったりと見どころ満点。原作の楽しさそのままに映画化されています。

著者
["山中 恒", "堀田 あきお"]
出版日

【おすすめ映画原作】必ず訪れる「別れ」を大林宣彦が映画化『告別』(2001年)

赤川次郎の作品集『告別』。過去に繋がる電話ボックス、未来がわかる少女、不思議な力がある財布、人生をやり直したい死者、必ず訪れる愛する人の別れ。別れをテーマにした短編集です。

映画の中心となったのは『長距離電話』という作品。主人公が山道で偶然、電話ボックスを発見します。何気なく古い友人に電話をかけると、電話は過去へと繋がるのでした。電話を通して、やり直したい過去や、死んでしまったかつての恋人の運命を何とか変えようとするのですが……。

『長距離電話』を中心に脚色し、大林宣彦が『告別』というタイトルで実写映画化。映画の主人公は人生に疲れたサラリーマン。彼の心の再生を描いた感動のファンタジーです。

主人公を演じたのは、大林作品の常連でもある峰岸徹。デジタル・ハイビジョン・ドラマとして製作されているので映像の美しさは折り紙付きです。ぜひ、原作・映画ともにご覧ください。

著者
赤川 次郎
出版日

【おすすめ映画原作】日本文学史上最高のミステリー!『理由』(2004年)

『理由』は、宮部みゆきの長編推理小説。第120回直木三十五賞受賞しています。高級マンションで起きた殺人事件をドキュメンタリータッチで描いた斬新な物語です。

東京都荒川区にある高級マンション「ヴァンダール北千住ニューシティ」。誰もが憧れるマンションで起きた殺人事件を、何人もの人物を登場させ追っていきます。誰が殺され、誰が殺したのか。彼らは一体何者なのか……。謎が謎を呼ぶ日本文学史上最高の傑作ミステリーです。

2004年に大林宣彦によって監督された作品はWOWOWで放送された後、劇場公開されました。映画化さえも巻き込んだ形のメタフィクションになっており波紋を呼んだ作品です。

作品の魅力は何といっても宮部みゆきが得意とする人物描写。登場人物が非常に多い本作ですが、緻密な設定で矛盾がありません。また、宮部みゆきに珍しいルポタージュ風の作品で、実際に起きた事件と錯覚するほど。引き込まれること間違いなしです。

原作の詳細が気になった方は、こちらの記事もご覧ください。 

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著者
宮部 みゆき
出版日

【おすすめ映画原作】大林宣彦がセルフリメイク『おれがあいつであいつがおれで』(2007年)

1982年に大林宣彦によって実写映画化された『転校生』の原作となったのが、山中恒の児童文学『おれがあいつであいつがおれで』です。25年の時を経て、大林監督自身によるセルフリメイクがなされました。タイトルは『転校生-さよなら あなた-』。

原作は、ある日、小学6年生の斉藤一夫と斉藤一美の心が入れ替わってしまうというもの。一夫が引っ越しすることになり、焦る2人でしたが……。

今回の実写化でも年齢を引き上げるとともに、時代や子供たちの新しい生活様式を取り込みました。また舞台を尾道から信州へと移しています。主人公には、新しいヒロイン・蓮佛美沙子。大林も認めた実力派です。

心が入れ替わってしまうことでわかる自分のことや家族のこと、そして相手への気持ち。時代は変わっても変わらないもの、変わってはいけないものを伝えようとしているように思えます。児童文学の原作と1982年版映画、そして2007年版映画、どれも愛おしい作品たちです。

著者
["山中 恒", "杉基 イクラ"]
出版日

【おすすめ映画原作】大林宣彦が大事な人との別れを優しく描いた『その日のまえに』(2008年)

数々の文学賞を受賞した人気作家・重松清の『その日のまえに』。家族をテーマにした作品を多く発表している作者が、家族の幸福を問う物語です。

生と死を軸に展開するそれぞれの物語を集めた短編集。「その日」とは妻が死を迎える日のこと。大切な人の「その日」を迎えた夫とその子供を中心に、生と死、そして日常の幸せを見つめなおす心に響く作品です。

表題作の「その日のまえに」や「その日」「その日のあとで」は連作で、夫の目線で語る妻や2人の幼い子供が、非常に切なく描かれます。

この感動の連作物語は映画、テレビドラマ、朗読劇と多くの派生作品が生まれました。2008年に実写映画化したのが大林宣彦監督。南原清隆、永作博美が夫婦役を熱演しています。

子どもたちの将来を考え、かつて暮らしていた街を訪れるなど「その日」を迎えるまで、ゆっくり大事に過ごしていく様子が優しく丁寧に描かれた作品です。

原作の詳細が気になった方は、こちらの記事もご覧ください。 

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著者
重松 清
出版日
2008-09-03

【おすすめ映画原作】檀一雄が描く青春群像劇を大林宣彦が映像化!『花筐』(2017年)

『火宅の人』で知られる「最後の無頼派」檀一雄。その短編小説『花筐』は、架空の町を舞台に懸命に生きる若者たちの愛や友情を描いた青春偶像劇です。

アムステルダムからの帰国子女の榊山は、海辺の小さな町の大学予備校に入学します。しかし、始業の日にも関わらず教室を後にする鵜飼と吉良を思わず追いかけてしまった榊山。そこから彼らの排他的な生活が始まるのでした。戦争が影を落としながらも、若者たちの自由や生を求める心は変わらないさまを描いた作品です。

この『花筐』を『花筐/HANAGATAMI』というタイトルで、病魔と闘いながら大林宣彦監督が実写映画化。1941年の佐賀県唐津市を舞台に描いています。デビュー作『HOUSE』以前に脚本は書き上げられていた幻の作品。余命宣告を受けながらの撮影となった本作は、「生」や「戦争」に対する強いメッセージが込められています。映画と原作合わせてご覧になるのがおすすめです。

著者
一雄, 檀
出版日

【おすすめ映画原作】過去と未来を純粋な愛が繋ぐ『つばき、時跳び』(2021年)

熊本を舞台に、幽霊が出ると噂のある家に住む青年と江戸時代の美少女との150年という時を隔てたタイムトラベル・ラブストーリー『つばき、時跳び』。SF作家として知られる梶尾真治の小説です。

椿が咲き誇る古屋敷「百椿庵」。脱サラして専業作家になった井納は、幽霊伝説が残るその屋敷に住むことに。そんなある日、井納の前に着物姿の美少女が現れます。「つばき」と名乗る彼女はどうやら幕末の百椿庵に住んでいたようで……。生きる時代は違っても互いに惹かれ合う2人が非常に魅力的な作品です。

原作と同様に熊本を舞台に実写映画化の企画が進み、大林宣彦監督が挑むことになっていましたが、体調を考え断念。そこで監督補の予定だった行定勲監督がその想いを継ぎ、映画化することに。出演者などの詳細は未発表ですが、2021年に公開が予定されています。

幕末の熊本の風景や風俗、人物が丁寧に描写してあり、情景が浮かんでくる本作。時代を超えるラブストーリーに、最後はウルっと来てしまいます。

著者
真治, 梶尾
出版日

【監督作品一覧】大林宣彦の残した、長年色褪せない名作の数々

【監督作品一覧】大林宣彦の残した、長年色褪せない名作の数々

自主製作映画に始まり、日本の映画界をリードしてきた大林宣彦監督。反骨精神に溢れ、優しさに溢れ、映画を心から愛した映画監督でした。その新作をもう観ることができないと思うと、心から残念でなりません。しかしながら、これまで私たちにたくさんの作品を残してくれています。そしてその多くは、小説や児童文学、漫画の作品からの映像化です。映画と原作の世界、ぜひ合わせて楽しんでください。