人間の狂気に満ちたサイコホラーはお好きでしょうか? 幽霊とはまるで違う心理的な恐怖が描かれた作品は、映画、小説、ドラマ、と様々な方面で人気があります。 今回は、昔の漫画家の出世作から、最近のおすすめ作品までずらっと21タイトル紹介!
不思議な力を持った不老の少女おろちが、悲運な人々とふれ合い、その人生を見つめていくオムニバス形式で、9つの話があります。心理的な怖さ、スプラッター的な怖さ、哲学的な怖さ、とその内容は多岐に渡ります。流石の楳図かずおです。
恐怖漫画で有名な楳図ですが、本作では幽霊的な恐怖ではなく、人が産まれながらに持ってしまっている闇の部分を存分に描いた、圧倒的鳥肌サイコホラー漫画に仕上がっております。一話目の姉妹という話では、女の度を越えた執念や見るに堪えない女心が描かれています。
- 著者
- 楳図 かずお
- 出版日
嵐のよる、雨風を凌ぐために訪れた屋敷には、二人の姉妹が暮らしていました。おろちには洗脳の能力があるのか、二人の額に手をかざすと、新しく来たお手伝いさんだと信じてしまいます。さらに、ひたいにクモがはっていたと言い、何も無かったはずの手の中からクモを見せ、自分の行動を納得させてしまうのです。しかも驚いたことにクモは見えない所まで逃げていくとボタンに姿を変えてしまいます。
洗脳や物質変化ができ、死なないという、もはやおろち自身が怖いようにも思えるのですが、この姉妹はさらにその上をいきます。おろちが誤ってお皿を割ってしまい、数を数えながら拾い集めていくと、二人の表情はどんどん恐怖に支配されていきます。そして18まで数えると、「ああーーっ」と発狂しながら頭をガンガン叩き、「こわい!!」と叫び出すのです。何が怖いか分からないのに、そのシーンがもう怖すぎます。
その後18歳になると醜くなってしまう家系だという事実が判明するのですが、物語はそこからさらに展開します。まさに楳図ワールドな展開は、実際にお手に取ってお楽しみいただきたいです。迫力のある絵、先の読めないストーリー。そして、人間の恨み辛み、怨念、執念、憎悪、あらゆる負の感情が爆発している本作は、サイコホラー作品不動の1位ではないでしょうか。
驚くことに映画化もされている本作は、サイコホラーが好きならば読まないという選択肢はありません!
ホラー作品を数多く描いた楳図かずおの作品を紹介した、こちらの記事もあわせてご覧ください。
楳図かずおのおすすめ漫画ランキングベスト5!ホラー漫画の神様!
ホラー漫画の第一人者と呼ばれる、楳図かずお。その恐ろしくも美しい絵はイラストとしても人気で、Tシャツなどをはじめ、楳図の絵を使用したグッズも作られるほどです。そんな楳図の漫画作品は、ただホラーなだけではないのです…。そこのあなた、読んだことがないなんてもったいない!今回は楳図の漫画の中でも特におすすめしたい作品を、ランキング形式で5作紹介していきます。
江戸川乱歩の中編小説『パノラマ島奇談』が原作なのですが、それを忠実と言わせる程のクオリティで書き上げた本作は、一見の価値あり!昭和レトロの雰囲気を漂わせた、美しさと禍々しさを孕んだ、幻想的で怪奇的な絵柄は、読者を一瞬でその世界に引き込んでしまう力があるように思えます。エロさとグロさを併せ持った本作はサイコホラーの代表格と言っても過言ではありません。その証拠に、2009年には手塚治虫文化賞を受賞しています。
夢想家の売れない物書きの人見広介は、現実世界に楽しみを見いだせないでいました。極貧生活の中、夢想した理想郷を自身の小説の中で描き、またユートピア小説か、と編集者に半ば呆れられたようにダメ出しされてしまうのです。
半年後、訪ねてきた友人が君の兄弟の菰田源三郎が亡くなったと告げます。二人は本当の兄弟ではなく、学生時代、双生児と見紛うほどに似ていたため兄弟だとからかわれていたのです。片や紀州でも一番の富豪の御曹司、自分は宿代すらままならない身、姿以外はどこも似ていないと揶揄しますが、友人が持ってきたここ最近の菰田の写真は髭や眼鏡など多少の違いはあるものの、まるで双生児のように似ていたのです。そこから人見は、彼の莫大な財産を使って理想郷を現実のものにしていくことを計画しますが…。
- 著者
- 丸尾 末広
- 出版日
- 2008-02-25
本作も人間の欲の深さが描かれていますが、乱歩原作なだけあって性への欲求も色濃く描かれています。文章から創造していた、人見が作り出すユートピアの姿を絵として見ることができるのは、間違いなく一番の見どころです。一コマ一コマが魅惑的な作品ですので、見開きなどの力の入ったページは圧巻です。
圧倒的な乱歩の世界観を絵画とも思わせる淫靡で美しい絵で魅せてくれる1冊となっております!乱歩ファンにもぜひ読んでいただきたいです。
ユウは幼い頃から生物の観察が好きな少年でした。しかし観察好きがすぎる故に感情の機微には疎く、時に残虐な顔を覗かせます。そんな彼にブレーキをかけてくれたのが祖母。彼が蝶を捕まえ、その羽をちぎって遊んでいたところを見て、「ユウちゃんと同じ大切な命なんだよ」と諭すのです。
しかし祖母が亡くなり、彼女がネズミを駆除するために殺していたことを知り、なんだ、いいんじゃん、と気づくのです。そしてその残虐性をおさえなくなり……。
- 著者
- ワタナベ チヒロ
- 出版日
- 2010-06-17
本作は1話完結の短編集。実際の猟奇殺人事件などを題材にしています。1話目は「神戸連続児童殺傷事件」をモデルにしたと思われるストーリー。祖母が死んでから「死」への興味が抑えきれなくなった少年を描いています。本作は彼の欲望が加速度的に増していく様子が恐ろしいです。
少年は祖母が亡くなってから、困った時にどうすればいいか、悪いことかどうかを自分でつくった「生と死をつかさどる神」に聞くことにします。善悪の判断が通じない相手こそ怖いもの。彼は自分でつくった存在を絶対のものとしており、その客観性のない危うさにひやりとさせられます。
彼は自分でつくった神様の言う通り、「死はエンターテイメント」だと思うのです。既成概念から自由になった彼は虫から動物、そして人間へとその欲求を満たす対象を大きくしていきます。
こちらは多少グロいシーンもあるのでスプラッタホラーもお好きな方におすすめ。光のない目をした少年が幼い子供たちを解剖していく様子は凄惨。実際にあったことだから、より人というものの深淵を覗いたような恐ろしさを感じるホラー漫画です。
バラを通して繋がった隣人同士、ステータスと美しさに取り憑かれたママモデル、仲良し女子高生ふたり組。この3組の言葉にならない心の奥底の欲求がまざまざと描かれたのが『スイートホームシンドローム』です。
- 著者
- 町村 チェス
- 出版日
- 2017-02-10
全体的な世界観は表紙の通り可愛らしい、柔らかな雰囲気で包まれています。しかしその物語の中に表面上には出てこない人間の醜い部分が織り込まれているのです。
その作品はどれも読む者の心に共感と恐怖を植え付けてくるもの。似たような気持ちを味わったことはあるけれど、この作品の人々はどこか「一線を超えた」人なのだと思わされる相容れなさがあるのです。
しかし本当にそうでしょうか?自分はここまではいかないという人々を、どこにでもありそうな日常、家の風景に溶け込ませているところも本作の恐ろしいところ。
自分に似てるけど自分とは違う、でもやっぱり身近なところにある恐怖かもしれない、と幾度も読者の心を困惑させるサイコホラー漫画です。
無料動画配信サイトやSNSで密かに話題になっている「新聞男」。彼は悪意を感じられる人々に「予告」と称して制裁を下し、その様子をネットに晒していました。
徐々に力を増していく彼に立ち向かうのは警視庁のサイバー犯罪対策課。はたして警察は巧妙な手口で次々と予告を実行する犯人をつかめることができるのでしょうか。
- 著者
- 筒井 哲也
- 出版日
- 2012-04-10
本作は新聞男に引き寄せられ、膨張していく人々の欲望が恐ろしい作品です。新聞男がアップした動画へのコメントは一見非難一色。しかし、それはスパム報告されたコメントを非表示にした場合です。非表示コメントを表示すると、新聞男を応援する声も多く見られます。しかし支持層はまだ2割ほどです。
そんなある日、新聞男は犯行の理由を放送で視聴者に向けて語ります。
「俺はお前達の生活を助けてやることはできないが
お前達が今鬱積させているその感情を少しくらい救ってやることはできる
もしも今後理由なくお前達を侮辱する人間達が現れたら俺に言え
俺が殺す 必ず殺す
だから何も溜め込むな」
そしてこの放送を機に、支持層が不支持層の数を上回るのです。警察は叩けば叩くほど新聞男の味方が増えてしまいそうなこの状況に焦ります。
彼の行動の動機は何なのか?警察は彼を捕まえられるのか?加速して膨張していく人々の欲望の様子にヒヤリとさせられる作品です。
『予告犯』の作品に関しては『予告犯』全3巻の見所ネタバレ紹介!社会派ダークヒーロー漫画に泣ける!?で詳しく紹介しています。
『予告犯』全3巻の見所ネタバレ紹介!社会派ダークヒーロー漫画に泣ける!?
天才筒井哲也の描いた『予告犯』をご紹介します。現代社会に警鐘を鳴らすかのような問題提起、息つく間もなく巻き起こる事件の数々。張り巡らされた伏線が回収され、真実が明かされるラストの瞬間、読者は戦慄するでしょう。 スマホアプリで読むこともできるので、そちらもどうぞ。
修学旅行の帰り道の新幹線でトンネルを走行中に事故にあったテル。ふと目を覚ますと周囲は真っ暗で、自分以外の人間の存命を確認できません。とりあえず見つけたライトで新幹線の外に出てトンネルの先まで歩きますが、なんと前後の出口が崩れたトンネルによって塞がれていました。
そのあと何とかアコとノブオという生存者を見つけますが、希望は全く無い状態で……。
- 著者
- 望月 峯太郎
- 出版日
- 1995-03-01
本作は追い詰められた状況下でどんどん精神状態を崩していく少年たちの様子にハラハラする物語です。
原因不明で暑いトンネルの中に閉じ込められた状況、ラジオから途切れ途切れに聞こえてきた「緊急放送」という言葉、徐々に大量の死体に囲まれていることに慣れてくる怖さ、忘れた頃に襲ってくる地震……。
そんな過酷な状況の中でいちばんはじめにおかしくなったのはいじめられっ子だったノブオでした。彼は自分こそがこの場を支配すべき者だと言って包丁を持ってテルやアコを脅します。そんなノブオの様子に我慢しきれなくなったテルは、ついに彼を殺そうとし始め……。
果たして彼らは無事生還することができるのか?ぜひ作品で追い詰められた人間の本性をご覧ください。
『ドラゴンヘッド』の作品に関しては漫画『ドラゴンヘッド』全10巻分の魅力をネタバレ徹底考察!で詳しく紹介しています。
漫画『ドラゴンヘッド』最終10巻までネタバレ考察!極限状態で見える人間の本質
望月峯太郎が描くサバイバルパニック漫画『ドラゴンヘッド』。2003年には実写映画化もされた大ヒット作です。新幹線の車中で、大災害によりトンネル内に閉じ込められてしまった主人公が、絶望的な状況の中でも自宅のある東京を目指します。息の詰まるような世界の荒廃とホラー要素を多分に含んだ本作の魅力をご紹介しましょう。
過度に整形を繰り返して時代の寵児となったりりこ。彼女の顔は誰もがなりたいと焦がれるような完璧さがあります。もともとかなりのひどい顔立ちだった彼女は一変した自分に心酔し、女王のように周囲に振舞っていました。
しかし容赦なく時代の終わりは告げられます。崩れてくる整形、仕事のストレス、「天然」で美しい期待の新人の登場……。そしてりりこは徐々に狂っていくのです。
- 著者
- 岡崎 京子
- 出版日
- 2003-04-08
りりこが異常なのは時代の欲望を余すとこなく体現しようとすること。多かれ少なかれ芸能人は一般大衆の欲望を体現する役割がありますが、りりこにとってそれは「美」。性格も破綻しており、過去の付き合いも絶った彼女にとってはそれだけが心の拠り所でした。
そして唯一の存在意義を奪われそうになった彼女は最後まで「大衆の欲求」を満たす行動を起こし、引退します。そこまでのヒートアップしていく人々の欲望、りりこの狂いようはかなり恐ろしいものです。
沢尻エリカ主演で実写化もされた作品ですが、何かのスピードが手に負えないほど増していく恐ろしさ、女の欲求の生臭さは原作でしか味わえません。ぜひ本編でその怖さを堪能してみてください。
絵柄や色の濃淡、影のつけ方、トーンの使い方が美しく、なんともファンタジー感を醸し出しています。表紙も含めて4ページ目までは、これがサイコホラーだとは気づかないかもしれません。しかし、ページをめくっていくと、サイコホラーなのだと理解するはずです。なぜならそこで、人ならざる者が不気味な笑い声を発しながら半狂乱しているのですから。
運命金貨という、人間と人間でないものをつなぐ金色の扉。それ自体はまさしく金貨なのですが、それを手にするとどんな人でも、世界中に潜む悪魔や精霊たちとの交易世界に永遠に組み込まれてしまうという代物。そんな魔力とも言える力に導かれる人々の狂気の沙汰が包み隠さず描かれているので、読み応えは一級品です!
- 著者
- 古海 鐘一
- 出版日
- 2012-04-10
そして、人間と人間でないものを物の売り買いで結ぶ役目を担っているのが本作の主人公、交易世界(=バベルハイム)の商人ユージン。冒頭で半狂乱になっていた女性も取引相手です。彼女には人間の血と推測できる、A、B、O、ABというラベルが付いたボトルが渡されます。「君はリスクを冒して獲物を狩らなくても済むわけ」(『バベルハイムの商人』より引用)という発言が、この世界で生き難くなってしまった者たちの心情を描いているようです。
様々な人や悪魔などが登場して、それぞれの抱える狂気や陰湿な性格が、読むペースを一気に速めます。次に出てくる自己顕示欲の塊のような男も、若く美しい奥さんと財力をひけらかす為に運命金貨を手に入れ、ユージンに商談を持ち掛けます。希望通りの品を手にした男は、誰にも見せてはいけないと忠告されたのにも関わらず、見せびらかしてしまうのですが、人間の強欲とも言える欲の深さがしっかりと描かれています。その後の展開は、是非読んでみてのお楽しみにしてください。
読むほどにハマっていく中毒性の高い作品なので、じっくり楽しんでいただきたいです。
学校でいじめられている主人公、美沙緒を助けてくれたのは、病気で学校を休んでいた冴。冴は学校中から人気があり、容姿端麗、文武両道、とまさに完璧な女子高生。いじめを止めさせてくれた冴と急速に仲良くなれた美沙緒は、これまでに感じたことのない充実感に、喜びを隠せません。
- 著者
- 内水 融
- 出版日
- 2015-04-20
しかし、そんな喜びも束の間、冴と縁を切れと書かれた謎の手紙が美沙緒のもとに届きます。いじめも無くなり平穏となった日常に突如舞い降りた不穏な空気。戸惑いを感じた美沙緒は、人気者の冴と仲良くしていることへの嫉妬だと考え、冴と少し距離を置こうとします。その日一人で帰ろうとするとしつこいナンパに絡まれてしまい、困惑する美沙緒を助けてくれたのは、またも冴でした。
冴にお礼を言うと、どうして一人で帰ろうとしたのか聞かれます。人気者の冴を一人占めしているようで、悪いと感じたと伝えると「いじめられてたから同情してるんじゃない 私は美沙緒が好きだから一緒にいるの!!!」と、美沙緒にとって涙が出るほど嬉しいことを言ってくれます。
しかし、しばらくすると美沙緒は、冴の言動に不信感を覚え始めることに。他のクラスメイトと遊ぶことを「私がいるんだから他の友達なんていらないでしょ?」と平然と言い、買い物で美沙緒の気に入った服を買おうとすると、それは叩き落として「こっちのほうが似合うって言ってるでしょ コレにしなよ…」と鋭い目つきで言うのです。
そして極め付けは「私が美沙緒のこと一番考えてる 美沙緒のこと大好きだから…」(一重カッコ内すべて『サエイズム』より引用)と微笑みを浮かべるシーン。さすがに美沙緒も恐怖で顔色が変わってしまいます。冴の独占欲、束縛癖が全面に感じられる、最高に恐ろしいシーンです。
友情という誰もが持つ情をモチーフに、束縛、独占欲という、普段隠しているような感情を、人間の怖さとして描いた本作は、冒頭から休まず一気に読ませてくれます。サイコホラー好きも納得の作品です!
『サエイズム』の作品に関しては漫画『サエイズム』やばすぎる冴の正体を全巻ネタバレ紹介!で詳しく紹介しています。
漫画『サエイズム』結末までを全巻ネタバレ紹介!やばすぎる冴の正体と迎えた最期は?
1人の少女の狂気的な愛情と、それに立ち向かう主人公たちを描いた『サエイズム』。この記事では、冴と、本編の魅力をご紹介します。
本作は6つの狂気が描かれたオムニバス形式となっています。単巻漫画ですが、そのボリュームはずっしり重く、サイコホラーならではの恐怖が十分に味わえます。
ゴスロリ少女、人形作家、あやしげな画廊に虫と、それぞれが強いインパクトを持っています。その強いインパクトは登場人物やストーリーからビシビシと伝わるのですが、それ以上に絵が可愛いのが問題なのです。少女漫画らしい、可愛いタッチの登場人物が、こぞって怖いことを言っていて、そのギャップが一番怖い! 表紙を見るだけでも伝わるのではないでしょうか。
- 著者
- 柏屋 コッコ
- 出版日
- 2010-05-17
1つ目の作品『ゴスロリ綺談』を少しご紹介します。
学校では地味で目立たない少女マヤは、退屈な日常を過ごしていました。そんなとき、ネットで知り合った愛可にゴスロリの世界を教えてもらい、愛可とゴスロリの世界に魅せられていきます。週に一度開かれるゴスロリの為のお茶会デビューを果たすと、その興味はより強くなっていくのです。
二度目のお茶会に出席した時に、マヤは他の人より知識が劣っていることや、大好きな愛可と話せないことで疎外感を感じてしまいます。その帰り道にマヤは、包帯をしている人が多かったことを何気なく愛可に聞き、それがリストカットの痕だと知り「耽美を追及するとダークな世界に入っちゃうのよね ゴズ&血は究極よ」(『スウィート・ビター・ガールズ』より引用)という愛可の言葉に胸を躍らせます。
そして、愛可に注目してもらいたいが為にリストカットをするのです。流れ出る血を見て、キレイと恍惚の表情を浮かべているシーンは鳥肌もの。その後、愛可に満足げに傷口を見せるのですが、たいしたことないと一蹴されてしまいます。とっさにアームカットをすると言って愛可を喜ばせますが、少し不安気なマイ…。そこに、お茶会のマダムが微笑みを崩さずに言うセリフが、今後のストーリーを匂わせていて、更に恐怖を煽ります。
可愛らしい登場人物にゾワゾワさせられる本作、サイコホラー漫画の手始めにいかがでしょうか。
名女優、誘の娘である累は亡くなった母に似ない醜い容姿のせいでいじめられてきました。ある日、学芸会の劇を巡っていじめられた累は辛いときは口紅を使いなさい、という母親の生前の言葉から、形見の口紅を塗っていじめっ子の美少女に口づけします。すると累の顔は彼女の美しい顔になっていたのです。
そう、この口紅は顔を入れ替えられる力があるのでした。そして大人になった彼女は母のように人の顔を奪って女優としての地位を確立していくのですが……。
- 著者
- 松浦 だるま
- 出版日
- 2013-10-23
『累』は主人公の壮絶なまでの美しい顔、演技への執着が恐ろしい作品です。醜い容姿に過度の恐れをもつ累。当初は協力的なニナという美人女優の顔を使って芸能活動を行いますが、彼女の死によって、次なる顔、野菊と出会います。
しかし、彼女が自分を陥れようとしていることを知ると、彼女を監禁。そしてそれ以降他人の顔を利用することになんのためらいもなくなっていくのです。ここまでの一連の流れは壮絶。彼女の変化してしまう様子が恐ろしく描かれています。
そしてその後の迷いがなくなった累も恐ろしい。演技のためなら利用できるものはすべて利用しようという冷淡な精確になっていくのです。果たして美貌と演技に取り憑かれた女はどこへいくのか?作品でお確かめください。
『累』に関してはこちらの記事で詳しく紹介しています。あわせてご覧ください。
漫画『累』の魅力を最終14巻までネタバレ考察!女って本当に怖い……
2018年に実写映画化が決定したサイコホラー漫画。女、そして人間というものの恐ろしさを感じさせられる作品です。今回は本作の恐ろしさを詳しくフォーカスしていきます。13巻までのネタバレを含むのでご注意ください。
ある日、人気作家の溝呂木のもとに警察から電話がかかってきます。飛び降り自殺をした藤乃朱の発信履歴に彼の名前があったのです。遺体が安置されている病院にいくと、それには頭がありませんでした。そしてその病院には同じく発信履歴から呼び出されたという、朱の妹を自称する三木桜という女性がいて……。
- 著者
- 中村 明日美子
- 出版日
- 2010-06-09
「世界には二つのものしかないと思っていた
『こっち』と『あっち』だ
そして 自分は常に「こっち」に立っているのだと」(『ウツボラ』より引用)
こんな言葉から始まる本作は人気作家を巡る、ふたりの女性を描いています。事件は謎が謎を呼ぶストーリー。女性たちの溝呂木への思いには暗闇を覗いてしまったかのような不可解な怖さがあります。
本作は境目が曖昧な作品です。ふたりの女性はどちらがどちらなのかという判別に揺らぎをかけてきますし、ラストで明かされる真相によって物語の認識の境目にも揺さぶりをかけてきます。
時系列と登場人物の視点をこれでもかと錯綜させる本作は自分の知らないところでキャラクターたちが思惑をもって行動している恐ろしさがあります。分からないという怖さ。それは分かりやすい起承転結で描かれた作品にはないスリルがあります。
ふたりの女性、どちらがどちらなのかわからないミステリー要素も楽しめる、ミステリーホラー漫画。おすすめです。
『ウツボラ』の作品に関しては中村明日美子の名作漫画『ウツボラ』をネタバレ徹底解説!で詳しく紹介しています。
中村明日美子の名作漫画『ウツボラ』をネタバレ徹底解説!
この記事では多くの謎に包まれた『ウツボラ』の真相について全2巻のネタバレを交えながら解説していきたいとも思います。
何事も「傍観者」であることを望んで生きてきた主人公の雪輝は日常で見たり聞いたりしたことをすべて携帯に日記として記していた少年。彼は妄想のキャラクターのデウスとムルムルだけを友達としていました。
そんなある日、彼の携帯の日記にまだ見聞きしていない未来のことが記されるようになります。しかも何とそれは妄想の存在だったはずのデウスの仕業だと言うのです。
未来が分かるようになって喜ぶ雪輝ですが、その「未来日記」は彼をいれて12人使える者がいると知らされます。そしてその12人で「時期時空王」を決めるデスバトルが始まり……。
- 著者
- えすの サカエ
- 出版日
- 2006-07-21
アニメ化、ゲーム化もされた、えすのサカエの代表作品です。本作はサイコパス美少女として漫画界、アニメ界で有名な由乃の様子に恐怖を感じさせられます。
由乃は雪輝と同じクラスで、学年でも可愛いと噂される人気者。しかしその裏の顔は雪輝のストーカーだったのです。
とにかく雪輝と一緒にいることしか考えず、彼以外のものに全く興味がないのでかなり狂った行動をとる彼女。デスバトルではオノを使いこなして、何の躊躇も見せずに人を次々と殺していきます。
しかも由乃はその家庭環境にも恐ろしい秘密を抱えています。彼女は養護施設の出身で、そこから現在の家族に引き取られたのですが、彼女は広い家にひとりで住んでいるのです。では両親はどこにいるのかというと……。
詳細は作品でお楽しみください。普段が可愛いだけにサイコな様子がより恐ろしい、人気ヤンデレヒロインの様子が恐ろしい作品です。
歩いているだけで足蹴にされ、靴を舐めさせられるなど、ひどい扱いを受けている高校生の村井。しかし彼は自分を最底辺ではないと思って安心しています。
それは自分よりも「下の存在」山田がいるから。そして彼に自分がされているようにひどいいじめをするのです。
ある日、村井の前に死んだはずの幼馴染・遥が現れます。山田に彼女がいるということが分かって、クラスで最底辺になってしまいそうな村井は、本物の遥でなくてもいいからどうにか彼女のふりをしてほしいと懇願します。
そんな彼を見て、遥は「人間じゃ…なくても」と聞くのです。
- 著者
- 山口 ミコト
- 出版日
- 2012-05-22
本作はどんどんサイコパスになっていく村井の様子が恐ろしい作品です。
もとから歪んだ性格ではあったものの、当初村井はただの匂いフェチの変態というくらいの人物でした。しかし徐々に遥のふりをしているバケモノによって、追い詰められ、ついにはそのバケモノを殺めてしまいます。
そしてそこから物語は怒涛の展開。村井はどんどん姿も心も人ではないものに成り下がっていくのです。そのスピード感溢れる展開は手に汗握るもの。ぜひ作品で怪物になっていく男の物語をご覧ください!
神木一家は郊外に購入したマイホームで新しい生活を始めようとしている普通の家族。多少交通の便が悪いところもありますが、以前より広い家にみんな大満足でした。
そんな矢先、父親が急死します。そしてそこから家の中では様々な怪奇現象が起こるようになり、この家に何かいわくがあることに皆が気づくのです。それはサユリという少女の霊による仕業で……。
- 著者
- 押切 蓮介
- 出版日
- 2010-09-24
本作は『ミスミソウ』で少女の恐ろしい復讐の様子を描いた押切蓮介の作品です。1巻では普通のホラー漫画のような印象を受けるかもしれませんが、2巻からは少し雰囲気が変わります。残された祖母とサユリの恨みの気持ちに背筋が凍るサイコホラーの側面も出てくるのです。
特にサユリがなぜ見ず知らずの神木一家にこのようなことをするのかとなった経緯は悲しく、人間の汚い部分に恐れを感じさせられます。そしてその一件があったあとから恨みの気持ちだけでこの世に残った彼女のひどい行動は背筋が凍るもの。
人間であり、人間でなくなってしまった者の末路が垣間見えます。負の感情に操られると人間はここまで変わってしまうのかと思えるようなホラー漫画です。
日常生活を送っていると、丸や三角、四角といった様々な形が存在していることに気が付きます。その1つである渦巻きが、『うずまき』のキーとなる存在。幼児でも書ける、ぐるぐると線が渦巻いているだけの記号が、伊藤潤二の手にかかると、呪いを生み出す装置となってしまうのです。
黒渦町は、呪われた町だと言われている土地。女子高生黒島桐絵は、ある日彼氏である秀一に、この町は呪われていると告げられます。一緒に逃げよう、とおびえた様子の秀一ですが、桐絵は何が呪われているのか、理解できません。しかし、少しずつ小さな町を侵食している呪いに気が付いていきます。
- 著者
- 伊藤 潤二
- 出版日
本作はタイトルの通り、たくさんの渦巻きが登場するホラー漫画。ある人は渦巻きに魅了され、何でも渦巻きのものを集めて収集して悦に入り渦巻きを称賛する者もいれば、逆に恐怖を抱いてしまう者も登場、呪いの程度や方向性が変わってくるところが興味深いところです。なぜ渦巻きが呪いを生み出しているのか、わからないまま物語は進んでいくので、読者も渦巻きの事を考え、徐々に思考が囚われる感覚を味わうでしょう。
渦巻き柄が入った小物の収集程度ならかわいいもので、呪いが進んでいくと人が亡くなってしまう事態になるのが、ホラー漫画らしいところ。何故か身体が渦巻き状にねじれてしまったり、耳の中に渦巻きがいることに気が付き、自らの身体を傷つけて死んでいく姿は、現実にはない異質なものです。視認して初めて、これは異常事態なのだと感じた頃には手遅れ、読者も渦巻きの世界から抜け出せません。
渦巻きというと、ぐるぐる巻いているだけの、どこかのんきな雰囲気を持った形。そんなどこにでもある存在がもたらす恐怖は、想像以上の破壊力を持っています。作画は美しく、ホラーでありながらも、どこか絵画的な場面が多いところに、読者は魅了されてしまうでしょう。グロテスクながらも美しい、独自の世界観の虜になる作品です。
小さなころ、怪談や都市伝説に恐怖心を抱き、学校のトイレや帰宅途中の通学路、横断歩道が怖かったという体験は、誰にでもあるでしょう。子どもたちの恐怖を煽る怖い話はそこかしこにあり、自分が遭遇したら、という恐怖が見慣れた安全な場所を、恐怖に替えていきます。
タイトルの『バーバ・ヤガー』とは、ロシアの民話に登場する、特別な力を持った老婆のこと。日本でいうところの山姥のようなもので、子どもを襲って食べる、といった話が残されています。作中では山姥と言ったほうが馴染みやすいかもしれませんが、現代ではあまり馴染のある言葉ではありません。それだけに、山姥を見た、という状況が醸し出す、不気味な雰囲気に飲み込まれます。
- 著者
- ["きづき あきら", "サトウ ナンキ"]
- 出版日
四年前、子ども会のキャンプで1人の少女、豊田乃亜が失踪しました。山姥を見た、という犬丸ほのかの証言は受け入れられず、キャンプは中止になってしまいます。駆け落ちでもしたのでは、という噂もあり、楽しいはずだったキャンプに暗い影を落としました。それから四年、子ども会キャンプの同窓会に集まったかつての参加者たちは、ほのかの見た山姥の正体、乃亜の行方を探し始めます。
四年前の事件と現実が交差し、物語が進んでいく本作、読者は子どもたちから見たキレイで楽しいキャンプの、裏側にあった事を目の当たりにすることになります。誰がどんな役割を持っているのか、最初の段階では理解できませんが、少しずつ明るみになっていく事実に、驚愕することでしょう。なぜここまで、と目を逸らしたくなるような事実に、じわりと恐怖心が沸き起こってきます。
少女たちの描き方はむっちりとして可愛らしく、色っぽい場面も多め。さらに暴力描写は過激気味ということで、一方的かつ理不尽な状況が苦手、という方はご注意ください。1人の少女の失踪の真実と、人間の身勝手な感情が生み出す恐怖の連鎖、本当にこの人は大丈夫なのか、と疑心暗鬼になる事間違いなしのサイコホラー作品です。
「ディストピア」……それは、ある団地の住人がおこなっているネットゲームのタイトルです。ただひたすら殺戮を楽しむだけのそのゲームに、彼らはしだいにのめり込んでいくことに。
しかしプレイしていた住人たちが謎の死を遂げていき……!?
- 著者
- 筒井 哲也
- 出版日
インターネット上での殺戮ゲームと現実の世界を描き分けながら、しだいに人々が虚構の世界に影響を受けていく恐怖を描いたサイバースリラー作品です。
ネットの世界では、その匿名性ゆえに責任が放棄され、人間が持っている残虐性やエゴが露わになります。そしてゲームをプレイし続けた住民たちは、しだいにネットの世界と現実世界の境界があいまいになり、壊れていくのです……。
物語は、そもそも「ディストピア」とは何かという点から真実が浮き彫りになっていきます。このゲームの裏に隠された衝撃の真実と結末は、実際に読んで確認してみてください。
その時にしかない輝き、というものが人間には存在します。10代の青少年の輝きは特別なもの。特に女子高生は、少女から大人の女性に変化していく危うい魅力を持っています。女子高生という言葉自体に、特別な魅力が備わっているのです。
タイトルが衝撃的すぎる『女子高生に殺されたい』は、文字通り女子高生に殺されたい、という歪んだ願望を描いた作品。願望なら笑って済ませられますが、本作は願望を現実にしようと行動を起こしてしまうという、衝撃展開が待ち受けています。ギャグなのかと思いきや綿密に「殺される」計画を立てていく姿に、恐怖心をあおられます。
- 著者
- 古屋 兎丸
- 出版日
- 2015-02-09
高校教師の東山春人は、高校生の頃からどうせ死ぬなら、女子高生に殺されたいという願望を抱いて生きてきました。「オートアサシノフィリア」は、自分が殺されそうだという状況に、性的興奮を覚える、特殊な性的趣向を持った人々の事を指します。東山は自身の性癖を自覚した頃から、ずっと女子高生に殺されることを夢見て生きてきました。
34歳になったある時、自身の望みを叶える、理想的な存在に出会います。16歳の佐々木麻帆は、誰もが振り返るほどの美貌と優しい性格を持った、完璧な少女でした。麻帆の所属するクラブの顧問を務めることになった東山は、長年の夢をかなえるために、自身の殺害計画を実行に移し始めます。 誰かに殺してもらう、というと同意があっても加害者にはそれなりのリスクが伴うもの。東山は自分が殺される理想の状況を事細かに分析し、加害者になるべく迷惑をかけない方向で自身の殺害計画を練っているとこが、とてもシュール。なぜそこまでして殺されたいのか、共感はできないものの、東山の計画の行方が気になって仕方なくなるはずです。
東山と麻帆以外にも、麻帆の友人あおいや、雪生などが登場、東山にも大きく関わっていくことになります。単純に好みの少女だから、という理由で選ばれたわけではない麻帆の秘密が明らかになるなど、東山の用意周到さと願望に対する執着に圧倒されるでしょう。それほどまでに甘美であるならばいっそ自分も、と思わないことを肝に銘じつつ、理想の自分殺害計画の行方を見守りましょう。
『女子高生に殺されたい』の作品に関しては『女子高生に殺されたい』全巻ネタバレ!危うい世界観を、どう読む?【無料】で詳しく紹介しています。
『女子高生に殺されたい』全巻ネタバレ!危うい世界観を、どう読む?【無料】
東山春人、34歳。高校教師として普通に生活する彼の夢は……女子高生に殺されること!? しかも、できれば自分の想像を絶する苦しみを味わいながら。 そんなきわめて特殊な性癖を持つ彼の、危険でおぞましい計画にまつわる一部始終を描いた作品が『女子高生に殺されたい』。一見何の変哲もない日常のなかにありながら、主要登場人物達が何らかの衝撃的な秘密を抱えているというサスペンス色の強い作品となっています。 今回はそんな本作の魅力を、全巻分ご紹介しましょう。スマホアプリからは無料で読めるので、そちらもぜひチェックしてみてくださいね。
昨日のことは、大半の人が覚えているでしょう。しかし一昨日や、一週間前となってくると記憶は曖昧になるものです。それが10年、20年と長くなればなるほど、断片的になり、強い印象に残ったものだけが、記憶として残されます。会った人の顔を覚えられない、という人もいるかもしれませんが、重要な出来事であればあるほど、記憶は強く残るもの。しかし、それが自分にとっては小さな出来事でも、他者にとっては人生を変えるほどの事件であることは、少なくありません。
『監禁嬢』は、周囲からの評判もいい1人の教師が、突然現れた女性に日常を侵食される様を描いた、サイコホラーサスペンス作品です。なぜそんな行動を起こすのかという謎な部分も魅力のひとつですが、やはり見どころは謎の女、カコの周到さと容赦のなさ。言葉巧みに人心を操作し、するりと人の心に入り込む術や、恐怖心をあおる姿に、この大将が自分だったらと、ぞっとしてしまいます。
- 著者
- 河野 那歩也
- 出版日
岩野裕行は高校教師。同僚の教師や生徒からの信頼は厚く、優しい妻とかわいい子供にも恵まれ、ごく平凡ながらも幸せな日々を送っていました。ある日、岩野が目を覚ますと、全裸で椅子に拘束されていることに気が付きます。そこに現れた、謎の女性カコ。彼女は岩野に何か関わりのあるそぶりを見せますが、岩野は何も思い出すことができません。その日から、岩野の生活の中にカコが入り込み、幸せな日常が崩壊していきます。
カコは岩野の監禁をすぐに解きますが、岩野の妻と仲良くなり、子どもにも、自分がやったと感づかせないような危害を加えていきます。他にも学校内で協力者を作るなど、物理的、精神的に岩野は追い詰められていきますが、過去に何があったのかを、思い出すことはできません。エスカレートするカコの行動に、緊迫感が高まります。
カコはごく普通の女性に見えますが、その行動はかなり過激で、人間の恨みの深さを感じずにはいられません。岩野とカコに何があったのか、謎解きの要素とカコの過激な行動が、読者を物語の中へ引きずり込んでいきます。多くの女性キャラクターが登場し、エロティックなところも本作の特徴の一つ、恐怖と表裏一体の生々しさが際立ちます。
自分の精神を疑う人はそういないでしょう。精神疾患や認知症など、脳の機能障害で幻覚や幻聴などを発症する病気では、周囲には見えなくてもその人には見えて、聞こえているということを、本人以外が共有してあげることはできません。そんな時、世界に1人になってしまったような、心細さを味わうでしょう。
ある日、世界がおかしいことに気が付いたけれど、誰も指摘してくれない。そんな不安な気持ちから始まる『外れたみんなの頭ネジ』は、文字通り頭のネジが外れてしまったような人々が数多く登場します。世界観が繋がっているショートショートのような形式で、1ページでうっすらと怖いオチが付くというところが見事。読み進めながら、読者も自身の足下が揺らぐような感覚を味わうことができます。
- 著者
- 洋介犬
- 出版日
主人公の少女は、ある時から町が少しずつ変になっていることに気が付きます。近所のおばさんがずっと壁に話しかけていたり、警官が指で模したピストルで人を撃ち抜き、奇声を発していたりするのを見ても、誰も疑問に思いません。自身に送られてきた「スキ」という文字がぎっしり書かれている紙を見せても、反応はイマイチ、主人公は不安を隠し切れません。
そんな彼女には悪魔の姿が見えており、唯一まともな会話ができる存在です。悪魔に、自分ではなくこの町が狂っていると信じ込ませれば、主人公は悪魔にこの町から救い出してもらうという約束をしていました。とはいえ、何か謎を解明するために行動を起こすということはなく、主人公は少しずつおかしな町で、日常生活を送ります。その狂った日常が紹介されていくわけですが、キャラクターが明るいだけにとてもシュール。最後の落ちでかんじるぞわりとした恐怖が、やけにクセになってしまいます。
恐怖は叫びたいものではなく、じわりと侵食するようなもの。生理的に受け付けないような類のものもあり、苦手なジャンルがある方は注意が必要です。狂った原因を捜索していくというミステリ要素もありますが、まずは主人公だけが取り残された、狂った世界をご堪能ください。本当に狂っているのは誰なのか、自身を失わないようしっかりと自分の世界を意識しないと、作品世界に取り込まれてしまうかもしれません。
『外れたみんなの頭のネジ』を詳しく紹介したこちらの記事もあわせてご覧ください。
『外れたみんなの頭のネジ』が1話試し読み無料!やばいホラー漫画をネタバレ
人間の心の本当の恐ろしさを、あなたは目撃する……! 狂った人々のショートストーリーから少しずつ見えてくるのは、この世界がこうなってしまった原因の鍵を握る「ミサキの記憶」。怖いのに、読む手が止まらないサイコホラー漫画の恐ろしさを、まずは1話試し読みで体感してみてはいかがですか? ちなみに本作はスマホアプリで無料で読むこともできるので、気になった方はそちらもどうぞ。
怖いもの見たさという欲求を確実に満たしてくれるであろうおすすめ作品をご紹介いたしました。読むのは少し勇気がいるかもしれませんが、是非サイコホラーの世界をお楽しみください。